コピーライターの視点で見た「最高の景色」の違和感、代表不人気との因果関係
喉のつっかえが取れたのも束の間、落胆がせり上がってきた。
サッカー日本代表、森保一監督の続投が発表された。報道されていた通り、契約は異例となる半年。来年のアジアカップで区切りを付ける。その後は、2028年ロサンゼルス五輪を目指すU-21日本代表監督の大岩剛氏が引き継ぐことも同時に正式発表された。
続投が決まった状態での北中米ワールドカップ
続投要請の経緯が宮本恒靖会長の口から語られた。3月に一度、今回のワールドカップで契約終了の旨を告げる。しかし、方向転換し5月に続投要請を出した。
つまり、ワールドカップを戦う前から森保監督の続投は決まっていたことになる。なるほど、合点がいった。
ノックアウトステージに進出した日本は、王国・ブラジルと対戦した。その前日会見の森保監督の様子がおかしかった。どこか余裕があるように感じた。
死に物狂いで勝ちに行く。覚悟が伝わってこなかった。
違和感を覚えたまま迎えたブラジル戦、結果は周知の通り1‐2の逆転負け。佐野海舟のゴラッソで先制しながらも、後半はサンドバック状態で2失点を喫した。
90分での勝利は難しい。ならば延長に持ち込み流れを変えるのがベター。
しかし、意図が伝わらない町野修斗の投入。緊迫した場面でワールドカップ初出場の町野には荷が重すぎた。交代カードは切っただけ。劣勢を挽回するには至らなかった。
仮に契約延長のオファーが届いていなかったら、森保監督は死力を尽くしたのではないだろうか。もちろん手を抜いたとは思わない。勝負を投げたとも信じたくはない。だが、勝敗に関わらず、続投は決まっていた。
心にスキは生まれなかったか。
負ければ解任。勝てば続投。協会がノルマを課していれば、準備も本番も臨む姿勢が異なっていたように思う。前日会見で抱いた違和感の正体がわかった。
スッキリしたと同時に、またしても消化しきれないものが残った。
思いのない言葉は響かない
繰り返し聞こえてきた「最高の景色を2026」。私も何度か使った。
非常にいい言葉だと思う。コピーライター的視点で見ても、万人が共感しやすい言葉が並んでいる。
でも、そこに思いはこもっていなかった。だから、響かなかった。
日本代表の選手も森保監督も優勝を公言した。大会前だ、どのチームも優勝の可能性はある。濃淡こそあれ、100%不可能ではない。
優勝を目指して戦う。
一見するとカッコいいが、実は目標を曖昧にしている。未踏の「ベスト8」の方が実感を伴う。でも、続投会見を聞く限り、明確なノルマは課せられていなかったようだ。
巧妙だ。
例えば、ベスト8とした場合、今回のベスト32では続投の理由が立たない。だが、「最高の景色」にしておけば、どこで負けようと、幾分か説得力を持たせられる。
分の悪かった2戦目の勝利、チュニジア戦のワールドカップ1試合最多得点、強豪オランダに2度リードされても追い付いてのドロー。場面を切り抜ければ、「最高の景色」になる。
森保監督はブラジルに敗れた後、「最高の景色」を見せてもらったと口にした。これまでの頑張りに対する労いの言葉にしても、我々にとって「最高の景色」=優勝だった。
拍子抜けした。私たちは、見せられていない。
優勝を目指すのは悪くない。公言するのも自由だ。目線を上げることで、モチベーションが上がり、日々の過ごし方も変わってくる。でも、実感が伴わない言葉には、思いが乗らない。
コピーライターになりたての頃、小手先だけでコピーを書いていた。パッと見は綺麗に見えるでも、上司に見抜かれた。すぐさまゴミ箱行き。クライアントに届く前に却下された。
当時は、クライアントに見せれば、採用されるはずだと思っていたが、今になって思えば上司の判断は正しかった。仮に世に出たとしても望むような効果は得られなかった。
「最高の景色」は、それと同じだ。耳障りはいい。字面も綺麗だ。でも、ただそれだけ。
ベスト8はゴールじゃない!
今、越える時、ベスト16の壁
即席で作ったので実感はこもっていない。でも目標が明確な分だけ訴求力は高い。気持ちがグッと前に傾く。
なぜファンは代表に置き去りにされるのか
ここ最近、地上波での代表戦の放送は激減した。不人気といってもいい。熱狂的なファンはいずこへ。そう言いたくなるほど代表界隈は閑散としている。
理由がわからなかったが、「最高の景色」を紐解いたらわかった。目的地が不明確なので、ファン・サポーターは着いていけないのだ。
地上波での放送が減り、スタジアムがフルハウスにならないわけだ。おそらく協会はわかっている。でも、ファン・サポーターが納得するようなゴールを示さない。今回の続投会見、後任発表でも高揚感がなかったのは、そのためだろう。
「継承」。ゼロベースでのスタートはリスクが伴う。理解はできる。だからといって実績に乏しい、国際経験のない日本人監督は納得できない。
「成長」。ドイツ、スペイン、イングランドに勝ったことは実績として評価できる。だが、ワールドカップで肝心のベスト16の壁は打破できていない。
山本昌邦技術委員長は、盛んにチーム作りとその過程を評価した。確かに、いいチームだったかもしれない。でも、繰り返すが、「最高の景色」は見せてもらっていない。
これが1期目ならまだわかる。でも森保監督は2期目、8年もチームを預かっていた。いくら協会が過程を評価しようとも、こちらが求めていたのは結果だ。
続投の説得材料としては薄い。
異例の半年間は森保監督が主導で進める。後任の大岩氏はヘッドコーチにすらならない。経験値のある監督のそばで、その手腕やチームビルディングを見る機会は与えられない。でも、引き継ぎはしっかりしたいという。
ちぐはぐさがどうしても拭えない。だから、心の底から応援できない。代表人気も回復しないだろう。つまり、それは、協会の収入が増えないことにつながり、有能な外国人監督が招聘できないことになる。
負のスパイラル。誰が止めるのか。
思いのままに。続けます。今日も呼吸ができた。ありがとう!
