うつくしいの定義 |393文字|#人魚裁判所|#毎週ショートショートnote
人魚の長老は疲れていた。この「人魚裁判所」にはどうでもいいと言ってはいけないが、どうしようもない案件を持ってくる輩が多い。
今日は人魚同士の口喧嘩の裁判である。
「B人魚さんが、A人魚さんのことを『低予算B級ホラー映画の作り物みたいな人魚』と悪口を言ったことの謝罪を求めます」
A側の弁護人は淡々とした口調で言う。
B側の弁護人も負けじと睨み返す。
「A人魚さんが、B人魚さんを『酸欠で浮きかけた金魚みたいな人魚』と悪口を言ったことの謝罪を求めます」
(どうでもいい)
「どちらも、私から見ればうつくしい人魚だ」
弁護人の隣にいるA人魚とB人魚の顔が少しやわらぐ。
裁判長は続ける。
「私の知る限りでは、うつくしいとは『見た目さえ整っていれば、中身の未熟さは若さで許される』ということだ」
傍聴席の他の人魚たちが、なるほどと静かに頷く。
「そのうつくしさを武器に、上手に和解しなよ」
海の温度が少しだけ下がった。
(了)
(393文字)
こちらのお題に参加させていただきました。
