インド映画に恋してます⑧ 貢献?暴走?『Dhushman Mera』(『Don 2』より)——南インドの王様とシャールク・カーン
🎵 今日の一曲:『Dhushman Mera』(『闇の帝王DON 〜ベルリン強奪作戦〜』(Don 2/Don: The King Is Backより)
残虐非道なマフィアのボス、ドン。
知性で闇を制する帝王が、とんでもない計画を提げて帰ってきた——。
劇中のダンスナンバーではなく、エンドロールで流れるこの曲。
ひたすらかっこいい(と私は思う)。
年間500本近く映画を観る私の世界が、ある日 “Dard-E-Disco” でひっくり返った。
それからというもの、映画は観るものではなく——踊るものになった。
——映画に恋して、踊り出した。
シャー・ルク・カーンに惚れて、世界が回り始めた—
さて、私はスタジオのバラタナティヤムコースの皆さんのダンスドラマ『ラーマーヤナ物語』に、南インドの王様役で参加することになった。
ボリウッド映画を観まくり、動画を漁り、
そして今度は「ラーマーヤナ物語」そのものを調べる日々。
調べていくうちに気づく。
インドでは神話が生活に深く根づいている。
テレビドラマや映画でも、神話を直接題材にした作品が山ほどある。
「ラーマ王子とは何者か?」
——この問いは、のちのインド映画人生でも何度も出てくる。
さて、古代の南インドの王様像を研究。
髭、長髪、金のアクセサリー、そして半裸。
衣装はもちろんバラタナティヤム式に従う。
そんなある日、師匠からのメッセージ。
「肌色の薄いシャツはお持ちですか?」
……はい、出ました。半裸決定。
女性なら防寒用に一枚は持っている“肌色インナー”。
あの瞬間、脳内で何かが繋がった。
——半裸のシャールク・カーンに恋した私、ついに運命が回収された。
衣装はズボン+布を肩にかけるバラタナティヤム仕様。
私はもう「どう見せるか」モードに突入していた。

演じるのが大好きな私は、衣装を“作品の一部”として完全に受け入れていた。
そして「どうせやるなら完璧に仕上げたい」と思ったその頃——
映画『闇の帝王DON 〜ベルリン強奪作戦〜(Don2)』に出会った。
映画の冒頭、ボートから降り立つシャールク・カーン。
……これは、ヤバい。❤️
『Om Shanti Om』でも『Devdas』でも素敵だったけど、
この登場シーンはどストライク。

南インドの王様の髪型、これしかない。
結局はターバンをつけることになって誰にもバレなかったけど、
実はターバンの下は“Don仕様”。
ただのハーフアップだけど、気持ちは完全にベルリンの帝王だった。
当日。
金のピアス、金のブレスレット、金のネックレス。
(今ならもう少し落ち着いた選択をするけど、当時は金こそ正義!)
そして問題の髭。
100円ショップで付け毛と両面テープを買ってきた。
でもそれだけでは舞台映えしない。
トイレの鏡の前で、黒のアイライナーを取り出す。
もみ上げから顎へ——細かい線をひたすら描く。
さらにその上に両面テープを貼り、細かく切った付け毛を貼り付ける。
我ながら、完璧。
……そこにインド人のご婦人が入ってきた。
鏡の前で必死に髭を描く日本人女性。
彼女の表情は、完全に「え……?」だった。
楽屋に戻ると、出演者と師匠は唖然。
でも——暖かく受け入れてくれた(と思いたい)。
舞台は無事終了。
私は全力で“南インドの王様”を演じきった。
髭面が「貢献」だったのか「暴走」だったのかは……
今でも考えないようにしている。
ただ一つ言えるのは、
女性で身長もそれほど高くない私は“ふてぶてしい王様”には遠く及ばず、辛味が飛んだチリペッパーくらいの存在感だったかもしれないということだ。
それでも、バラタナティヤムという舞踊に初めて接して魅了された。
衣装もリズムも言葉も、すべてが未知で魅力的だった。
「いつか私も踊りたい!」
そう思った瞬間、またひとつ、私はインドの深みに落ちていった。
みなさんがこれまでの人生で一番思い切ったことは何ですか?
(⑨ お猿と神話とサルマン兄貴『Selfi Le Le Re』——色粉そして大人の文化祭)
