草間彌生さん -描かずにいられない切実さ
草間彌生さんが亡くなられた。
折しもわたし自身、画材を引っ張り出してリビングに盛大に広げ、描いていたタイミングだった。
草間彌生という人物やその絵は好きではなかったけれど、どこか同類という感覚があって、ずっとシンパシーを感じてきた。
彼女は自ら精神科に入院し、新宿の晴和病院を自分の家と呼んでいたという。
病院から道を挟んだ場所にアトリエを構え、日中はそこで絵を描き、夜になると病室に帰っていった。
いま、そのほど近くにあるのが草間彌生美術館。
幼少期から幻聴や幻覚、強い恐怖にさいなまれ、水玉模様を描きつづける時間だけ、それらから逃れられたのだという。
創作せずにはいられない切実さ、痛いほどわかる。
そうでしか在れない人間が、時代背景があったとはいえ、母親から絵を描くことを否定され、禁じられたら、いったいどう生きれば良かっただろう。
ビジネスマインドも旺盛な人だったと聞く。それでも彼女にとって描くことはきっと、自らを生かすことそのものだった。
そう考えると、彼女を苦しめた病いさえも、絵を描くための大きな画材の一つとして、あったのかもしれない。
足枷と思えるものも、その数だけ扱えるものがある。
ひとりの人間の苦闘が絵に変換され、世界を驚かせ、喜ばせた。
