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「僕、お母さんの好きな人、知ってるよ」


先日、母の葬儀で、私と兄と長男の三人で葬祭ホールの家族控室に泊まりました。

祭壇の前で夕食を食べながら、いろいろ思い出話をしていました。
お酒も入っていたこともあり、何だかにぎやかになってしまって、ほぼ宴会に近い状態になってしまったのです。

「なんかさ、これじゃあ夏休みだね」

そう兄が言いました。

私の息子たちが小学生の頃、元気だった母も一緒にこんな風に実家で食卓を囲んでいた時と同じ光景でした。

「お母さん、私たちが笑い過ぎて怒るかな…」と私が言うと、

「みんなが笑ってる方が、母ちゃんもうれしいんじゃない?」
と兄。

みんなで、「あの時こうだったよね」「お母さんこう言ってたよね」などと大笑いしていました。
悲しみの場だろうけれど、なぜか心が和む。


そしてその瞬間、私はあの「お母さん(私)の好きな人」事件を思い出したのです。


15年前の夏。
息子たちが小学生の頃です。
夏休みは私の実家で過ごすことがお決まりでした。

庭で遊んで、スイカを食べて、夜は花火。
そんな夏休みの景色を子どもたちと一緒に見ている。そんな時間が流れていました。

私は幼い頃から兄と仲が良くて、大人になってからもその関係は変わりません。
田舎に帰れば、兄と子どもたちが一緒に遊んでいる姿が自然にありました。

めいっぱい田舎で過ごし、夏休みも終わりに近づく頃、夫が車で迎えに来てくれました。

帰りの車中、長男が夫に何かこっそり耳元で話しています。
本人はこっそり話しているつもりのようでしたが、狭い車中では筒抜けです。

「お父さん、あのねえ、僕……お母さんの好きな人知ってるよ」


私と夫の頭の中は

『???』


私は、何もやましいことはないけれど、一瞬ドキッとしてしまいました。


運転中の夫が後部座席から身を乗り出してきた長男の顔を見て
「えっ、??」と言うと、息子はドヤ顔でこう答えました。


「あのね、おじちゃん。おじちゃんもね、お母さんのこと好きなんだよ」


夫と私は顔を見合わせ、アイコンタクトです。

(兄妹の仲の良さを“恋バナ”にすり替えるとは、子どもの想像力ってすごいですね…)

すると夫は、負けじと大げさに反応します。

「なに~!本当か!?それは大変だぞ~!」


車中に笑い声が響き、息子は大満足。

私もそれに乗っかって、「そういうことはナイショにしておくもんよ」なんて言いました。


あれから15年。
母との別れの場面のはずなのに、ふっと温かい気持ちになれたのは、きっとそんな思い出が支えてくれていたからなんだろうなと思います。


今回は以上です。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
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