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物語の都合で、キャラに不自然すぎる行動を取らせてはいけない

こんにちは、小説・版画作家+行政書士のさくらです。

私は、2025年10月頃から2026年4月までで、15万文字の小説を書いて、同人として出版・発売しました。

 

「小説を書くくらいなのだから、小説読むの好きなの?よく読むの?」と、たまに聞かれますが、普段小説は全然読みません。

物語は、映画やアニメ、YouTubeを常に垂れ流して楽しむ、映像型鑑賞タイプです。

 

しかし、たまにはちゃんと読もうと思って、小説執筆後に、何冊か読んでみました。 そこそこ有名な作品たちの中に、一冊だけ、最後まで読めずに、読むのをやめてしまったものがありました。

物語がつまらないからではなく、『物語の都合で、キャラがあまりに不自然な行動をとっていた』からです。



◆初対面の警察に、そんなにベラベラ喋らないだろ……

何がそんなに不自然だったかと言うと……

婚約者が、間違いなく他殺で、全裸変死体で発見されたというとある男性A。 Aが、婚約者の変死体を確認した直後、警察から(やや疑われつつ)取調室で取り調べを受ける。
 
そこで、Aは警察、刑事に
・婚約者にプロポーズすることを悩んでいたこと
・婚約者の期待する男になれるかわからなくて、先延ばしにして逃げていたこと
・「僕は怖かったんだと思います。弱かったんだと思います。そして、そんな自分を認める強さがないことに悩んでいたんだと思います」みたいな語り
・亡くなった婚約者がどんな人だったのか
 
このあたりをものすごく詳細に語るし、延々と自分語りをします

こんな感じです。

 

よくあるシーンだと思います。 が、私には不自然すぎて、どうしても違和感が大きかったです。

 

◇違和感①:婚約者が全裸で惨殺されて変死体となっていたのに元気すぎる

みなさんは大切な人や好きな人はいますか? 家族でも、恋人でも、ペットでもいいです。 そんな大切な存在が、惨殺されて、その姿を確認した直後って、どんな自分になるか、想像つきますかね?

私だったら、多分、全く喋れなくて、ぼーっと座って放心しているかな?と思います。 泣く人もいると思います。 物に当たるなど、一瞬怒りを見せる人もいるかもしれません。

私だったらこの辺りが自然な反応だと思うので、もし私が同様のシナリオを書くなら、Aには喋らせずに、放心して、周りの問いかけに無反応な感じに描写すると思います。

 

一方で、私が読んだ小説では、Aは変死体と対面した直後に、取り調べ室に呼ばれて着いて行き、初対面の警察に流暢に会話をしています。

そんな元気なわけないやん……。

と感じたのです。 この取り調べをしている刑事が主人公で、ベテラン刑事的な導入でしたが、このAの様子に疑問を抱くことなく、普通に会話しています。

「婚約者が惨殺されたのに、こんなに流暢に喋るAが実は犯人なのか?」と考えましたが、もし本当にそうだとするなら、ベテラン刑事として導入に描いた描写が無駄になります。

この時点で、Aが無実なら、Aの様子は不自然すぎる。 逆にAが実は犯人なら、ベテラン刑事の主人公が無能すぎる。 どちらに転んでも、イマイチなので、ここで読むのをやめました。

 

◇男は初対面の警察にベラベラ、自分の弱さを自分語りしない

「ひとりの女性の人生を引き受けることが、僕は怖かったんだと思います」

みたいな、自分の弱さとかをベラベラと、男は初対面の人に、自分語りしません!

ましてや、取調室で、初対面の刑事になんて、余計にしません。

 

婚約者が全裸で惨殺されただけでもメンタルブレイクしているのに、死体と対面した直後にそのまま直行した取調室で、ベラベラ自分語りなんて、しないだろぉぉぉ!!!

 

となりました。



◆物語のために、登場人物に、不自然すぎる行動を取らせてはいけない

なぜAはこんなに元気なのか? 理由はひとつです。 物語の都合に合わせて動いているからです。

おそらくですが、Aのこのシーンは、次のような目的があったのだと思います。

殺された婚約者が、普段どんな人で、殺されるような落ち度もなく、普通の女性であること。 そして、それを読者に理解させて、犯人への嫌悪の感情を抱かせる

この婚約者は、小説内では生きている時のシーンが全くないキャラです。 そのため、この婚約者がどのような人だったのかは、遺された者や状況や遺留品から読者に示すしかありません。

このシーンは、これらをAの語りで解決しようとしたのだと思います。 しかし、それがダメだと、私には見えました。

なぜなら、Aは普通の因果で考えれば、喋れる状態に無いはずのキャラだからです。

婚約者が全裸で変死体+その変死体と対面したばかり+取調室で初対面の刑事から尋問。

これで、ベラベラ喋れるのは、可能性がゼロではないにしろ、おかしいと感じる可能性のが大きい。 ゆえに、Aは、喋れないのが正常な因果です。

では、なぜAはこんなに喋れるのかというと、物語の都合で、行動を歪められてしまったたからです。



◆では、どうすればよかったのか?

物語として、殺された側に落ち度は無いことを示したい。 そして、読者に同情や不快感のような感情を抱かせるために、婚約者の素性を描写したい。 これはわかります。

もしそうであれば……

・刑事として警察権限で調べた結果、わかったこととして、描写する
 
・婚約者の部屋の中や遺留品などを描写して、人柄を読者に伝える
 
・Aではなく、婚約者の友人、知人、職場の人など、ショックは受けつつも、婚約者の情報を持っている人への聞き込みのシーンにする
 
・どうしてもAに語らせたいなら、後日(5日後とか)に、任意の事情聴取などで、取調室以外のもっとリラックスできる場所などで語らせる(時間と場所の調整)

という手段があると思います。

たとえば……。

" あれから、変死体の異質さとは裏腹に、いつも通りの捜査が淡々と行われた。 数日かけて行われた捜査によって、被害者の素性も幾分かわかってきた。
 『やはり、殺されるような人ではない』
 それが、俺の素直な感想だった。
 どこにでもいる、日々の仕事を頑張り、実家に仕送りをして、休日にはネイルやショッピングに出かける。 そんな、イマドキ風な女の子。 それが被害者の生前の顔だった。…(略)"

のような、ここから、具体的なアイテムを出して深ぼったりします。 Aにどうしても喋らせたいなら、『数日の捜査』を明示してますので、この後に会話するシーンを入れても、死体と対面してから数日経ってますので、多少会話ができても、そこまで不自然ではありません。

このように、その状況っておかしくない?という要素を減らすことができます。

 

小説などは、尺の都合もある中で、物語を前に進めつつ、読者に必要な情報を渡さないといけませんので、作者の都合が強く出る場面があります。

そこで、因果や状況が不自然になるほど、登場人物の言動を都合のいいものにしてしまうと、物語を歪めます。

書いていて、これっておかしくない?という視点は、推敲・編集の際でもいいので、意識するのがおすすめです。

 

今回は、自分が躓いて最後まで読めなかった小説をベースにお話させてもらいました。

創作の際の、登場人物の行動原理の参考になれば幸いです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

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