生まれてきた命に貴賤はない。
■DNA鑑定で『他人の子』が判明。
・最新のニュース、「DNA鑑定で『他人の子』が判明、ベトナム離婚認定決定の一部の見直しを求める再審抗議を行った」。
・ベトナム中部高原地方ザライ省で「離婚後に元夫が親子関係に疑義を抱き、DNA鑑定の結果、子どもの1人が実子ではないと判明する事案が発生した」。
・ザライ省人民検察院は「4月9日、すでに確定していた離婚認定決定の一部の見直しを求める再審抗議を行ったと明らかにした。これに対しザライ省人民裁判所は抗議を全面的に受け入れた。対象となったのは「ザライ省トゥイ・フオック・バック街区に住む夫婦の離婚と子の養育を巡る事案である」。訴訟記録によると「夫婦の間には3人の子どもがいた」。
・2020年「婚姻関係の悪化を受けて双方は離婚し、第一審裁判所は協議離婚、子の監護、共有財産に関する合意を認定した。長子と次子は父親が、三子は母親がそれぞれ直接養育し、養育費は互いに請求しない内容であり、この決定はすでに法的効力を生じていた」。
■相続、財産権、後見責任などの法的関係にも影響が及ぶ。
・その後「父親が三子との親子関係に疑問を抱き、DNA鑑定を実施したところ、自身の実子ではないとの結果が示された」。これを受け「父親は従来の離婚認定決定のうち、三子に関する部分の再検討を申し立てた」。
・ザライ省人民検察院は「記録と資料を再点検した結果、事件処理の結論を左右し得る新たな事情が判明したと判断した。それは離婚当時、当事者も裁判所も把握していなかった客観的事情である」。
・そのため「子との法的関係に関する判断を根本から変える性質のものであるとして、確定決定の一部取り消しを求める再審抗議を行った」。これを受けた再審合議体は「協議離婚認定決定のうち三子に関する部分を取り消した」。
・検察側によれば「この判断により、父親と三子との間の父子関係は今後存在しないこととなり、相続、財産権、後見責任などの法的関係にも影響が及ぶ見通しである」。その一方で「将来的に実父が特定された場合には、子どもの適法な権利を保護することにもつながるとしている」。
■父親は養育前に、無意識に自分との類似性をスキャンする。
・余談、ベトナムにおいて他人の子を育てる「不一致」の確率はどれくらいなのか。都市化と性意識の変化に伴い、DNA鑑定件数は急増しており、ハノイの鑑定機関のデータ等を参照し、不一致(非実子)の割合が数%〜10%近くに達するデータもあるそうだ。世界を俯瞰してみると、「父性不一致」の研究によれば、世界平均で約3.3%という推計もある。
・日本や欧米では、民法上の「嫡出推定(ベトナム家族法2014年第88条に相当)」が強く働き、生物学的真実よりも「家族の平穏」を優先してきた歴史があるが、現在は「真実を知る権利」へと世界的にシフトする。
・人間に備わる「表現型のマッチング(自分と似ているか)」の検知能力として、進化心理学では、父親は投資(養育)を行う前に、無意識に自分との類似性をスキャンするといわれている。動物学的にみていくと、多くの哺乳類に見られる「子殺し」や「投資の拒絶」は、自分の遺伝子を継がない個体を排除する生存戦略。人間においても、オキシトシン分泌などのホルモン変化が「血の繋がり」の確信に影響を与える可能性を、生物学的な深みとして紐解かれるようだ。
・UNCRC=世界の子どもの権利を守るための国連条約の第7条には「親を知り、かつ、その親によって養育される権利」の徹底が記述される。ベトナム家族法において、推定が覆された際、直ちに実父特定のための公的調査を可能にする仕組み(現行は申立主義が強い)。
・血縁が否定された瞬間、全ての法的保護が消滅するのではなく、移行期間の扶養義務や、国家による代替的養護を強化する法整備や、親子関係の係争中であっても、子供の教育・医療を受ける権利が100%保障される法的ステータスの自動付与などの法整備が求められている。
・子供にとって、親が誰であれ、生まれてきたこと・その命に貴賤はない。「親が誰かわからない」ことが、その子の尊厳や将来を縛る鎖であってはならないはずだ。子供を孤独に突き落とさない強固な法制度こそが、ベトナムの真の豊かさに繋がっていくことを切に願う。
