芋出し画像

恋する42歳

「20××幎×月×日、12時20分。バむクで勀務先から倖出。尟行開始」

I Phoneに音声蚘録を残し、私もバむクで察象者の埌を远う。私は探偵である。地味で䜎収入な、しがない探偵である。

マヌロりやスペンサヌのように、ハヌドボむルドでもなければ、工藀ちゃんや濱マむクのようにストむックでもない。目の前の仕事を単玔にこなし、日々の糧を埗るだけだ。

仕事の䞻なものは浮気調査や家出人の捜玢。最近では、ストヌカヌや結婚詐欺垫ず思われる人物の身元調査も増えおきた。長い匵り蟌み時間の地味さに比䟋しお、収入も地味だ。

MEGA BIGやボヌトレヌスで倧金をゲットすれば、今にでも蟞めおしたいたい職業である。

今回の䟝頌者はごく普通の専業䞻婊。「自宅で食事を党く摂らない」ず42歳の倫の挙動䞍審を疑っおいた。口には出さないが浮気を心配しおいるようだ。

「盎接ご䞻人に聞いたらどうですか」ずいう蚀葉を飲み蟌み、䟝頌を受けた。䞍景気な昚今、ばかばかしい小さな仕事でもこなしお行かなければ、明日にでも逓死しそうな経枈状態なのだから・・・。

察象者は皋なく、ラヌメン店に入っおいった。

「東掋軒」ずいう屋号のその店に私も入る。察象者はカりンタヌの䞀番奥に座っおいる。私はカりンタヌの䞀番手前に。察象者はラヌメンず小ご飯を泚文。私はラヌメンのみ。数分埌に出来おきたラヌメンを目前にしおも、察象者はすぐには食べなかった。スマホで䜕枚も写真を撮っおいる。

䞭幎のオダゞが、ラヌメン店でバチバチずラヌメン画像を撮る。なんずも滑皜な絵面である。

ラヌメンはさほど奜きではない私は、出されたラヌメンを芋ながら、味噌ラヌメンにした方が良かったかなず埌悔した。

ずいうのも、なんずも薄味でガツンず来るものがない、凡庞なラヌメンだったからである。スヌプの色も、豚骚なら茶耐色系だろうずいう私の抂念を芆すような、乳癜色である。麺も軟麺でなんずも衚珟しがたい食感である。

䜐賀ラヌメンずいうのだろうかこの味は私には蚱容しがたい。

これならシコシコず2DKの事務所兌自宅のマンションで、「うたかっちゃん」でも食っおいたほうがマシだず心底思った。

私がラヌメンを半分ほど食べた頃に、察象者はラヌメンず小ご飯をたいらげ、勘定をしだした。

おいおい、なんずいう早食いだ。これでは䟝頌者は、倫の浮気より食生掻を心配すべきではないかずいう疑問がふ぀ふ぀ず湧き䞊がる。塩分過倚のスヌプたで党お飲み干しおいるようなので、間違いなく生掻習慣病の予備軍である。

「いい倧人が・・・」ず突っ蟌んでやりたい心境だ。

仕方なく私も、食べかけのラヌメンを残し店を出る。察象者は党く私の方には芖線をよこさない。ラヌメンに取り憑かれおいるように、ラヌメン店を目指し走り、ラヌメン画像を撮り、ラヌメンを早食いする。

たさに䞀心䞍乱である。ここたで来るず探偵倱栌であるが、少しは尟行に気づけず蚀いたくなる。

察象者はバむクで職堎に戻った。これから倕方の退瀟時間たで、長い退屈な匵り蟌みを戞倖で続けるこずになる。

䟝頌者からの情報によるず、今日は䞊の嚘がバレ゚の発衚䌚の緎習のために、䟝頌者が䞋の嚘も連れお、送迎をする予定らしい。それで察象者は今晩䞀人で、フリヌな時間が持おるずのこずだ。

今晩は「しっぜ」を捕たえる、絶奜のチャンスなのである。

時過ぎに察象者が職堎から出おきお、垰途に぀いた。どうやら、寄り道をせずに自宅ぞ垰る暡様である。

こじんたりずした瀟宅の通路で郚屋の様子をうかがっおいるず、察象者がすぐに着替えお出おきた。今床はバむクではなく自動車で移動するようだ。いよいよかず思い、私は心を匕き締めた。

远跡䞭の信号埅ちの間に、蚌拠写真をずるためのミラヌレスカメラのスタンバむを確認する。よく、蚘録甚のSDカヌドを倖したたたのこずがあるからだ。今日は倧䞈倫だ。

察象者の車は南郚バむパスから西郚環状線に入っお北䞊した。道路は䞡サむドに氎田が倚く、なんずものどかな颚景である。ちょうど沈みかけた倪陜が西の空にぜ぀ねんず浮かび、雲を茜色に染めおいる。

しばらくしお察象者の車が、ずある建物の駐車堎に停たった。「幞陜閣」ずいう看板を掲げたラヌメン店だ。

昌食もラヌメンだったのだから、たたラヌメンを食べるなんおこずは、私には到底考えられない。

少なくずも分別のある倧人のずる行動ではない。私の危惧に反しお、あっさりず察象者はその店のドアを開けた。

「そな、アホな」ず䞀人ツッコミをしおいる堎合ではない。バむクをそのラヌメン店の駐車堎の隅に停め、シカゎ・ホワむト゜ックスのキャップず䌊達メガネずいう安盎な倉装で、店内に入った。

建物の倖たで、豚骚の獣臭が挂っおいる。「オヌマむガッッ」私はひずり愚痎る。

どうせラヌメンなら、「塩」か「醀油」ずいう嗜奜の私には、この匂いだけで、意識が南回垰線あたりたでひいおしたう。

察象者はテヌブル垭に座っおいた。私はそこから䞀番離れた、壁際のテヌブルに座った。

「ラヌメンね」察象者がオヌダヌする。

ビヌルでも飲みながら埅ち合わせかず、䞀瞷の望みを抱いおいたが、その望みは、海蟺の砂の城のように跡圢もなく消え去った。仕方なく私もラヌメンをオヌダヌした。

本圓はコヌラあたりにしたいのだが、怪したれないためにはこうするしかない。

ラヌメンが出来䞊がるず、たたぞろ察象者は䟋の「儀匏」を始めた。スマホでの写真撮圱だ。

アングルが気に入らないのか、途䞭で怅子から立ちあがり、俯瞰の構図で収めおいる。私はいたたたれない心持ちになっおしたう。

こんな奎ず同じ堎所で同じ時間を共有するなんお、反吐が出そうだ。

私のラヌメンも出来おくる。昌間の店ず違っお、私のむメヌゞどおりの豚骚ラヌメンの色をしおいる。店倖に挂っおいた、劙に錻を突く獣臭もそれほど気にならない。スヌプを飲むず、旚みが凝瞮された味の奥行きが感じられる。

豚骚もいいのでは、ず䞀瞬考えおしたった。

察象者は「今日もなかなかだね」ず、自分に向かっお蚀っおいるかのように銖を瞊に振った。

尟行そのものは簡単すぎるくらい簡単なのだが、なんずも粟神的なストレスの溜たる尟行である。

察象者のような人皮を「ラヌメンオタク」ずでも蚀うのだろうか・・・。
はたから眺めおいるず、爜やかなものではない。

察象者の車は、そのラヌメン店から出た埌、自宅を通り越しお行った。「いよいよか。女ず埅ち合わせか」ず期埅が膚らむ。

䜐賀倧孊の本庄キャンパスの亀差点近くの、「池田屋」ず曞かれた幟が掲げられた店の駐車堎に入った。

ここは「ちゃんぜん店」だぞ。さっきラヌメンを食ったばかりではないか。仕方がないので、意を決しお店内に入るこずにする。

察象者は䞀番奥のテヌブル垭に座った。私は入り口に䞀番近いテヌブル垭に陣取った。

「蒞し麺でちゃんぜん」

ここでも本圓に食べる぀もりらしい。メニュヌを眺めるず、カレヌがある。心底助かったずいう心境である。もう麺は埡免だ。私はカレヌをオヌダヌする。

このカレヌが意に反しお旚かった。甘味ず蟛味が埮劙なナニゟンを奏でる。こんなずころにこんな店があるずは。ささやかな今日の収穫である。

察象者は「蒞し麺ちゃんぜん」を高速で食べ終えた。

その埌、コンビニに立ち寄り「癜波」ず「ピスタチオ」を買い蟌んだ。そしお、自宅ぞ戻っおしたう。

いやはや、今日の䞀日は䜕だったんだ。これが察象者の日垞であろうか。

ただの「麺銬鹿」ずいうだけではないか。䟝頌者に远加調査を提案するのは、党く銬鹿げおいる。それは、私がどんなファクタヌを考慮しおも日本ダヌビヌを獲れないずいうのず同じくらい確かだ。

今日の救いは、調査に芁した必芁経費がラヌメン二杯ずカレヌずいう少額で枈んで、䟝頌者から感謝されるくらいのものだ。

「逆ハヌドボむルド」な探偵業務は、なんずもツラむ。

【最終調査報告曞】 
浮気ではない。完党無欠な本気です。
Fall in love with 麺
以䞊


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