52歳、体重が年齢に寄せてきた
限界まで薄着になってもう一度。
今度は機嫌を損ねないよう、冷たいパネルの上にそおっと足を乗せた。
ほほう、そうくるか。
ならば未開封の米袋で決着をつけよう。
足元のスイッチを慎重に蹴った。
いい感じの体重から4キロも太ってる。
体重計が壊れてないなら、私の何かが狂ってる。
ホルモンか代謝か知らんけど。
正しいことなんてどうでもいい。
つい最近まで努力に応えくれたのに。
50代になったとたん、そっぽ向くわけ?
こんなの一人じゃ抱えきれない。
次の日現場で、「体重が年齢に寄せてくるんだけど」と低く静かにつぶやいてみた。
すると、女先輩は腹をかかえて笑い、男同期は耳を塞ぐジェスチャーをした。すかさず「そこは笑ってくんない?」と指差すと、「さえさんまだまだ大丈夫っすよ」と定型文みたいなことを言ってくる。
そして、男はさらに規定とおりに、アミノ酸サプリをすすめてきた。「ボクはここ来る前に必ず飲んでます」念のため、サプリの写メは撮ってやった。
アミノ酸の種類について、とうとうと話し出した男同期に背を向け、女先輩と目を合わせる。
「今ぐらいがちょうどいいって。
あんまり細いと老けて見えるよ」
ああ、そうか。
若い、細い、健康。
この3つを全部持ったままいられる年齢じゃ、もうないんだった。
ふっくらは、若々しく見える。
ぽっちゃりは、おばさんくさくなる。
健康のためには、お腹周りは少しあった方がいい。
そのあと、玄米に塩昆布を乗せたおにぎりを食べながら、スマホの中にある3年前の自分を見る。
白米を食べてもキープできてたなぁ。
その日中、頭の中は、ふっくらとぽっちゃりの間をさまよい続けた。
その夜、体重計に乗らなかった。
代わりに、姿見に全身を映してみた。
あの頃よりは、ぽっちゃりだけど、ドンと構えているようにも見えた。
そういえば、あの頃よりも、生きることがずっとラクになってる。ひょっとしたら、このお腹まわりは、ずうずうしさと少しの自信なのかもしれない。
いい感じの体重プラス2キロで折り合いをつけよう。そう決めたあと、Amazonでヴァームをポチった。
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