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50代、 推しのいる人生。

20年以上、夢中な人がいる。

たまたまテレビでライブを見るまでは、黒ずくめでいかつくて、正直タイプではなかった。
でも歌っている様子を見て、「この人、イメージと違うんだな」と思った。それが始まり。

若い頃はその人に、今でいう「ガチ恋」をしていて、ライブ会場で奥さんの姿を見かけると落ち込んだ。同じ人間なのになぜ私じゃないんだか。
本気で意味がわからなかった。

でもどうしてなんだろう。
今は、胸が苦しくない。

ショーケースの向こうに、重たそうな銀の指輪があった。指輪についた傷を見つけたとき、ツーっと涙が出てきて、気づいた時には頬まできてた。

反対側にはカメラもある。
このファインダーに、何回あのまつげが触れたのか。ショーケースに張りついて、カメラの覗き窓だけを見ていた。

そういえば、ライブでもそうだった。

あの人が歌い出すと、今日が何曜日かもわからなくなる。今夜の献立も、娘の宿題も、スーパーの特売も、思い出す暇がない。
こんな時間は、一年の中でもほとんどない。

娘を見て「かわいい」って思えば、「いつまで」がやってくる。夫を見て「助かるな」って思えば、「もっとこうしてくれたら」が顔を出す。仕事で「ありがとう」と言われれば、次回予約のことを考える。

日常の幸せには、たいてい何かがついてくる。
でも、あの人を好きでいるのは違う。

昔だったら、
手が届かないことが悔しかった。
今は、その距離がいいと思う。

これからも、好きだ好きだと言うけれど、
届かなくても、ぜんぜん構わない。




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