見出し画像

目に見えないものを、どれだけ大切にできるだろう:『星の王子さま』が、大人になった私たちに問いかけること

子どものころに読んだ本を、
大人になって読み返したとき、

「あれ、こんな物語だったんだ」

と思うことがあります。

サン=テグジュペリの
『星の王子さま』は、
まさにそんな一冊かもしれません。

小さな星からやってきた王子さまが、
いくつもの星を旅し、
さまざまな人と出会っていく。

物語だけを追えば、
とてもシンプルです。

けれど、大人になって読むと、
王子さまが出会う人たちの姿が、
どこか自分自身にも重なって見えてきます。

権威を求める人。
称賛されることを求める人。
数字を数え、所有することに夢中になる人。
忙しく働き続ける人。

王子さまには、
そんな大人たちが不思議に見えます。

でも私たちは、
いつの間にかその「不思議な大人」の世界で
毎日を生きています。

数字。
結果。
肩書き。
評価。
効率。

どれも社会を生きるうえでは
必要なものです。

けれど、
それだけを追いかけているうちに、

「私は、本当は何を大切にしたかったんだろう」

ということを
忘れてしまうことがあります。

特別なものは、最初から特別なのではない

王子さまの星には、
一輪のバラが咲いています。

王子さまはそのバラを大切にしますが、
少し気難しく、
わがままにも見えるバラとの関係に悩み、
星を離れて旅に出ます。

そして地球で、
たくさんのバラが咲いている場所に出会います。

自分のバラだけが
特別だと思っていたのに、
似たような花がたくさんある。

王子さまはショックを受けます。

でも、キツネとの出会いによって、
王子さまは大切なことに気づいていきます。

自分のバラが特別なのは、
世界に一つしか存在しないからではない。

そのバラに水をやり、
話を聞き、
守り、
時間をかけてきたから。

つまり、

大切なものは、最初から大切なのではなく、
大切にしてきた時間によって、
大切なものになっていく。

私はここが、
『星の王子さま』の
とても好きなところです。

人との関係も、
仕事も、
夢も、
学びも、
きっと同じなのだと思います。

世の中に唯一無二だから
価値があるのではなく、

自分がそこに時間を使い、
心を向け、
関わり続けてきたから、
かけがえのないものになっていく。

「目に見えないもの」は、何だろう

『星の王子さま』には、

「大切なものは目に見えない」

という、よく知られた言葉があります。

あまりにも有名なので、
知っているつもりになりやすい言葉でもあります。

けれど改めて物語を読むと、
この「目に見えないもの」とは、
単なる精神論ではないことに気づきます。

誰かのために使った時間。
何度も交わした言葉。
一緒に過ごした記憶。
信頼。
愛情。
約束。
責任。

どれも、
数字で測ることはできません。

でも、
そうしたものこそが、
人生の重要な場面で
私たちの選択を支えているのかもしれません。

たとえば、
仕事を選ぶとき。

「条件がいいか」だけではなく、
「この人たちと働きたい」と思う気持ちがある。

何かに挑戦するとき。

成功確率だけではなく、
「どうしてもやってみたい」という思いがある。

誰かとの関係を続けるときも、
説明できるメリットではなく、
積み重ねてきた時間がある。

人は案外、
目に見えるものだけで
人生を決めているわけではありません。

大人になった今だから、読みたい物語

『星の王子さま』は、
子どものための物語の姿を借りながら、

「あなたは何を大切にして生きていますか」

と、大人に問いかけてくる本なのだと思います。

忙しくなるほど、
私たちは外側を見る時間が増えていきます。

他人からどう見えるか。
結果が出ているか。
予定通り進んでいるか。
何を持っているか。

だからこそ、
ときどき物語を読む。

物語には、
何か新しい知識を手に入れるだけではなく、

自分がすでに知っていた大切なことを、
思い出させてくれる力があります。

『星の王子さま』を読みながら、

自分にとっての「バラ」は何だろう。

そんなことを考えてみるのも
いいかもしれません。

仕事かもしれない。
家族かもしれない。
友人かもしれない。
長く続けてきた活動かもしれない。
まだ誰にも話していない夢かもしれない。

大切なのは、
世の中から見て価値があるかどうかではなく、

自分が、何に時間を使ってきたのか。
これから、何に心を向けていきたいのか。

そこに、
その人だけの答えがあるのだと思います。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集