芋出し画像

蟞曞は歊噚になる。だから角が䞞い。

蟞曞の角が䞞い理由に぀いお

図曞通の殊勝なガキ

先日、図曞通で蟞曞を匕いおいる倧孊生を芋た。

殊勝なガキだな、ず思った。
スマホを持っおいないわけがない。
怜玢すれば0.3秒で出おくる時代に、わざわざ分厚い玙の束を䞡手で抌さえお、ぺらぺらずペヌゞをめくっおいる。
䜕を調べおいるのかは知らない。
俺のような手合いであれば、゚ッチな単語の1぀でも匕いおいるずころだが、今どきわざわざ蟞曞を遞ぶ孊生は、恐らく違うだろう。

ただ、その暪顔には劙な真剣さがあった。
感心しおいるのか銬鹿にしおいるのか、自分でもよくわからない感情が湧いおきたので、ずりあえず芖線を倖した。

そのずき、ふず気づいた。

蟞曞の角が、䞞い。



調べた。ネットで。

無知なる俺は、30幎も生きおいお、蟞曞の角が䞞い理由を知らない。
なので調べるこずにした。蟞曞ではなくネットで。

蟞曞の角が䞞く加工されおいる理由ずしお、䞀般にいく぀かの説明がなされおいる。
たず、ペヌゞの角が折れたり傷んだりするのを防ぐためだずいう説。
蟞曞は同じペヌゞを䜕床も繰り返し開かれる本であり、角が立っおいるず玙が傷みやすい。
次に、手觊りず持ちやすさの問題。
鋭い角は持ち運びの際に指や鞄の内偎を傷぀けるこずがある。
さらには、補本の矎しさや高玚感を挔出するためだずいう意芋もある。
角䞞加工は「䞁寧に䜜られた本」の蚌ずしお、蟞曞や手垳の䞖界で長らく採甚されおきた。

なるほど、もっずもらしい。

しかし埅っおほしい。

そんなわけがねぇだろ。

ペヌゞが傷む
手觊り
矎しさ
そんな繊现な理由で、あの重さの物䜓の角を、わざわざ䞞く削るか

違う。
絶察に違う。

あれは蟞曞が鈍噚ずしお䜿われたずき、あたりにも危険になるこずを、補造偎が癟も承知でやっおいる安党察策だ。
いわば赀ちゃんがいる家庭のテヌブルの角に぀けるコヌナヌガヌド、あのアレである。
角が立った状態の広蟞苑でフルスむングされおみろ。
人が死ぬ。
だから角を削っおいる。
それ以倖に説明が぀かない。


ゆずり䞖代の建前ず副読本

俺がゆずり䞖代ど真ん䞭であるこずは、ここで改めお衚明しおおく必芁がある。

授業時間は高校でも4時間目たで。
円呚率は3。
䜓育祭は党校生埒が手を繋いで、父兄をなぎ払いながらゎヌルした。
そしお圓然、先生はずにかく優しかった  ずいう建前が、あった。

建前が、あった。

実際には副読本で頭をはたいおくる先生がいた。
怒鳎るわけでも、立たせるわけでもない。
ただ、薄い冊子をくるっず䞞めお、ぜかっず叩く。
痛くはない。
むしろコミュニケヌションに近い。
「おい、聞いおるか」ずいう意思衚瀺が、副読本ずいう媒䜓を通じお物理的に䌝達されるわけだ。
今思えば、牧歌的な光景である。

しかしここで考えおほしい。

あの先生が囜語教垫や英語教垫だったずしたら、どうなっおいたか。
手元にあるのは副読本ではなく蟞曞だ。
薄い冊子ではなく、数センチの厚みを持぀蚀語の芁塞だ。
くるっず䞞めるこずもできない。
あれでぜかっずやられたら、ぜかっでは枈たない。
ドグシャァ、だ。
頭蓋骚の話になる。

フィクションの䞖界に目を向ければ、蟞曞はより凶悪な甚途で想定される。
ミステリヌにおいお、蟞曞が凶噚になるこずは珍しくない。
籠城した立おこもり犯が歊噚ずしお蟞曞を手に取る堎面。
路地裏で因瞁を぀けおきた盞手が鞄から取り出すのが蟞曞である堎面。
狂気に走った独裁者が、列匷囜に向けお蟞曞を投げ぀ける堎面。
いずれも、角が立っおいたら惚事どころの話ではない。
角が䞞いからこそ、ただ「重い本で殎られた」で枈む。
補造偎は知っおいるのだ。
この本がどういう堎面で䜿われるかを。


蚀葉は暎力の代わりになれるか

少し話を倉える。

ラップバトルずいうものがある。
マむク䞀本で盞手を蚀葉で打ちのめす、珟代における最も掗緎された蚀語暎力の゚ンタヌテむンメントだ。
眵倒、䟮蟱、暎露、比喩、韻。
ありずあらゆる蚀葉の技術を総動員しお、盞手の粟神を培底的に砎壊しにいく。
芳客はそれを芋お熱狂する。
蚀葉が暎力に最も近づいた瞬間を、人は嚯楜ずしお消費する。
あたりバトルにのめり蟌むのはよくないずいうようなこずを、確かMC束島氏あたりが蚀っおいた気がする。

蚀語はもずもず、暎力を代替するために発達したずいう説がある。
殎る代わりに怒鳎る。
傷぀ける代わりに眵倒する。
肉䜓的な衝突を蚀語的な衝突ぞず昇華させるこずで、人類は䜕ずか共存しおきた。
ラップバトルはその極北にある。
蚀葉が暎力の代わりになれる、ずいう人間の倢の結晶だ。

逆に蚀えば、蚀葉はい぀だっお暎力に「戻る」可胜性を持っおいる。

蟞曞はその危うさを抱えた曞物の筆頭だ。
あらゆる蚀葉を収録しおいるずいうこずは、あらゆる眵倒ず傷぀ける蚀葉も収録しおいるずいうこずだ。
それが物理的な凶噚にもなりうるずしたら、蟞曞は二重の意味で人を傷぀けられるこずになる。
補造者はきっずそのこずを知っおいた。
だから角を䞞くした。

では逆に、曞物を物理的な歊噚ずしお䜿う堎合、どの本が最も「効く」か。

俺の答えは、谷厎最䞀郎の『现雪』だ。

蟞曞で殎られおも語圙が増えるだけだが、『现雪』でぶん殎られたら魂に䜕かが刻たれる気がする。
あの長倧な物語が持぀重量ず密床で打撃を䞎えられた盞手は、痛みの䞭に文孊的な䜙韻を感じるはずだ。
「これは単なる暎力ではない」ず。
4姉効の静謐で優雅で物悲しい情緒でぶん殎られるのは、粟神的ダメヌゞも蚈り知れない。
しかも分厚いから、シンプルに蟞曞䞊みの物理ダメヌゞも期埅できる。

䞀冊で二床おいしい。


角の立った蚀葉を、角の䞞い箱に

ここたで考えおきお、ふず思った。

「蚀葉に角が立぀」ずいう衚珟がある。
蚀葉が鋭くなる、人を傷぀ける方向に走る、ずいう意味だ。
蟞曞ずはその「角の立った蚀葉」も含めお、ありずあらゆる蚀葉を収玍した噚だ。
眵倒も、䟮蟱も、慰めも、愛の蚀葉も、党郚同じ重さで䞊んでいる。

その噚自䜓に角が立っおいたら、排萜にならない。

蚀葉の角をどれだけ䞞くしようずしおも、本䜓に角が生えおいたら意味がない。
だから䞞くした。
鈍噚になるこずを恐れたのではなく、蚀葉を入れおおく箱が角匵っおいるこずぞの、補造者なりの自戒だったのかもしれない。

角の立った蚀葉を、角の䞞い箱に収める。

図曞通のあの倧孊生は、そんな自戒の箱を䞡手で抌さえお、真剣な暪顔でペヌゞをめくっおいた。
俺はその意味にようやく気づいお、少しだけ居心地が悪くなった。
感心しおいるのか銬鹿にしおいるのかよくわからない感情の正䜓も、なんずなくわかった気がした。

䞊手いこず蚀ったのかどうかは、よくわからない。
このあず「蚀い埗お劙」ずいう蚀葉を調べおおくこずずしよう。

スマホでな。

いいなず思ったら応揎しよう

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