映画感想文「イッツ・ノット・ミー」レオス・カラックス監督の内面を覗ける42分間はお得感あり
まさにこれが、ブランドである。
フランスの映画監督レオス・カラックスの42分間の自分語り。自らの過去作品の引用や、その他新たな映像を加えて製作。
これが彼でなければ誰も見ないだろう。しかし過去に数々の素晴らしい作品を残してきた彼が語るところに意味がある。
もともと、パリの現代美術館ポンピドゥー・センターからの「どこからきてどこに行く」のテーマの依頼で作ったが、予算が膨らみすぎ実現しなかった展示会の素材を活かしたものだという。
まさにレオス・カラックスという、ブランドありきの作品。
その昔、同世代の『グラン・ブルー(1988年公開)』や『レオン(1994年公開)』の監督リュック・ベッソンとセットで新世代のフレンチシネマとして、日本でもかなり流行った。
個人的にはジュリエット・ビノッシュ主演の『汚れた血(1986年公開)』『ポンヌフの恋人(1991年公開)』が好き。『ポーラX(1991年)』も割と好きだった。これらを当時はかなり新鮮な思いで観たものである。その後見返してはいないが、今みたらどう言う感想持つのかな。若者にしかわからない作品な気もする。ので、いまの自分が見たらどう感じるのか試すのが怖い。が、本作の随所にこのような過去作品のオマージュあり、懐かしかった。
寡黙な作家のため作品数は多くない。しばらく作品を発表していなく、最近では『アネット(2021年公開)』がある。相変わらず一般的ではないが、なかなか味わい深かった。
比較で言うとリュック・ベッソンの方が圧倒的に多作だし、わかりやすく適度に商業的。のため、リュック・ベッソンのほうが売れる映画を作る。なお、尖った作品を理解できるほどの芸術的センスもない一般人の私は、リュック・ベッソンの方が好きである。
それに比べ、レオス・カラックスは好き嫌いが分かれる作家だ。難解というより、コミュ障、オタク、的な匂いがする。わかる人だけわかればいい、というスタンスが匂う。また、本作を観て改めて、『畏れ』がある種のテーマである監督なんだと勝手に理解した。
そう言う意味では、42分間とコンパクトにミステリアスな監督の内面が覗き見える。そんな面白さとお得感がある作品である。
