「在庫が合わない」の犯人探しをやめた日。そこから組織は壊れなくなった【第3回:信頼論】
10 + 20 = 30 という当たり前を「誇り」に変える規律の力
2023年夏の「原罪」
2023年の夏。
お盆休み前の需要期を迎え、当社の出荷はピークに達していました。
そんな時、一本の電話が鳴りました。
「急で申し訳ないが、商品Aを追加で100ケース発注したい。明日、間に合いますか?」
私は即座に、当時使っていたシステムで在庫を確認しました。
画面に表示された数字を見て、迷わず答えました。
「大丈夫です。明日、手配できます」
需要期の商売は「即断」こそが価値だ。
そう信じていた私は、疑いもしませんでした。
――ところが。
いざ出荷準備に入った瞬間、あるはずの在庫が、どこにもありませんでした。
「誰がミスした?」「入力漏れか?」
てんやわんやで急遽追加生産を行い、事なきは得ましたが、あの日、頭の中を駆け巡ったのは焦りだけではありません。
あの嘘の数字を信じ、「大丈夫だ」という判断を下したのは、他でもない私自身だった。
その事実が、管理者として恐ろしかったのです。
あの日、足りなかったのは在庫ではありません。
「自分の判断が、誰かのミスで裏切られない」という安心感。
つまり、数字への「信頼」だったのです。
こんにちは、Good Ruler です。
なぜ普通の会社では 10 + 20 = 30 にならないのか?
算数では当たり前のことが、組織では奇跡になります。
入力漏れ、後回し、伝達ミス。
その「小さな綻び」を放置することは、経営者が「過去の嘘」で意思決定を続けるのと同じです。
それは慎重な経営ではありません。
ただの、遅延した破綻です。
第1回で「在庫は現金だ」と定義し、第2回で「AIを使って構造を整理した」としても、その箱に「正しい数字」を入れるのはAIではありません。
人間です。
「在庫が合わない」を誰かのせいにできなくなった時、商売はどう変わるのか。
私たちが「2023年の絶望」から、どうやって「現在の確信」へ辿り着いたのか。
その1年間の記録をお話しします。
【今日のギフト】無料エリアを読んでくださったあなたへ
まずは、ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
「10 + 20 = 30」という算数が、経営においていかに「重い」ものか。
共感いただけたなら、それだけでこのDXの半分は成功したも同然です。
もし今、あなたの会社の在庫表に「1円の疑い」でもあるのなら、その数字で下す判断はすべて「賭博」になってしまいます。
ここから先は、私たちがその「疑い」をどうやって拭い去り、現場が自発的に数字を守る「規律」を手にするに至ったか。
その生々しい変化の記録を共有します。
「システムは正しいが、現場が動かない」
そのジレンマを突破するヒントを、ここに置きます。
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実録:規律が宿るまでの「潜伏の1年」
2024年8月〜12月:教育という名の「泥臭い戦い」
2024年8月、AppSheetによる新システムが稼働しました。
しかし、初日から魔法が起きたわけではありません。
最初の棚卸しでは、操作を一つずつ教え、膨大な労力を使い、泥臭く「数字と向き合う習慣」を現場に植え付けるしかありませんでした。
私はここで、「システムを入れれば解決する」という幻想を、自ら捨てました。
当社の設計は、一般的な「一斉棚卸し」に重点を置いていません。
**「資材や原料の動きを一番把握している現場が、相応しいタイミングで理論と実在庫を修正できる」**ようにしました。
各ラインの担当者が、自分の担当する資材の在庫に責任を持つ。
つまり「権限」を現場に渡したのです。
「恐怖」は、無関心よりはるかに健全だ
稼働から1年。
現場の空気が変わりました。
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