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シティボーイ未満、僕のトーキョー『POPEYE』

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東京に出てくる前、そこは映画のワンシーンが途切れなく続いている場所だと思っていた。
小洒落た店が立ち並んでいて、きれいな服を着た人がたくさんいる。
休日には美術館や映画館に行ってデートをして、終わってからうまいハンバーガーやピザを肩ひじ張らずに頬張る。
飲み物はコーヒー。コーラじゃない。


都会に馴染んだ人間はきっと都会を享受しながらにして、肩の力が抜けている。
そう、それが僕の憧れる「シティボーイ」だ。

東京に来てからというもの、少しいい服を買ってみたり、お洒落なカフェを調べてみたりしたけれど、自分が「シティボーイ」になっている感じが全然しなかった。
生活と理想がどんどん乖離していった。
広い街の中でただ一人という孤独感だけが増していった。
どこに行っても他人ばかりで、僕の生活を見てくれる人はいなかった。

映画の俳優も観客も僕ひとりで、それはすごくつまらない映画に思えた。

アラサーになった今思えば当然のことだけど、実際の東京に僕は多くを求め過ぎたのだ。
新宿は汚いし、表参道に行ってもお洒落な人よりも半袖半ズボンのインバウンドが目立つ。
どんな場所に行っても、友達やパートナーがいなければ楽しみを共有できなかった。

僕の頭の中にあった「トーキョー」、いったいはどこにあるのだろうか。

その「トーキョー」は、街にはなかった。
いつも部屋の床に転がっていて、ページをめくるたびに東京は現れた。

上京前に読んでいた 『POPEYE』 の中の東京。
あるいは、 KYNEのイラストが表紙を飾る『Casa BRUTUS』 のカフェ特集の中にあった東京。

美しく切り取られた街と、今にも会話が聞こえてきそうな若者の写真。
都会を楽しむ人たちの言葉で紡がれた、美しい都市のイメージ。
妖しいネオン街の探検から、健康的で無害な公園に差す太陽の光まで。

そうやって、僕の中にクールでカルチャーな「トーキョー」が出来上がっていった。

この現実に気付かされてからは、僕はもうトーキョーを探していない。
なぜなら、それは雑誌を開けば訪れることができる街だから。
そして、目の前には僕が生きる街としての実際の東京がある。

だから僕はいくつになっても、ハンバーガーにはコーラでいいじゃないか、と思う。
コーヒーを飲むのは、『Casa BRUTUS』の中だけで十分だ。
そんな僕はこれからもずっとシティボーイ未満なのだと思う。

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