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異䞖界ダむニング りょりょ亭 第二十九話

#第二十九話  明かされる真実

薄暗い店内に足を螏み入れたリョコたちを、䞃色の髪を持぀ピキアヌゞュが優雅に迎えた。

「たあたあ、お連れさんもいるのね」ピキアヌゞュがガリオンず゚リンを倀螏みするように芋る。「ふぅん、なるほど。王様の子飌いっおわけ」

「え」ガリオンが驚く。「なんで分かるんだ」

「あら、ピキねえさんを誰だず思っおるの」ピキアヌゞュが劖艶に埮笑む。「この店に来る客の玠性くらい、䞀目で分かるわよ」

カりンタヌの奥から、涌やかな声が響いた。

「あら、お客様今日は賑やかね」

蒌い髪を優雅に揺らしながら、人魚の女性が珟れた。海の煌めきを宿したような瞳。

「玹介するわ」ピキアヌゞュが手を振る。「うちのバヌテンダヌ、䞖界䞭の海を旅しおる人魚なの。旅から戻るず、ここで働いおくれるのよ」

「はじめたしお」リノァラが優雅に䞀瀌する。「海の旅人、リノァラず申したす。りょりょ亭のリョコさんですね 噂はかねがね」

「噂」

「ええ、深海の賢者たちも話題にしおいたしたよ。『陞の䞊に、海をも癒す料理を䜜る店がある』っお」

リョコは照れくさそうに頭を掻いた。

「さお」ピキアヌゞュが手を叩く。「立ち話もなんだから、座りなさい。リノァラ、みんなに䜕か䜜っお」

「ええ、じゃあ今日は特補の《きたぐれ氷星》を䜜るわ」リノァラが匵り切っお準備を始める。

リョコたちがカりンタヌに座るず、ピキアヌゞュは真剣な衚情になった。

「で、䜕を聞きに来たの 囜王様のこず それずも、りょりょ亭の本圓のこずかしら」

「䞡方です」リョコが真っ盎ぐピキアヌゞュを芋぀める。

ピキアヌゞュは深いため息を぀いた。

「やっぱり、その時が来たのね  」

リノァラが矎しいカクテルを䞊べる。グラスの䞭で、小さな蒌い結晶が深海に差す光のように茝いおいた。

「たず、飲んで」ピキアヌゞュが促す。「話は長くなるから」

䞀口飲むず、䞍思議な枅涌感が䜓を包んだ。たるで、心の䞭の靄が晎れおいくような  

「矎味しい  」゚リンが驚く。「これは  魔力が」

「そう、心を柄たせる効果がありたす」リノァラが埗意げに説明する。「真実を聞くには、心が柄んでないず」

ピキアヌゞュは懐かしそうに倩井を芋䞊げた。

「あなたがここに来たのは、ただ五歳の時だったわね」

「え」リョコが驚く。「そんなに小さい頃から」

「芚えおないのたあ、無理もないかしら」ピキアヌゞュが埮笑む。「あの日は、倧雚が降っおいたわ」

店内の照明が少し暗くなり、たるで回想シヌンのような雰囲気になった。

「小さな女の子が、りょりょ亭の前で泣いおいたのよ。びしょ濡れで、裞足で。『お母さん、お母さん』っお」

リョコの衚情が曇る。断片的な蚘憶が蘇っおきた。

「私が倖に出るず、その子——あなたは私を芋お蚀ったの。『きれいな髪』っお」ピキアヌゞュが䞃色の髪を撫でる。「それで思わず笑っちゃっお。こんな状況で、髪の色なんか気にする子がいるなんお」

リノァラが興味深そうに身を乗り出す。

「それで、その子を店に入れたんですか」

「ええ。枩かいスヌプを䜜っおあげたら、矎味しそうに飲んでくれお」ピキアヌゞュの目が優しくなる。「でもね、普通じゃなかったのよ」

「普通じゃない」ガリオンが眉をひそめる。

「その子の瞳を芋た瞬間、分かったの」ピキアヌゞュが真剣な衚情になる。「この子には、特別な『玠質』があるっお」

「玠質  」リョコが呟く。

「料理に魔力を蟌める玠質 いいえ、違う」ピキアヌゞュが銖を振る。「もっず根源的なもの。人ず人を『繋ぐ』力。異なる皮族、異なる䞖界芳を持぀者たちを、繋ぐ力」

゚リンが頷く。

「だから、りょりょ亭にはあんなに倚様な皮族が集たるのですね」

「そう。リョコには、誰も拒たない包容力がある」ピキアヌゞュが続ける。「それは生たれ持った才胜。特別な血筋の子にしか宿らない力よ」

リョコが困惑する䞭、ガリオンが疑問を口にした。

「ちょっず埅お。あんた、どうしおそんなこずたで分かるんだ それに、さっきから気になっおたんだが  」

ガリオンはピキアヌゞュをじっず芋぀めた。

「あんた、人間だろ䞀䜓いく぀なんだ」

ピキアヌゞュが劖艶に埮笑む。

「あら、幎霢を聞くなんお野暮ね〜」

「いや、でも五歳のリョコを匕き取ったっおこずは、少なくずも二十幎以䞊前から  」

「もっずよ」ピキアヌゞュがさらりず蚀う。「私がりょりょ亭を䜜ったのは、䞉十幎前。その前は  」

「その前は」゚リンが身を乗り出す。

「王囜に仕えおいたわ」ピキアヌゞュが懐かしそうに語る。「前王の時代から。リヌリョがただ赀ん坊の頃から知っおるのよ」

「前王の時代」ガリオンが声を裏返す。「それっお、少なくずも五十幎以䞊前じゃ  」

「もっずよ」ピキアヌゞュがくすりず笑う。「前王の即䜍匏にも立ち䌚ったわ。あれは癟幎前のこずだったかしら」

「ひゃ、癟幎」ガリオンが怅子から転げ萜ちそうになる。「人間の寿呜じゃ  」

「誰が普通の人間だっお蚀った」ピキアヌゞュがたた、くすりず笑う。「たあ、その話は眮いおおきたしょう。倧事なのは、りょりょ亭の秘密」

リノァラが尋ねる。

「りょりょ亭には、䜕か特別なものがあるんですね」

「ええ」ピキアヌゞュが頷く。「地䞋に、ずおも倧切なものが眠っおいる」

「倧切なもの」

「『調和の瀎石』よ」ピキアヌゞュが静かに告げる。「リョリヌディア王囜の建囜時に据えられた、䞉぀の瀎石の䞀぀」

゚リンが息を呑む。

「建囜神話に出おくる、䌝説の  」

「䌝説じゃないわ」ピキアヌゞュが銖を振る。「実圚する。そしお、その瀎石こそが、この囜の『巡環』を保っおいる」

「魔力の埪環、自然の調和、そしお人々の心の均衡」ピキアヌゞュが説明する。「瀎石は、それら党おを調敎する圹割を持っおいる。そしお、りょりょ亭の地䞋に眠る『調和の瀎石』は、特に重芁」

「なぜ」

「異なる皮族が集い、食事を共にする」ピキアヌゞュが埮笑む。「その行為自䜓が、調和の力を匷めるの。だから私は、瀎石の䞊にりょりょ亭を建おた」

リノァラが感心したように呟く。

「だから、りょりょ亭には䞍思議な魅力があるのですね 」

「そしお、あの子 いえ、囜王リヌリョもそれを知っおいた」ピキアヌゞュが続ける。

「幌い頃から私の膝の䞊で、この話を聞いお育ったから。王になっおからも、瀎石の状態が気になっお仕方なかったのよ」

リョコが驚く。

「じゃあ、リヌリョ様が蚀っおいた『倧切なもの』っお  」

「そう、調和の瀎石」ピキアヌゞュが頷く。「でも、それだけじゃないのよ。もっず個人的で倧切な理由もあるの たあ、それは本人からい぀か聞きなさい」

ガリオンが腕を組む。

「なるほど、それで囜王自ら  でも、なぜそんな重芁なものを」

「二十幎前の出来事が関係しおいるわ」ピキアヌゞュの衚情が暗くなる。「ネクリシアの建囜にた぀わる、悲劇が」

「ネクリシア」

「今では魔囜ず呌ばれおいるけど、元々はリョリヌディアの䞀郚だった土地よ」ピキアヌゞュが重い口を開く。「二十幎前、黒い霧が初めお珟れた時、リヌリョは即䜍しおただ日も浅い若き王だった」

「でも、原因䞍明の病に倒れ、床に䌏せっおしたった」ピキアヌゞュが続ける。「そんな時、宰盞が独断で『浄化政策』を実行した」

゚リンが青ざめる。

「王の蚱可なく」

「そう。『囜を守るため』ずいう倧矩名分で」ピキアヌゞュが苊い衚情を浮かべる。「黒い霧に䟵された者たちを、容赊なく囜倖远攟した。リヌリョが意識を取り戻した時には、もう手遅れだった」

「それっお  」リョコが蚀葉を倱う。

「リョリヌディア史䞊最倧の悲劇よ」ピキアヌゞュが深くため息を぀く。「䞀倜にしお、䜕千もの家族が匕き裂かれた」

その時、ガリオンの衚情が急に暗くなった。

「なあ  その䞭に、ザむリスっお名前は  」

ピキアヌゞュがガリオンを芋぀める。その瞳には、深い同情が宿っおいた。

「ザむリス  」ピキアヌゞュが蚘憶を蟿る。「ああ、あの子ね。」

「知っおるのか」ガリオンが身を乗り出す。

「ええ。王囜階士団の若き゚ヌスだった」ピキアヌゞュが続ける。「二十幎前、黒い霧が珟れた時、真っ先に前線に立った勇敢な階士」

ガリオンの目に涙が滲む。

「兄貎は  俺よりずっず優秀だった。剣術も、魔法も、䜕もかも」

「芚えおいるわ」ピキアヌゞュが優しく蚀う。「ザむリスは真面目で責任感が匷かった 」

「でも、い぀も俺を守っおくれた」ガリオンが震え声で続ける。「『匟は俺が守る』っお」

リョコず゚リンが心配そうにガリオンを芋぀める。

ガリオンが拳を握りしめる。「俺は䜕も知らなかった。兄貎が応然ず姿を消しお  」

ピキアヌゞュが静かに続けた。

「ザむリスは、仲間を守るために自分の䜓で黒い霧を受け止めた。その瞬間、圌の瞳が  倉わっおしたった」

「黒く濁っお、たるで別人みたいに」ピキアヌゞュが静かに語る。「でも、最埌の瞬間、正気に戻っおみんなに蚀ったわ。『俺から離れろ』っお」

店内に重い沈黙が流れる。

「『匟に、仲間に迷惑をかけたくない』」ピキアヌゞュが呟く。「それが、ザむリスが残した最埌の蚀葉」

ガリオンが歯を食いしばる。「俺は  俺は䜕も知らなかった」

リノァラがそっずハンカチを差し出す。

「でも今は」ピキアヌゞュが重い口を開く。「ネクリシアで将軍の䞀人になっおいるわ。『黒の剣聖』ず呌ばれお」

「将軍  」ガリオンが呆然ずする。「兄貎が、敵の  」

「でも、完党に心を倱ったわけじゃないみたい」ピキアヌゞュが付け加える。「リョリヌディアの民間人は決しお傷぀けないずいう噂もある」

「本圓か」ガリオンが顔を䞊げる。

「ただの噂かもしれない。でも  」ピキアヌゞュは意味深に埮笑む。「垌望は、ただあるわ」

リノァラが呟く。

「こんな悲劇が、他にも  」

「ええ」ピキアヌゞュが頷く。「ガリオンずザむリスだけじゃない。リョリヌディア䞭で、同じような悲劇が起きた」

ピキアヌゞュは新しいグラスを取り出し、自分甚の酒を泚いだ。

「商人ギルドの䌚長だったマルセルは、嚘のリヌナが黒い霧に䟵されお远攟された埌、党財産を投げ打っお嚘を探しに旅立った。でも、二床ず戻らなかった」

「王立魔法孊院の䞻垭だった゚レナずその恋人のシリりス」ピキアヌゞュが続ける。「二人は結婚を玄束しおいた。でも、シリりスが霧に䟵されお  ゚レナは今も独身で、圌の垰りを埅っおいる」

「そんな  」リョコが涙を流す。

「パン屋のおばあさんは、䞉人の孫を䞀床に倱った」ピキアヌゞュの声も震える。「今も毎日、孫たちの奜きだったパンを焌き続けおいる。『い぀か垰っおきた時のために』っお」

店内が悲しみに包たれる䞭、ピキアヌゞュは話を続けた。

「今回のような倧芏暡な黒霧はなかったけど、今たでにも黒霧は䜕床もリョリヌディアを襲っおる  あのバカのこずも 」

「誰」リョコが尋ねる。

「私の匟、マロノァンよ」

「なんだっお」党員が驚愕する。

ピキアヌゞュは深い悲しみを湛えた目で、グラスの䞭の酒を芋぀めた。

「あの子も、昔はりょりょ亭で働いおいたのは知っおるでしょう」懐かしむような、埌悔するような声。「才胜豊かな料理人だった。でも  」

「でも」

「黒い霧が珟れた時、あの子は興奮しおいた」ピキアヌゞュが苊い衚情を浮かべる。「『これだこれこそ俺が求めおいた力だ』っお」

リノァラが困惑する。

「なぜ、そんなこずを」

「マロノァンは幌い頃から、特別な力に憧れおいた」ピキアヌゞュが説明する。「料理の才胜はあったけど、それだけじゃ満足できなかった。もっず匷い力、もっず人を支配できる力を求めおいた」

「それで、自ら黒い霧に」゚リンが信じられないずいう衚情をする。

「私は必死に止めたわ」ピキアヌゞュの声が震える。「『そんなものに頌らなくおも、あなたには玠晎らしい才胜がある』っお。でも  」

ピキアヌゞュは䞀気にグラスを空けた。

「『姉さんには分からない』」声真䌌をするように、䜎い声で続ける。「『この平凡な人生の退屈さが。この玠晎らしい力があれば、俺は特別な存圚になれる』」

「そしお、目の前で黒い霧に身を委ねた」ピキアヌゞュが最んだ瞳を䌏せる。「あの時の狂気に満ちた笑顔が、今でも忘れられない」

リノァラがピキアヌゞュの背䞭をさする。

「倉貌は䞀瞬だった」ピキアヌゞュが続ける。「優しかった匟の顔が、狂気に歪んで  そしお蚀ったの。『ありがずう、姉さん。これで俺は自由だ』」

「自由  」リョコが呟く。

「高笑いしながら去っお行った」ピキアヌゞュが自嘲的に笑う。「今では『絶望のシェフ』なんお呌ばれお、ネクリシアで恐れられおいる」

ガリオンが同情的な県差しでピキアヌゞュを芋る。

「あんたも、家族を  」

「そう、私たちは同じ」ピキアヌゞュが頷く。「家族を闇に奪われた者同士」

重い沈黙の埌、リョコが尋ねた。

「でも、ネクリシアを支配しおいるのは誰なのマロノァンじゃないんでしょう」

ピキアヌゞュの衚情が急に険しくなった。

「それが  最倧の謎よ」

「謎」

「ネクリシアの支配者  」ピキアヌゞュが声を䜎める。「魔王ノァルダルク」

「魔王」党員が驚く。

「聞いたこずがない」゚リンが困惑する。「王囜の蚘録にも、諜報郚の報告にも、そんな名前は  」

「圓然よ」ピキアヌゞュが頷く。「ノァルダルクの存圚を知る者は、ごく僅か。そしお、その正䜓を知る者は誰もいない」

リノァラが震え声で尋ねる。

「誰も  芋たこずがないんですか」

「芋た者は生きお垰らない」ピキアヌゞュが断蚀する。

ガリオンが眉をひそめる。

「ノァルダルクは垞に深い闇に包たれおいる」ピキアヌゞュが説明する。「玉座に座っおいるのは確かだけど、その姿は誰も芋えない。ただ、虚無のような声だけが響く」

「い぀から、そんな存圚が」リョコが尋ねる。

ピキアヌゞュが銖を振る。「ある日突然、ネクリシアの玉座に座っおいた。たるで、最初からそこにいたかのように」

リノァラが恐る恐る尋ねる。

「もしかしお、人間じゃない  」

「分からない」ピキアヌゞュが繰り返す。「闇そのものが意志を持った存圚かもしれないし、異界から来た䜕かかもしれない  」

党員が蚀葉を倱う䞭、ピキアヌゞュは続けた。

「確かなのは、ノァルダルクが珟れおから、ネクリシアは本圓の魔囜になったずいうこず」

「どういう意味ですか」゚リンが尋ねる。

「それたでは、ただの远攟者の集たりだった」ピキアヌゞュが説明する。「でも、ノァルダルクが珟れおから、組織化され、軍事力を持ち、他囜を脅かす存圚になった」

「そしお今も、各地から人を攫い続けおいる」リノァラが付け加える。「海でも、行方䞍明者が増えおいたす」

「黒い霧で掗脳しお、囜民を増やすため」ピキアヌゞュが頷く。「ノァルダルクの目的は、党䞖界を絶望で満たすこずらしい」

「なぜ、そんなこずを」リョコが尋ねる。

「分からない」ピキアヌゞュが䞉床、同じ答えを返す。「ノァルダルクの思考は、理解できない。」

「ずにかく」ピキアヌゞュが話をたずめる。「ネクリシアずの戊いは、これからが本番よ。『巡環の饗宎』で䞀時的に黒い霧を払ったけど、ノァルダルクは必ず次の手を打っおくる」

ガリオンが決意を蟌めお立ち䞊がる。

「俺は戊う。兄貎を取り戻すためにも、こんな悲劇を二床ず起こさないためにも」

「私も」゚リンが頷く。「王囜のため、そしおすべおの匕き裂かれた家族のために」

「みんな  」リョコが蚀葉を詰たらせる。

「垌望はある」ピキアヌゞュが優しく埮笑む。「リョコ、あなたの料理が蚌明した。絶望に染たった心も、取り戻すこずができる」

リョコが力匷く頷く。「必ず、みんなを取り戻す。ザむリスさんも、マロノァンも、すべおの人を」

「頌もしいわね」ピキアヌゞュが立ち䞊がる。「さあ、今倜は泊たっおいきなさい。明日は早いわよ」

「明日」

「リョコ、あなたにも話しおいない地䞋ぞの通路がりょりょ亭にはあるのよ。調和の瀎石に䌚わせおあげる」ピキアヌゞュがりむンクする。「りょりょ亭の本圓の力を知れば、きっず垌望が芋えおくる」

党員が驚くがそれ以䞊は明日のお楜しみよず、今倜泊たる郚屋ぞず案内をされた。

その倜、リョコは䞎えられた郚屋で䞀人、考え蟌んでいた。

数え切れない家族たちの悲劇。

謎に包たれた魔王ノァルダルク。

りょりょ亭の存圚意矩。
人ず人を繋ぎ、心を通わせ、垌望を玡ぐ堎所。

それを守り、広げおいくこずが、自分の䜿呜。

窓の倖では、星が静かに瞬いおいる。

ノァルダルクに察抗する鍵があるこずを信じお、リョコは静かに眠りに぀いた。

匕き裂かれたすべおの家族が、再び食卓を囲める日を倢芋ながら。​​​​​​​​​​​​​​​​

  

朝靄が立ち蟌める䞭、リョコたちはピキアヌゞュに連れられお、りょりょ亭の隠された地䞋ぞず向かっおいた。

リョコが呟く。「こんなずころ 気づきもしなかった 」

「圓たり前よ、分かったらずっくに攻め蟌たれおるわ。特別な呪術がないず入れないのよ」ピキアヌゞュが壁の䞀郚に手を圓おる。するず、石壁がゆっくりず開いた。

「すげぇ  」ガリオンが息を呑む。

螺旋階段を䞋りおいくず、次第に空気が倉わっおきた。枅浄で、それでいお力匷い䜕かを感じる。

「魔力が  濃い」゚リンが呟く。

「圓然よ、調和の瀎石に近づいおいるんだから」

階段を䞋りきるず、そこには巚倧な地䞋空間が広がっおいた。

䞭倮には、人の背䞈ほどもある氎晶のような石が、眩い光を攟っおいた。

「これが  調和の瀎石」リョコが圧倒される。

「矎しい  」゚リンが感嘆の声を䞊げる。「たるで、すべおの色が調和しおいるようですね」

ピキアヌゞュが瀎石に近づく。

「この石は、リョリヌディア建囜時に据えられた䞉぀の瀎石の䞀぀。『力の瀎石』『知恵の瀎石』そしお、この『調和の瀎石』」

「他の二぀は」ガリオンが尋ねる。

「『力の瀎石』は王城の地䞋深くに」ピキアヌゞュが説明する。「『知恵の瀎石』は王立図曞通の最深郚に。」

「芋お」

ピキアヌゞュが手をかざすず、瀎石がより匷く茝き始めた。するず、空䞭に無数の光の糞が珟れた。

「これは  」゚リンが驚く。

「リョリヌディア䞭の人々の『繋がり』よ」ピキアヌゞュが説明する。「家族、友人、恋人、仲間  すべおの絆が、この石を通じお可芖化されおいる」

光の糞は耇雑に絡み合い、矎しい暡様を描いおいた。しかし——

リョコが指差す。「黒く切れおいる糞が」

「そう」ピキアヌゞュの衚情が曇る。「切れた絆。ネクリシアに堕ちた者たちずの繋がり」

黒く切れた糞は、無数にあった。たるで、傷跡のように。

ガリオンが䞀本の糞を芋぀める。それは圌から䌞びお、途䞭で黒く千切れおいた。

「兄貎ずの  」

「よく芋お」ピキアヌゞュが優しく蚀う。「完党には切れおいない」

確かに、黒く千切れたように芋える糞も、よく芋るず现い光が残っおいた。

「垌望は、ただある」ピキアヌゞュが埮笑む。「そしお、リョコ。あなたを芋お」

リョコから䌞びる光の糞は、他の誰よりも倚く、そしお匷く茝いおいた。

「これは  」

「あなたが繋いできた絆」ピキアヌゞュが説明する。「りょりょ亭で出䌚った、すべおの人ずの繋がり」

その時、瀎石が突然匷く脈動した。

ピキアヌゞュの衚情が真剣になる。

光が闇に倉わり、䞀぀の映像を映し出した。

そこには、深い闇に包たれた玉座が芋えた。そしお、その闇の䞭から響く声——

『調和の瀎石か  やはり、そこにあったか』

党員が凍り぀く。

「 たさか ノァルダルク」ピキアヌゞュが叫ぶ。

『私を知っおいるのか 聡いではないか。そしお、それが調和の子か 』

「調和の子」リョコが震え声で尋ねる。

『お前のこずだ、リョコ。お前こそ、我が探し求めおいた存圚』

ピキアヌゞュがリョコを庇うように前に出る。

「䜕が目的」

『簡単なこずだ。調和を絶望に倉える。それが、我が目的』

闇がうごめく。

『安心しろ。すぐに終わる。次の双月が亀わる倜、我は動く。調和の瀎石を、絶望の瀎石に倉えおやる』

「そんなこずはさせない」ガリオンが叫ぶ。

『ほう、その颚貌 貎様はザむリスの匟か。や぀は、我が最匷の将軍だ。お前も、いずれ兄ず同じ道を蟿るだろう』

ガリオンが歯を食いしばる。

『ピキアヌゞュ、マロノァンもお前を埅っおいる。絶望のシェフずしお、芋事に成長したぞ』

「マロノァン  」ピキアヌゞュが動揺する。

『埅っおいるがいい。次に䌚う時は、すべおが終わる時だ』

映像が消え、瀎石は元の穏やかな光に戻った。

重い沈黙が地䞋空間を包む。

「双月が亀わる倜 」゚リンが蚈算する。「あず3ヶ月もないですね 」

「どうすれば  」リョコが震える。

その時、瀎石が光り始めた。今床は、枩かく優しい光。

『怖がらないで』

若い女性の声が響いた。それは、ノァルダルクの虚無的な声ずは察照的に、慈愛に満ちおいた。

「この声は たさか」ピキアヌゞュが驚く。

『私は調和の瀎石に宿る意志、ハルステラ。千幎前、この石を䜜った魔法䜿いの想いの結晶』

光が枊を巻きながら集たり、人の圢を取り始める。蒌い光で䜜られた、矎しい粟霊の姿。癜い髪はクリスタルのように煌めき、その瞳は党おを内包しおいるかのようだった。

『久しぶりね、ピキアヌゞュ』

「ハルステラ様  」ピキアヌゞュが膝を぀く。「癟幎前、䞀床だけお䌚いしたこずが」

『芚えおいおくれお嬉しいわ』ハルステラが優しく埮笑む。『あの時のあなたは、ただ若い宮廷魔術垫だったわね』

リョコたちは圧倒されお蚀葉を倱っおいた。

ハルステラがゆっくりずリョコに近づく。その歩みず共に、床に小さな光が花のように咲いおいく。

『リョコ』

名前を呌ばれた瞬間、リョコの䜓が埮かに光った。

「は、はい」

『初めたしお。でも、私はずっずあなたを芋守っおいた』ハルステラがリョコの頬に手を圓おる。

『五歳の時、雚の䞭で泣いおいたあなたを。りょりょ亭で初めお料理を䜜った時のあなたを。そしお、仲間たちず笑い合うあなたを』

「ずっず  芋おいたんですか」

『ええ。あなたは特別な子だから』ハルステラの瞳が優しく现められる。『あなたには力がある。人を繋ぐ力、絆を玡ぐ力、そしお——』

ハルステラがリョコの手を取った。その瞬間、リョコの意識に映像が流れ蟌んできた。

無数の人々が、䞀぀の倧きなテヌブルを囲んでいる光景。人間、獣人、劖粟、粟霊  あらゆる皮族が共に食事をし、笑い合っおいる。その䞭心には、リョコがいた。

『これが、あなたの本圓の力。絶望を垌望に倉える力』

『巡環の饗宎を䜜れたのは、あなたがいたから』ハルステラが優しく諭す。『でも、あなたは䞀人だった』

リョコははっずする。そうだ、あの六぀の食材を集められたのは——

「仲間が  みんながいおくれたから」

『そう』ハルステラが嬉しそうに頷く。『それこそが、調和の真髄。䞀人では成し埗ないこずも、心を合わせれば可胜になる』

ハルステラは䞀床リョコから離れ、党員を芋枡した。

『ガリオン』

「は、はい」

『あなたの兄ぞの想いは、この石を通じお芋える。その絆は、ただ生きおいる』

ガリオンの目から涙が零れる。

『゚リン、あなたの忠誠心ず優しさが、王囜を支えおいる』

『ピキアヌゞュ、あなたがりょりょ亭を䜜っおくれなければ、この奇跡は起きなかった』

「私はただ  」ピキアヌゞュが蚀いかける。
『謙遜しないで』ハルステラが埮笑む。『あなたは知っおいたのでしょう い぀か、こういう日が来るこずを』
ピキアヌゞュが小さく頷く。

䞀人䞀人に優しい蚀葉をかけた埌、ハルステラは再びリョコに向き盎った。

『でも、ここからはもっず倧きな茪が必芁。りょりょ亭に集う、すべおの仲間たち。そしお——』

ハルステラが手を振るず、空䞭に新たな光景が浮かび䞊がった。

黒く切れた糞が、少しず぀光を取り戻しおいく様子。

『芋お。これが未来の可胜性。切れた糞も、繋ぎ盎すこずができる』

『でも、それには条件がある』ハルステラの衚情が少し厳しくなる。

圌女が指を䞀本立おる。
『たず、憎しみではなく、愛を持っお。憎しみは新たな断絶を生むだけ。愛こそが、切れた糞を繋ぐ接着剀』

二本目の指。
『次に、恐れではなく、勇気を持っお。ノァルダルクは恐怖を糧ずする。勇気ある行動こそが、闇を払う光ずなる』

䞉本目の指。
『そしお䜕より——』
ハルステラがリョコの䞡手を包み蟌む。その瞬間、二人の間に匷い光が生たれた。
『信じるこず。どんなに深い闇に萜ちた者でも、必ず光は残っおいる。それは、あなた自身が蚌明したでしょう』

「私が」

『トルノィンを救った時、あなたは信じた。圌の䞭に残る優しさを。その信念が、巡環の饗宎に力を䞎えた』

リョコの脳裏に、あの時の蚘憶が蘇る。確かに、諊めなかった。信じ続けた。

『それを、もっず倧きな芏暡で。ザむリスも、マロノァンも、そしおネクリシアのすべおの民も。圌らの䞭に残る光を信じ続けるこずができるかしら』

リョコは迷いなく頷いた。

「はい。信じたす。みんなを。たずえノァルダルクでも——」

その瞬間、ハルステラの衚情に驚きが浮かんだ。
『ノァルダルクたで』

「だっお」リョコが真っ盎ぐハルステラを芋぀める。「絶望の化身だずしおも、元は䜕かの想いから生たれたはず。その想いの䞭に、きっず——」

ハルステラが感極たったように、リョコを抱きしめた。

『やはり、あなたは  』蚀いかけお止める。『玠晎らしい子ね。その玔粋な心、決しお倱わないで』

ハルステラの䜓が埐々に薄くなっおいく。

『最埌に䞀぀』

光の欠片が、リョコの胞に吞い蟌たれた。

『これは、私からの莈り物。窮地に陥った時、きっずあなたを助けるわ』

『リョコ、あなたの本圓の物語は、これから始たる。あなたが誰なのか、なぜ遞ばれたのか。すべおは、時が来れば分かる』

最埌の蚀葉ず共に、ハルステラは無数の光の粒子ずなっお、瀎石ぞず戻っおいった。

瀎石は静かに脈動を続け、たるで圌女がただそこにいるこずを瀺すかのようだった。​​​​​​​​​​​​​​​​

地䞋空間には、枩かな䜙韻だけが残されおいた。​​​​​​​​​​​​​​​​

「切れた糞を、繋ぎ盎す  」リョコが呟く。

「でも、どうやっお」゚リンが尋ねる。

リョコの目に、決意の光が宿った。

「 料理。りょりょ亭だもの、それしかないわっもっず匷力な、もっず倚くの人に届く料理を䜜る」

「巡環の饗宎を超えるっおのか」ガリオンが尋ねる。

「いいえ」リョコが銖を振る。「巡環の饗宎を、みんなで䜜るんです」

ピキアヌゞュが理解したように頷く。

「なるほど。䞀人の力じゃなく、みんなの力を合わせお」

「はい。りょりょ亭の仲間党員で、それぞれの埗意技術で䞀぀の倧きな饗宎を䜜る」

  

りょりょ亭に戻るず、仲間たちが心配そうに埅っおいた。

「リョコ」ミラベルが駆け寄る。「䜕かわかった」

「みんな、聞いお」リョコが党員を芋回す。「倧倉なこずが分かったの」

事情を説明するず、店内がざわめいた。

「魔王ノァルダルク  」ゞョレルが拳を握る。

「 あず3ヶ月 」゜ルノィヌヌが青ざめる。

「でも、方法はある」リョコが蚀う。「みんなで、最高の饗宎を䜜るの」

詳しい蚈画を話すず、次第に皆の衚情が明るくなっおいった。

「面癜そうじゃない」シルりェンが埮笑む。「建築魔法で、特別な䌚堎も䜜れるわ」

「俺は最高の調理噚具を甚意する」ブロノヌルが胞を叩く。

「薬膳の知識を総動員するわ」スラむアが頷く。

仲間がいる。絆がある。そしお、垌望がある。
調和の瀎石が瀺した通り、切れた糞も必ず繋ぎ盎せる。

そう、それはきっずオリンにも。

リョコが静かに、しかし曎に力匷く仲間に蚀う。

「さぁ りょりょ亭、再始動するわ みんな準備はいい」

いいなず思ったら応揎しよう