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異䞖界ダむニング りょりょ亭 第二十䞃話

#第二十䞃話 裏切りず真実


黄金の炎ず深淵の闇が激しくぶ぀かり合う䞭、マロノァンの䜓が異圢ぞず倉貌しおいく。人の圢を保ちながらも、その存圚の根本が歪み、黒い霧が圌の党身から噎き出しおいた。

「さあ、本圓の絶望を——」

マロノァンの蚀葉が途䞭で途切れた。厚房から攟たれる虹色の光が、圌の泚意を匕いたのだ。

「『巡環の饗宎』  」

圌の衚情が䞀倉した。狂気に満ちた笑みが消え、代わりに憎悪ず焊りが浮かび䞊がる。それは、か぀おの矎しい容姿の面圱を残しながらも、狂気に歪んだ顔だった。

「たさか、本圓に完成させたのか」

マロノァンの䜓から噎き出す黒い霧が、生き物のように蠢き始めた。それは圌を䞭心に枊を巻き、巚倧な黒い竜巻ずなっお立ち䞊る。店内の残骞や砎片が巻き䞊げられ、䞍気味な音を立おながら回転する。

黒い霧に包たれたマロノァンが、たるで霧に乗るように宙を滑りながら、凄たじい速床でリョコに向かっお突進した。血色の包䞁が䞍気味な光を攟ちながら、『巡環の饗宎』を狙う。その刃からは、黒い皲劻のようなものが连っおいた。

「リョコ」

サルリンが間に入ろうずしたが、黒い霧に阻たれお近づけない。霧に觊れた瞬間、氞久凍土銀の倧剣さえも腐食し始める。

「なんだこれは 剣が溶ける」

ガリオンも暪から飛び蟌もうずしたが、霧に觊れた瞬間、䜓が痺れお動けなくなった。豹の獣人ずしおの俊敏さも、この呪われた霧の前では無力だった。

「ぐっ  䜓が  動かねぇ」

「この霧は  魂を䟵食する」゚ルデが鋭く譊告する。「盎接觊れれば、存圚そのものが蝕たれる」

リヌリョの黄金の炎も、この濃密な闇の前で抌し返された。炎ず霧がぶ぀かり合う境界線では、激しい爆発が起きおいる。マロノァンの執念が、圌の力を限界以䞊に匕き䞊げおいたのだ。

「終わりだ、リョコ その停りの垌望ごず、消し去っおやる」

「リョコ 今すぐその料理を食べお」

゚ルノィナヌの叫び声が響いた。叀文曞を抱えた圌女の瞳には、確信の光が宿っおいた。額には汗が浮かび、必死さが䌝わっおくる。

「食べる」リョコが困惑する。「でも、これはみんなのために——」

「叀文曞にはこう曞かれおいたす」゚ルノィナヌが震える手で叀文曞のペヌゞを瀺しながら必死に説明する。「『巡環の饗宎』は、たず䜜り手が口にするこずで、その真の力を解攟する 埪環の始たりは、䜜り手から始たる 䜜り手の魂ず料理が䞀䜓ずなり、䞖界に埪環をもたらすのです」

マロノァンの包䞁が、あず数センチでリョコに届こうずしおいた。黒い霧が圌女を包み蟌もうずしおいる。

時間がない。リョコは迷いを振り切り、皿から䞀口分をすくい䞊げた。虹色に茝く料理が、スプヌンの䞊で脈動しおいる。六぀の食材が完璧に調和し、たるで小さな宇宙のようだった。

「信じる  みんなの想いを この料理に蟌められた、党おの願いを」

リョコが料理を口に運んだ瞬間——

䞖界が止たったかのような静寂が蚪れた。

リョコの䜓の䞭で、奇跡が起こり始める。

氷霊果の冷たさが脊髄を駆け䞊り、意識を研ぎ柄たせおいく。それは単なる冷たさではなく、玔粋な冬の蚘憶、生呜が眠りに぀く前の静謐な矎しさだった。

暁星茞の枩かさが心臓を包み、錓動ず共に党身に広がる。倜明けの垌望、新たな始たりの予感が、血管を通じお隅々たで行き枡っおいく。

星枡り魚の蚘憶が脳裏に流れ蟌む。それは星々の間を泳ぐ魚たちの蚘憶、宇宙の始たりから今に至るたでの、果おしない時の流れだった。

竜眠豆の叀代の力が芚醒し、リョコの䜓内で眠っおいた朜圚胜力を呌び芚たす。それは人類が忘れおいた、自然ず䞀䜓ずなる力だった。

幻獣癜乳の生呜力が现胞䞀぀䞀぀を掻性化させ、存圚そのものを高次元ぞず抌し䞊げおいく。

そしお霞咲蜜の神秘が、党おを䞀぀に結び぀けた。魂の奥底たで浞透し、リョコずいう個人を超えた、より倧きな存圚ぞず倉化させおいく。

「あ  ああ  」

リョコの口から、蚀葉にならない声が挏れる。圌女の瞳が虹色に茝き始めた。

そしお——

リョコの党身から、眩い光が溢れ出した。

それは単なる光ではない。䞖界の埪環そのものを䜓珟した、生呜の茝きだった。

「これは  」

光はリョコを䞭心に広がっおいく。それは波王のように、ゆっくりず、しかし確実に店内を満たしおいった。床に描かれた魔法陣が共鳎し、さらに光を増幅させる。

マロノァンの包䞁が光に觊れた瞬間、圌の動きが止たった。

「な、なんだ  この光は  」

マロノァンの声に、恐怖が滲んだ。圌の䜓を包んでいた黒い霧が、光に觊れるず同時に浄化され始める。

埪環の光は、砎壊ではなく調和の力だった。それは闇を消し去るのではなく、闇もたた埪環の䞀郚ずしお受け入れ、浄化しおいく。光ず闇が察立するのではなく、互いに溶け合い、新たな調和を生み出しおいく。

「銬鹿な  僕の力が  完璧な闇が  」

マロノァンを包んでいた黒い霧が、枊を巻きながら薄れおいく。霧の䞭から、苊しみの声が聞こえおくる。それは、霧に取り蟌たれおいた魂たちの声だった。

「ありがずう  」
「やっず  解攟される  」
「光だ  枩かい光だ  」

そしお、店の倖からも声が聞こえ始めた。
黒い霧に操られおいたリョリヌディアの䜏人たちが、埪環の光に包たれお正気を取り戻し始めたのだ。
「あれ  俺は䜕を  」
「ここは  りょりょ亭の前」
「なんで俺、こんなずころに  」

窓の倖を芋るず、虚ろな目をしお圷埚っおいた人々が、次々ず正気を取り戻しおいく様子が芋えた。黒い霧が圌らの䜓から抜けおいき、代わりに生気が戻っおくる。
「お母さん」
「パパ、倧䞈倫」
家族が再䌚し、抱き合う姿があちこちで芋られた。
トルノィンも同様に、黒い霧が完党に抜けきった。
「俺は  䜕をしおいたんだ  」圌は混乱しながら呚囲を芋枡す。

「みんなに  ひどいこずを  」
「トルノィンさん」ミラベルが駆け寄る。「倧䞈倫、あなたのせいじゃない」

絶望のシェフの残骞も、埪環の光に包たれお浄化されおいく。千人分の絶望ず恐怖で䜜られた怪物は、もはやその圢を保おず、光の粒子ずなっお消えおいった。

「ぎゃああああ  」

怪物の断末魔の叫びが響く。しかし、それは苊しみの叫びではなく、解攟の歓喜のようにも聞こえた。囚われおいた千の魂が、䞀斉に光ずなっお倩に昇っおいく。

無数の声が、感謝の蚀葉を残しながら消えおいく。それは砎壊ではなく、解攟だった。囚われおいた魂たちが、ようやく埪環の流れに戻っおいくのだ。

店内に残っおいた䞍死兵たちも、同じように倉化しおいった。
死者たちは安らかな衚情を浮かべながら光の粒子ずなっお倩に昇り、黒い霧に操られおいた生者たちは、次々ず正気を取り戻しおいく。

「うっ  ここは  」
「なんで俺、歊噚なんか持っお  」
「りょりょ亭 なんで襲っおたんだ、俺  」

正気を取り戻した人々は、自分たちが䜕をしおいたのか理解できずに困惑しおいた。しかし、埪環の光が圌らの心も癒しおいく。

ロッサが店の倖に駆け出した。
「みんな、倧䞈倫 怪我はない」
圌女は正気を取り戻した人々に駆け寄り、䞀人䞀人の様子を確認しおいく。い぀も笑顔を振りたく元気な圌女は、倚くの人々ず顔芋知りだった。

「ロッサちゃん  俺たち、䞀䜓䜕を  」
「倧䞈倫よ、もう終わったから」ロッサが優しく答える。「悪い倢を芋おいただけよ」

店内に残っおいた黒い霧も、瘎気も、党おが埪環の光によっお浄化されおいく。壊れた壁や床さえも、少しず぀修埩されおいくように芋えた。

「すごい  これが『巡環の饗宎』の力  」ミラベルが息を呑む。「砎壊ではなく、再生ず調和の力なのね  」

マロノァンは無傷だった。圌は光に包たれながらも、その存圚は消えるこずなく、ただ力を倱っただけだった。元の姿に戻った圌は、か぀おの矎青幎の面圱を残しおいたが、その衚情は醜く歪んでいた。

「く  くそっ」

マロノァンが埌ずさる。床に膝を぀き、震えおいる。か぀おの倩才料理人の面圱が戻った圌の顔には、敗北の屈蟱ず恐怖が刻たれおいた。

「これで終わったず思うなよ」圌は憎々しげに叫ぶ。「ネクリシアの王がいる限り、この䞖界に平和など——」

その時、マロノァンの芖線が、ある人物で止たった。

圌の瞳が、䞀瞬だけ茝いた。䜕かを思い出したかのように。

「  そうだ、忘れるずころだった」

圌の唇に、再び䞍気味な笑みが浮かぶ。たるで最埌の切り札を思い出したかのような、勝ち誇った笑みだった。そしお、予想倖の名前を口にした。

「い぀たでそちら偎にいる぀もりなんだ」

「 オリン」

その瞬間、店内の空気が凍り぀いた。

たるで時間が止たったかのような静寂。誰もが、自分の耳を疑った。

党員の芖線が、䞀斉にオリンに向けられる。小柄なハヌフリングは、い぀もず倉わらない無衚情で立っおいた。しかし、その瞳の奥に、今たで芋たこずのない冷たい光が宿っおいた。

「オリン  」リョコが信じられないずいう声を出す。声が震えおいる。

「䜕を蚀っおいる、マロノァン」サルリンが怒鳎る。「ふざけるな オリンは俺たちの仲間だ 䞀緒に戊っおきた仲間だ」

しかし、マロノァンは愉快そうに笑い続けた。その笑い声が、店内に䞍気味に響く。

「仲間 ふふふ、そうかな じゃあ聞くが、なぜ僕たちがこんなに簡単に結界を砎れたず思う」

圌は芝居がかった仕草で銖を傟げる。

「なぜ、りょりょ亭の防埡魔法があっさりず無効化されたず思う なぜ、店内の構造を完璧に把握しおいたず思う」

シルりェンの顔が青ざめた。建築士ずしお、結界の管理者ずしお、圌女には心圓たりがあった。

「たさか  結界の匱䜓化は  内郚からの  」

「そう、内偎からの工䜜さ」マロノァンが埗意げに語る。「オリンは最初から、僕たちの協力者だったんだよ。いや、正確には  ネクリシアの忠実な䜿者、ずでも蚀うべきかな」

「ワン」

フロリアが激しく吠える。小さな矜を震わせ、怒りに満ちた目でオリンを芋぀める。圌女の小さな䜓党䜓が、裏切りぞの怒りで震えおいた。

必死に吊定するように吠え続ける。その瞳には涙が浮かんでいた。

しかし、オリンは吊定しなかった。

ただ静かに、い぀もの冷静な衚情のたた前に出る。その足取りは、迷いがなかった。

「  そうだ」

その䞀蚀が、決定的だった。

「本圓に  裏切っおいたの」ミラベルが震え声で問う。手に持っおいた調理噚具が、カタカタず音を立おる。

オリンは淡々ず答えた。その声には、い぀もず倉わらない冷静さがあった。

「裏切り 違うな。俺は最初から、お前たちの仲間じゃない」

「なぜ」ゞョレルが拳を震わせる。「䞀緒に戊っおきたじゃないか 䞀緒に笑っお、䞀緒に苊劎しお、䞀緒に——」

「党お挔技だ」オリンが冷たく蚀い攟぀。「お前たちの信頌を埗るための」

その蚀葉の冷たさに、誰もが凍り぀いた。

ブロノヌルが怒りに震えながら立ち䞊がる。傷぀いた䜓を無理やり動かし、戊斧を掎もうずする。

「おめぇ  俺たちを隙しおたっおのか 俺の傷を心配したのも、党郚嘘だったっおのか」

「隙す」オリンの衚情に、初めお感情らしきものが浮かんだ。それは、䟮蔑だった。「お前たちが勝手に信じただけだろう。」

「オリン  どうしお  」リョコが涙を浮かべる。埪環の光を攟った盎埌で、ただ䜓が震えおいる。「私たちは、家族だず思っおいたのに  」

その蚀葉に、オリンの衚情が䞀瞬だけ揺らいだ。瞳の奥で、䜕かが動いたように芋えた。しかし、すぐに元の無衚情に戻る。

「家族  か。くだらない」

しかし、その声は少し震えおいた。

ガリオンが怒りを抑えきれずに叫ぶ。

「おめぇ りょりょ亭の金も暪領しおたんじゃねぇだろうな 垳簿を確認させろ」

「金なんお興味ない」オリンが錻で笑う。「俺の目的は、もっず倧きなものだ」

「目的っお䜕よ」アストリスが涙を流しながら飛び回る。「みんなを裏切っおたで、䜕がしたかったの」

オリンは答えなかった。ただ、懐から䜕かを取り出す。それは、圌がい぀も持っおいた短剣だった。しかし、今、その剣に刻たれた王様が、䞍気味な玫色の光を攟っおいる。

「やっず、隠す必芁がなくなった」

王様から攟たれる光が、オリンの党身を包む。圌の姿が、少しず぀倉化し始めた。邪悪なオヌラを纏いたるで悪魔のようになっおいく。

「やめろ、オリン」シバトが魔法銃を向ける。しかし、その手は震えおいた。「これ以䞊は——」

「撃おるのか」オリンが嘲笑する。「仲間だず思っおいた盞手を」

シバトの手が震えた。匕き金に指をかけたたた、動けない。

その隙に、オリンは剣を振るった。玫色の斬撃が飛び、シバトの魔法銃を匟き飛ばす。銃は回転しながら飛び、壁に突き刺さった。

「匱い。お前たちは、情に流されお匱い」

「オリン  」

スラむアが悲しそうに呟く。圌女は効を倱ったばかりだった。ティナの最期の笑顔が、ただ瞌に焌き付いおいる。そしお今、信じおいた仲間たでも倱おうずしおいる。
涙が止たらない。薬草を握る手が、力なく震えおいる。

゜ルノィヌヌが圌女の肩を抱いた。山矊の獣人の瞳にも、涙が浮かんでいる。

「感傷に浞るな」オリンが吐き捚おる。「俺には、果たすべき䜿呜がある」

「䜿呜だず」サルリンが剣を構える。怒りで党身が震えおいる。「ふざけるな どんな䜿呜があろうず、仲間を裏切っおいい理由にはならねぇ」

オリンの瞳が、䞀瞬だけサルリンを芋぀めた。その目には、耇雑な感情が枊巻いおいるようだった。苊痛、埌悔、そしお——

しかし、次の瞬間には、再び冷たい無衚情に戻る。

「仲間  か。その蚀葉が、どれだけ俺を苊しめたか、お前たちには分からないだろうな」

フロリアが悲しそうに鳎いた。「クヌン  」

小さな䜓を震わせ、涙を流しおいる。圌女にずっおオリンは、倧切な仲間だった。蚀葉は話せなくおも、心は通じ合っおいるず信じおいた。

その時、ずっず黙っお立っおいたリヌリョが、ゆっくりず前に出た。

圌はじっずオリンを芋぀めおいる。その瞳には、怒りも悲しみもなく、ただ深い理解があるように芋えた。たるで、党おを知っおいるかのような——

「リヌリョ様  」ガリオンが心配そうに声をかけるが、リヌリョは䜕も蚀わない。

ただ、オリンを芋぀め続けおいる。

オリンもたた、リヌリョを芋返した。二人の間に、蚀葉にならない䜕かが亀わされおいるようだった。長い沈黙が流れる。

「  ふん」

オリンが先に芖線を逞らした。その衚情には、苛立ちが浮かんでいる。そしお、マロノァンの方を向いた。

「もう十分だろう。行くぞ」

「おや、もう終わりかい」マロノァンが肩をすくめる。「たあいい。目的は果たせなかったが、収穫はあった」

圌は立ち䞊がり、服の埃を払う。そしお店内を芋枡し、最埌にリョコに芖線を向けた。

「『巡環の饗宎』  確かに玠晎らしい料理だ。味わっおみたかったよ。だが、これで終わりじゃない。ネクリシアの闇は、もっず深い。もっず、果おしなく深い」

「埅っお」リョコが叫ぶ。「オリン、最埌に䞀぀だけ教えお あなたは本圓に、最初から私たちを——」

「聞きたいか」オリンが振り返る。その衚情には、苊痛のようなものが浮かんでいた。「なら教えおやる。俺は最初から、お前たちを利甚するためにりょりょ亭に来た。党おは、ネクリシアの蚈画のために」

フロリアが必死に前に出る。「ワン ワンワン」

䞀緒に遊んだこず、オリンが優しく頭を撫でおくれたこず——党おを思い出しながら、必死に吠える。

「  党郚だ。党郚、挔技だった」

フロリアは小さな䜓を震わせ、地面に䌏せっおしたった。

「もういい」オリンが背を向ける。「俺たちの瞁は、ここたでだ」

黒い霧が、マロノァンずオリンを包み始める。それは先ほどずは違う、転移のための霧だった。

「たたね、みんな」マロノァンが手を振る。「次は、もっず面癜い料理を䜜っおあげるよ。絶望の味付けでね。今床こそ、君たちを——」

「オリン」

リョコが最埌の呌びかけをするが、オリンは振り返らなかった。

ただ、消える盎前に、小さく呟いた。

「  すたない」

その蚀葉が本心だったのか、それずも最埌の停りだったのか、あたりにも小さな声で誰にも聞こえるこずはなかった。

しかし、確かにその声は震えおいた。

黒い霧が完党に晎れた時、そこにはもう二人の姿はなかった。

店内に、重い沈黙が降りた。

誰も、蚀葉を発するこずができない。勝利の喜びは、裏切りの衝撃によっお完党に打ち消されおいた。

「オリン  」ティルリンが拳を握りしめる。

「くそっ」ブレむダが床を殎る。「なんで気づけなかった 私たちはずっず䞀緒にいたのに」

「私の結界を内偎から  」シルりェンが呆然ず呟く。「そんなこず、信頌しおいる盞手にしかできない  」

゚ルデが冷静に状況を分析する。しかし、その声も埮かに震えおいた。

「最初から蚈画されおいたずいうこずね。オリンは、私たちの信頌を埗るために、長い時間をかけお挔技を続けおいた。それも、完璧に」

「挔技  」レナヌラが銖を振る。「でも、あの時の笑顔は  あの時の優しさは  」

誰もが、オリンずの思い出を振り返っおいた。

䞀緒に過ごした日々。困難を乗り越えた時。笑い合った倜。確かにそこにあったはずの友情、信頌、絆。それら党おが、停りだったずいうのか。

「みんな  」

リョコが声をかけようずした時、異倉が起きた。

リヌリョの䜓から、黄金の光が急速に倱われおいく。先ほどたで眩しく茝いおいた炎が、蝋燭の火のように小さくなっおいく。

「リヌリョ様」゚リンが駆け寄る。

「倧䞈倫だ  ただ、力を䜿いすぎた」リヌリョが苊笑する。その声は、明らかに疲劎しおいた。「堎の浄化にも、みんなの回埩にも、力を䜿いすぎたようだ」

圌の䜓が、光に包たれお倉化し始める。アホロヌトルの姿が薄れ、茪郭ががやけおいく。そしお、光が収たった時——

そこにいたのは、人間の姿だった。

桃色のカヌルした髪が、柔らかくなびいおいる。瞳には、長い幎月を生きおきた者だけが持぀、深い知恵が宿っおいた。顔には幎霢盞応のしわが刻たれおいるが、それが逆に嚁厳を醞し出しおいる。そしお䜕より、その䜇たいには、生たれながらの品栌が挂っおいた。

「え  」

ミラベルが息を呑む。その顔を、リョリヌディアの䜏人なら誰でも知っおいた。街の広堎に立぀圫像、王宮から時折姿を芋せる人物——

「陛䞋  」

「リョリヌディア囜王陛䞋  」

ブロノヌルが呆然ず呟く。

「たさか、リヌリョの正䜓が  」オヌレンも信じられないずいう衚情だ。

リョリヌディア王囜を治める王。民に愛され、公正な政治で知られる名君。しかし、なぜその人が、アホロヌトル獣人の姿で、りょりょ亭の掃陀倫ずしお働いおいたのか。

「なぜ  なぜ陛䞋が  」リョコが震え声で問う。「どうしお、身分を隠しお  」

囜王は優しく埮笑んだ。ピンクの髪が、倕日の光を受けお淡く茝く。

「説明したいこずは山ほどある」圌の声は、嚁厳がありながらも枩かい。「なぜ俺が、みんなず䞀緒に働いおいたのか。なぜ、正䜓を隠しおいたのか。そしお——」

圌の衚情が曇る。

「オリンのこずも」

「陛䞋はオリンのこずを知っおいたんですか」サルリンが声を䞊げる。

「なら、なぜ止めなかったんですか」ゞョレルが拳を震わせる。

「それは——」

囜王が答えようずした時、リョコが口を開いた。

「今は、それどころじゃありたせん」

圌女は『巡環の饗宎』に芖線を向けた。皿の䞊で、料理はただ虹色の光を攟っおいる。

「この料理を、リョリヌディア党土に届けなければ。黒い霧はただ完党には晎れおいない。私が口にした分だけでは、店の呚蟺しか浄化できおいたせん」

囜王が頷いた。

「その通りだ。埪環を取り戻すには、党おの民がこの恩恵を受ける必芁がある。そしお——」

圌は立ち䞊がった。しかし、その足取りは力の消耗で重い。

「俺には、王ずしおやらなければならないこずがある。王宮に戻り、『巡環の饗宎』を党土に行き枡らせる手配をしなければ」

「でも、陛䞋  」シバトが困惑する。「なぜ身分を隠しお  なぜ、りょりょ亭で  」

「それに぀いおは、いずれ必ず話す」囜王が真剣な衚情になる。「だが、䞀぀だけ蚀えるこずがある」

圌は党員を芋枡した。

「俺は、このりょりょ亭で過ごした日々を、心から倧切に思っおいる。リヌリョずしお、みんなず䞀緒に働き、笑い、時には叱られ  それは、王宮では決しお味わえない、かけがえのない時間だった」

「陛䞋  」

「オリンのこずは  」囜王の衚情が苊枋に満ちる。「俺の責任だ。あい぀には、あい぀なりの事情がある。」

「陛䞋、それは——」゚リンが䜕か蚀いかけたが、囜王が手で制した。

「い぀か必ず、償う。そしお  」

圌は蚀葉を切った。䜕か、ただ蚀えないこずがあるようだった。

「みんな、今たで本圓にありがずう」囜王が深く頭を䞋げた。

囜王が平民に頭を䞋げる。前代未聞の光景に、党員が慌おた。

「や、やめおください陛䞋」ゞョレルが慌おる。

「いや、これは王ずしおではなく、リヌリョずしおの感謝だ」囜王が顔を䞊げる。「りょりょ亭で過ごした時間は、俺にずっおかけがえのないものだった。それは、停りではない」

圌は最埌にもう䞀床、党員を芋枡した。ただ涙を流しおいるフロリアを、優しい県差しで芋぀めた。

「『巡環の饗宎』を頌む。そしお  オリンを恚たないでやっおくれ。あい぀にも苊しみがある。い぀か、真実が明らかになる時が来る」

そう蚀い残しお、囜王は重い足取りで店を出お行った。

扉が閉たる音が、やけに倧きく響いた。

残された者たちは、呆然ず立ち尜くしおいた。

オリンの裏切り、リヌリョの正䜓、そしお残された謎。あたりにも倚くのこずが䞀床に起こり、誰もが混乱しおいた。

「ずにかく  」リョコが震える声で蚀った。「『巡環の饗宎』を、みんなに届けなければ」

ミラベルが頷く。「そうね。たず、それが先決よ」

「でも、どうやっお党土に  」レナヌラが心配そうに呟く。

「それは俺たちで考えるしかねえ」ガリオンが立ち䞊がる。「陛䞋が手配するず蚀っおいたが、俺たちにもできるこずがあるはずだ」

しかし、誰もが心に倧きな傷を負っおいた。

フロリアはただ地面に䌏せたたた、小さく鳎いおいる。゚マも元気がなく、床に降りお座り蟌んでいた。

䞖界は埪環を取り戻し぀぀ある。『巡環の饗宎』の力で、リョリヌディアは救われるだろう。

しかし、新たな謎ず、深い傷跡を残しお。

りょりょ亭に再び静寂が戻った。しかしそれは、嵐の前の静けさのようでもあった。

オリンは今、どこで䜕をしおいるのか。
囜王は、なぜ正䜓を隠しおいたのか。
そしお、ネクリシアの王ずは——

倚くの謎を残したたた、倜は曎けおいく。

ただ䞀぀確かなこずは、『巡環の饗宎』が完成し、䞖界を救う第䞀歩を螏み出したずいうこず。

いいなず思ったら応揎しよう