「しょうがないな〜」と言いながら、長男は苦手な場所に付き合ってくれた。
今年の夏、わが家は低空飛行でした。
とは言え地面スレスレを飛んでいる気分だったのは私だけで、家で気ままにゲームとYouTube三昧の子どもたちには、安心安全な夏休みだったのかもしれませんが。
夏休みの初めの頃、夫が水族館に行こうかと提案してきました。
次男が行きたがっていたからです。
日帰りで行ける場所なのですが、観光して往復するとなると最低でも5、6時間はかかります。
懸念は長男。
ASD特性ありの長男は、興味の幅が狭いのです。
好きなものに対しては寝食を忘れてのめり込む勢いですが、そうでないものは基本的に拒否。
いわゆる「お付き合い」にはなかなか応じません。
特にこの1年はさらに頑なな時があり、前もって約束をしていても、別の報酬を用意しても、
「行きたくない」
「つまらない」
とヘソを曲げるのが常でした。
長男に無理をさせたいわけではない、
でも年下の次男がいつも我慢するのも違う。
そしてこの時も、そこまで拒みはしないでしょ、と軽い気持ちで切り出した夫は
「行かない」
と話すら聞こうとしない長男に驚き、ショックを受けたようでした。
ね。
だから、私が1人で2人を遠方に連れていくことはできなかったんだよ。
それを正しく夫にも理解してもらえた瞬間でもありましたが。
家庭により、いろんな選択はあると思います。
でも私たちは、この暑い休日に、長男を何時間も留守番させるのは避けたかったのです。
結局は次男が別の場所に行きたい!と、無意識なのか?機転を利かせてくれて、近場に夫婦と次男だけでちょっと外出、長男にはおみやげを買って終わりになりました。
そして夏休み、終盤。
水族館、やっぱり行けないかな。
私と夫の心のしこりはまだ残っています。
「水族館、行かない?」
夫が長男に聞きました。
前回ほどではないけれど「うーん」と芳しくない返事。
ふと。
私は思い立って地図を見ました。
たしかここは……
うん、そうだ。
そっけなく切り出します。
「行くのは車だけど最寄駅は◯◯駅で車で10分くらい、⬜︎⬜︎線が通ってるんだよね。見れるよ?」
鉄オタの長男に、ダメ元で提案する私。
すると。
「えーーー、
うーーーん、
しょうがないなぁ、じゃあ行ってもいいけど。」
えっ!?
いいの!?
言った私がびっくり!
鉄オタ強いな!?
次男はマンガみたいに飛び跳ねて大喜び。
行こうと思えば夫か私と2人では行けたのですが、次男は「みんなで」行きたかったのです。
でもね、でも。
ここで安心するほど長男を甘くみてないんですよ、
私は。
「ありがとう。次男も喜んでるよ。でも、がんばれそう?」
静かに聞いてみました。
「うーん、なんとか。駅に行けるんでしょ?それを楽しみに行くよ。」
行き帰りの車ではSwitchもYouTubeも無制限解禁。
そしていざ観光。
すべての水槽の魚や生き物に目を輝かせ、私も確認できない生物名を叫びながら駆け寄る次男。
そう、次男はライトな鉄オタでありつつも海の生物マニアでもあるのです。
YouTubeで仕入れた謎に偏った知識を、新しい魚を見つけるたびに得意気に披露してくれます。
大きな水槽前でキャッキャとはしゃぐ兄弟。
なんだかんだ、長男もまるで無関心ではなく、次男のフォローをしながら楽しんでくれている様子。

それでも人の多さ、
音、
慣れない場所(実は長男が来るのは3回目ですが砂場でトミカで遊んだりして魚にほぼ興味を示さず・笑)
に疲れた顔の長男は夫と一緒に早めに回って、ひと足先にイルカのショーのプール前で休憩してもらうことに。
私は次男に付き合い全部の水槽を回り、ショーで合流。
その後も次男と私は順路を、長男と夫はマイペースに休みながら進み、レストランで合流。
ぼんやりしている長男に聞くと、
「疲れた…」
と。
怒りもせず、
八つ当たりもせず、
きちんと「疲れた」を言えたのでした。
場にそぐわないと言えばそうなのですが、私はとにかくもう、感激!
「疲れたって言えたね。すごいよ。ヘッドホン使う?パパと静かなところで休んでていいよ。」
頭を撫でながら褒めまくってしまいました。
だってすごい!
この子が静かに「疲れた」と言えるなんて!
「ヘッドホンはいいや。パパと休んでる。」
そう言って見たかったシュモクザメの水槽だけを回って、静かなルートへ。
そして私は次男と
「サメ!」
「蛇も見たい!カエル!(なぜいる)」
「コイ!大きいコイ!!」
「アリゲーターガー!!」
爆速であちこち見て回りました。
いや、これはこれで私が疲れるよ!
しかし人の親になって10年あまり。
水族館に大喜びする子どもを初めて体験したな?
と気づきました。
えーん、ありがとう次男!
付き合ってくれた長男も!
水族館でだいぶ疲れましたが大好きな電車は別腹の長男。
「何本見ていい?車両を撮りたい。あと発車の時に車両の中から流れるメロディを録りたい。」
と、これもまたいつもとは違う、利用客の少し多い駅でルールを守って撮り鉄するのに大はしゃぎ。
長男も本来の目的を達成できて満足な様子。
家族にイライラをぶつけることなく帰路につけました。
改めて
「ありがとう。次男、喜んでたよ。疲れたのによく頑張れたね。」
と声をかけると。
「いや、オレは⬜︎⬜︎線撮るために行ったから。連れてってくれてありがとう。」
手元で撮った映像を編集しながら淡々と言う長男。
ゆ、揺るがな〜〜い!笑
もちろんこれが別の時も通用するか、いつまでも同じパターンで済むかと言ったらそんなことはないと思います。
子供たちも成長するしその時々の関係性もある。
だけど特性があってもなくても、他者と一緒に過ごしたり、苦手なことをこなすには誰しもストレスを感じるもの。
その時に「避ける」「やらない」も、もちろん選択肢のひとつだと思うけれど、
「自分の好きなことで気持ちを切り替えて付き合う」
も、十分使えることだなと感じました。
私自身もそうでしたもんね。
これが終わったらご褒美スイーツ買おう、美味しい料理とお酒で乾杯しよう、研修終わったら遊んでから帰ろう、すごく大変なことを乗り越えたら旅行したいな。
とか。
長男の場合は今のところ鉄道が好きで、鉄道は日本全国にたくさんあるので大変助かる!と捉えてみると、私のモヤモヤも少し晴れてくるかな?
その人にとって何が「鉄道」になるのかはわからないけれど、
好きなもの、
得意なこと、
安心できる場所、
見通しが立つやり方。
何がお守りになるか、そして、どうやって自分の機嫌を取っていけばいいか。
子どもの頃から少しずつ身に付けたいってほしいなと感じられた、わが家の夏休みでした。
しかし本当に……
鉄オタは、強いね!
