92 自転車の練習
誕生日に自転車を買ってもらってから、息子は毎日のように乗っていた。
公園へ行く時も、近くへ買い物に行く時も、いつも自転車だった。
最初は補助輪付きで楽しそうに乗っていたけれど、だんだん周りの子たちを気にするようになったのか、「補助輪外したい」と言い出した。
ついに補助輪なしの練習が始まった。
でも、これがなかなか大変だった。
「後ろ持っててね」
「離さないでね」
そう何度も確認されながら、私は後ろを支えて一緒に走る。
地味に腰にくるし、思っていた以上に体力も使う。
でも、後ろを持っていたら、いつまでも一人では乗れるようにならない。
そう思って、タイミングを見てこっそり手を離した。
すると数秒は進めるものの、すぐにバランスを崩して転ぶ。
そのたびに、
「なんで離すの!」
と怒られていた。
それでも、また立ち上がって練習する。
転んで、怒って、また挑戦して。
そんなことを何度も繰り返していた。
少しずつ、ほんの少しずつだけれど、進める距離が伸びていった。
最初は数秒だったのが、気づけば公園の端まで進めるようになっていた。
本人は必死だったと思う。
できない悔しさもあったし、怖さもあったはずだ。
それでも、「乗れるようになりたい」という気持ちの方が強かったんだと思う。
そしてある日、後ろを持たなくても、そのまま一人で走っていった。
嬉しそうな顔で振り返る息子を見ながら、「乗れたね」と言うと、息子も少し得意そうに笑っていた。
できなかったことが、少しずつできるようになっていく。
その姿を見ながら、こうやって色々なことを乗り越えていくのかもしれないと思った。
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