お金があれば、選べたかもしれない――「お金の価値」について考える
「お金より大切なものがある」
この言葉を否定したいわけではありません。
家族との時間や、人とのつながり、健康、好きなことに没頭する時間。
お金だけでは手に入らないものは、確かにあります。
けれど、ときどき思うのです。
お金がなければ、そもそも選ぶことのできないものもある。
この現実については、もう少し正面から考えてもいいのではないでしょうか。
人生の節目には、お金が必要になる
例えば、子どもの教育です。
中学受験を考える家庭なら、塾代や教材費、模試代、受験料など、さまざまなお金が必要になります。
もちろん、お金をかければ必ず希望する学校へ進めるわけではありません。
高額な塾に通わなければ合格できない、と一概に言うこともできないでしょう。
それでも、十分な教育費を用意できる家庭と、そうではない家庭とでは、利用できる教育環境や情報の選択肢に差が生まれることはあると思います。
知識そのものだけではありません。
どんな学校があるのか。
どんな勉強方法があるのか。
どんな選択肢が自分に合っているのか。
そうした「情報」へアクセスするためにも、ときにお金が必要になる。
私はそこに、お金の持つ大きな力を感じます。
「本を買えない」という小さな悔しさ
もっと身近なところにもあります。
私自身、本を読むことが好きです。
書店やインターネットで面白そうな本を見つけると、
「これも読みたい」
「あれも勉強したい」
と思います。
しかし当然、欲しい本を何十冊でも好きなだけ買えるわけではありません。
生活があります。
使えるお金には限りがあります。
私はコンビニで働いていますが、給料の中から生活費を出し、そのうえで本を買おうとすると、どうしても限界があります。
そんなとき、少し悔しい。
本くらい我慢すればいい、と言われればその通りなのかもしれません。
けれど、これは本だけの話ではないと思うのです。
楽器が好きな人もいる。
旅行が好きな人もいる。
映画が好きな人もいる。
何かを学びたい人もいる。
その人にとって大切なものがあっても、
「お金がないから諦める」
という場面は、生活の中にいくつもあります。
それは生きていくうえで致命的な問題ではないかもしれない。
それでも、自分が望む人生の一部分を諦めることには変わりありません。
ときには、もっと重い選択にもお金が関わる
そして、お金の問題を突き詰めて考えると、私は少し怖くなります。
医療です。
日本には公的医療保険制度があり、高額療養費制度をはじめ、医療費の負担を抑える仕組みもあります。
だから単純に、
「お金持ちだけが高度な治療を受けられる」
という話にしてしまうのは正確ではありません。
それでも、すべての治療や、それに伴う費用が完全に同じ条件になるわけではない。
保険適用外の治療を検討することもあるでしょう。
遠方の医療機関へ通うための交通費や宿泊費が必要になる場合もあります。
海外での移植など、非常に大きな費用を必要とするケースもあります。
そういう話を耳にすると、
「命にかかわる選択肢にさえ、お金が関係することがある」
という現実に、私は痛みを感じます。
「命はお金では買えない」
もちろん、その通りです。
どれだけお金を持っていても、病気を必ず治せるわけではありません。
寿命を自由に決めることもできません。
だから私は、「命をお金で買える」とまで言い切りたくはありません。
ただ、
お金によって、選べる治療の範囲が変わることはある。
そう考えると、お金というものを単なる贅沢のための道具として片づけることもできないのです。
私がお金を欲しい理由
私は以前、お金について考えるとき、
「たくさん稼ぎたい」
という言葉に、どこか後ろめたさを感じることがありました。
お金ばかり追いかけるのは浅ましいのではないか。
今ある生活で満足することも大切なのではないか。
確かに、それも一つの考え方だと思います。
でも最近は、お金について少し違った見方をしています。
私がお金を欲しいと思うのは、必ずしも豪華な生活をしたいからではありません。
選択肢を失いたくないからです。
読みたい本があったときに買える。
学びたいことがあったときに学べる。
何かに挑戦したいと思ったとき、その費用を理由に最初から諦めなくて済む。
そして、もし自分や大切な人に何かあったとき、
「お金がないから、この選択肢は最初から考えられない」
という場面を、できるだけ減らしたい。
お金そのものが目的なのではなく
お金があれば幸せになれる。
私は、そこまで単純には考えていません。
お金があっても苦しむ人はいるでしょうし、お金では解決できない問題もたくさんあります。
けれど、
「お金なんて大したものではない」
とも、私はなかなか言えません。
お金は、ときに教育への入口になる。
本を一冊買う自由になる。
好きなことを続ける余裕になる。
そして、ときには治療の選択肢にも関わってくる。
だから私にとってお金とは、幸福そのものというより、
「人生の選択肢を残しておくためのもの」
なのだと思います。
お金ですべてを買うことはできない。
それでも、お金がないことで閉じてしまう扉は確かにある。
だからこそ私は、
「お金より大切なものがある」
という言葉と同じくらい、
「お金が守ってくれる選択肢もある」
という現実も、忘れずにいたいと思っています。
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