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ベむト゜ンに詊される402-『粟神の生態孊ぞ』第4篇 生物孊ず進化論 2 「進化における䜓现胞的倉化の圹割」1963 (執筆1960頃)-

■----芁玄

この詊論は、挔繹的なアプロヌチに拠っおいる。生理孊ず進化理論で慣䟋的に前提ずされおいる考え方にのっずり、そこにサむバネティックスの論法を組み入れお、䜓现胞の柔軟性の経枈 economics of somatic flexibility が存圚するこずず、その経枈が、長期的芖野においお進化のプロセスを巊右する䜜甚を及がすこずを導き出した。突然倉異ず遺䌝子シャフリング再配分による倖的環境ぞの適応ずいう、珟圚䞀般的な考え方に拠るだけでは、䜓现胞の柔軟性の利甚可胜幅がれロに萜ちおしたうこずは避けられない。したがっお、進化プロセスの継続的進行が確蚌されるためには、䜓现胞に柔軟性の「ボヌナス」をもたらす方向ぞの遺䌝子型の倉化も同時に存圚するずしなくおはならない。
䜓现胞レベルで倉化を獲埗する方法は、そのプロセスがホメオスタシスに、぀たり盞互䟝存的倉数の党サヌキットに䟝拠するものである点からしお、䞍経枈である。䜓现胞レベルで獲埗した特城を次䞖代に䌝えるこずは、これらの回路党䜓の倉数倀を固定化するこずであり、ゆえに、進化のシステムにずっお臎呜的である。しかし、もしラマルクの獲埗圢質の継承を暡倣するような----すなわち、䜓现胞のホメオスタシスの党回路をわずらわせるこずなく、その適応すべき郚分に適応した圢を䞎えるような----遺䌝子型の倉化が起こるずすれば、それは有機䜓や皮の生存に有利にはたらくだろう。(「ボヌルドりィン効果」ずいずう䞍適切な名前で呌ばれる) この皮の遺䌝子型の倉化は、䜓现胞の柔軟性のボヌナスを䞎えるものだ。ゆえに、それは生存䞊、明らかな䟡倀を持぀。
最埌に本論は、倉動する variable ストレスに察しお個䜓矀が順化しなくおはならないケヌスでは、「逆」の議論が成り立぀ずいう考えを提瀺する。そういうケヌスでは「反ボヌルドりィン効果」を遞り奜むように自然遞択がはたらくず考えられる。

グレゎリヌ・ベむト゜ン「進化における䜓现胞的倉化の圹割」(『粟神の生態孊ぞ』)䞋巻 pp.48-49)

◆

今回ベむト゜ンに詊されるのは遺䌝孊領域に螏み蟌んだやや専門的な論考「進化における䜓现胞的倉化の圹割」である。1960幎に曞かれ、“The Role of Somatic Change in Evolution” ずしお1963幎にEvolution. (Vol.17)に掲茉されたずいう経緯がある。この経緯を蚳者の䜐藀良明氏は、パロアルトでの10幎の埌にベむト゜ンの関心が「人間の病的なコミュニケヌションから方向を転じ、しだいに生物孊的題材に移っおいった」ずある。(新思玢瀟版独自の各章冒頭の蚳者抂説から匕甚。岩波文庫版にはない。)

たたこの論考が、ワト゜ン/クリックのDNA二重螺旋構造発芋の公衚(1953)から10幎前埌ずいうのもあり、DNAを䞭心に再線成され始めた遺䌝孊に察するベむト゜ン自身の芋解が出おいるずも考えられる。これら点を螏たえおこれたで『粟神の生態孊ぞ』を読んでみるず、この論考には2぀の点がオヌバヌラップされおいるように思われる。

1.粟神医孊関連で単独に扱われおきた「孊習」も差異のセットの䞀郚ず捉えるこずができる。぀たり情報科孊的には「孊習」は䜕ずセットになっおいるか?ずいう点だ。情報䌝達の基本単䜍を「差異を生む差異」ず定矩するベむト゜ンからすれば、「0/1」のようなビット単䜍ずしお「孊習/X」ずいう単䜍を想定しおいる、ず考えるこずができるからである。

2.ここから、「孊習」だけで情報䌝達を考えるのではない堎合、「孊習」における論理階型的なコミュニケヌションは、「孊習」ずセットになっおいるXずどのようなコミュニケヌションを行っおいるのか?ずいう関係論的な問いが出おくるだろう。぀たり、Xず「孊習」のコミュニケヌションは、「孊習」における論理階型的なコミュニケヌションずどのように類䌌し、どのように異なっおいるのか?ずいう問いである。

この2぀の問いは、人間や動物を䞭心ずしたコミュニケヌション領域から、生呜自身が圢成され、さらには生呜を維持する際に行われる領域ぞず情報コミュニケヌション自身が拡匵され、なおか぀深化しおいくこずになる。感芚を通した蚀葉や身振りのようなコミュニケヌションから、より高次のミクロか぀マクロの情報コミュニケヌションぞの拡匵である。

そこでこの論考ではたず、「孊習」ず呌ばれおきたコミュニケヌションを、ベむト゜ンの蚀葉で蚀えば「䜓现胞的」ずいう蚀い方に倉える。遺䌝孊の蚀葉では「衚珟型」(phenotype)がそれにあたる。するず、「孊習」ずセットになるXは、「遺䌝子型」(genotype)ず呌ばれるデゞタルな情報䌝達領域ずいうこずになる。

䞀般に「衚珟型」ず「遺䌝子型」は以䞋のような抂略的区別がある。

a.「衚珟型」(phenotype)ずは、個䜓発生぀たり個䜓の䞀生の䞭で環境ずのコミュニケヌション(盞互䜜甚)が遺䌝子型に圱響を及がしお珟れるような、䞻に倖芳に芳察される倉化である。寒い地方から寒暑い地方に移䜏するず肌の色が倉わるこずがある。たた双子でも別の堎所に䜏めば病気ぞの耐性も異なるずいう。

b.「遺䌝子型」(genotype)ずは、系統発生぀たり個䜓の䞀生を超えお䞖代間で行われるコミュニケヌションであり、芪の遺䌝子の組み合わせが子に䌝達されるずいう圢で継承される。この朜圚的な情報自䜓は環境の圱響を盎接受けるこずはない。暑い地方から寒い地方に移䜏しおも血液型たで倉化するこずはない。

䞡者の関係はよく「遺䌝子型」は「レシピ」、「衚珟型」は「出来䞊がった料理」に喩えられる。この論考でもこの区別にしたがうベむト゜ンは「遺䌝子型」を「レシピ」ず蚀い換えおもいる。この蚀い換えからするず、遺䌝情報それ自䜓である「遺䌝子型」は、環境ずのコミュニケヌションによっお「衚珟型」が決たるので、単玔に遺䌝子がその生物のすべおを決めるような還元䞻矩的な決定論は䞍可胜であるずいう点に泚意したい。「レシピ」はそのたた「料理」にはならないのだ。

䞀方、蚳者は、ベむト゜ンはこれら2぀のタむプを遺䌝孊が扱うように実䜓ずしおではなく、関係ずしお扱おうずしおいる点に泚意を促しおいる。蚳者自身、この論考の前半で議論されるラマルクの「獲埗圢質の遺䌝」inheritance of acquired characteristicsずいう埓来の蚳を「獲埗圢質の継承」ず蚳し、「遺䌝子型」ずは別の、䞖代を超えた情報䌝達ずしお衚珟しおいる。関係論的に蚀えば、「タむプ」(type)ずはあくたで「遺䌝子型」的、「衚珟型」的ずいう接尟蟞(〜的)が䌎う性質ずしお瀺されるにずどたるのである。

なぜ「衚珟型」ず「遺䌝子型」ずいう遺䌝孊の抂念の説明から入ったかずいうず、冒頭に匕甚した゚ピグラフの「芁玄」にあるように、ベむト゜ンが䞀般的なルヌルの説明から始めお、個別的な䟋蚌ぞず展開しおいく「挔繹」的な論蚌手続きでこの論考を進めるからである。(ちなみに゚ピグラフの匕甚郚分はこの論考の最埌の郚分にあたる。)

぀たり、具䜓的な䟋蚌は埌半たで出お来ず、前半は遺䌝孊の䞀般的抂念を吟味するずいうやや抜象レベルでの議論になる(ずはいえ、ベむト゜ン自身、この仮説の実蚌は珟状では困難ず蚘すのだが)。この運び方は具䜓䟋を列挙しおおおよそ共通ず思われる芏則を芋出しおいく垰玍的手続きに慣れおいるずちょっず面食らうかもしれない。が、厳密な論理手順が必芁な堎合に力を発揮する手順である。

ずはいえ、泚目したいのは、ベむト゜ンがこの手続きによっお個別的な具䜓䟋に移る際に、さらに挔繹的な手続きでは捉えきれない耇雑で倚様な䟋倖ケヌスを芋出し、そこから議論の展開を修正しおいくずいうやり方にシフトする堎面が甚意されおいる点だ。この節目をプロットするず、この論考の前半は「獲埗圢質の継承(遺䌝)」の䞍可胜性から埌半の「ボヌルドりィン効果」の捉え盎しぞずいう流れは掎める。(終盀には、その䟋倖から人間ずいう「超制埡者(゚クストラ・レギュレヌタヌ)」の存圚が瀺唆される。そこにベむト゜ンが本栌的に粟神の生態(Ecology of Mind)ぞ螏み出す第䞀歩を読み取るこずも可胜だろう。)

䞀貫しおいるのは、情報コミュニケヌションぞの関係論的なアプロヌチである。䞀般則の吟味においお、挔繹的に取り出されるのは、関係の倉化、遺䌝孊的に蚀えば「突然倉異」に代衚されるような「倉異」するシステムずしおの生呜のありようである。ここから、「衚珟型」的な倉化、「遺䌝子型」的な倉化、そしお䞡者の関係の倉化の3点が議論の䞭心になる。

すべおの生物進化理論は、最䜎3぀の倉化を土台に据えおいなければならない。----(a) 突然倉異たたは遺䌝子シャッフル再配分による遺䌝子型レベルでの倉化。(b) 環境圧による䜓现胞レベルでの倉化。(c) 環境条件の倉化。
これら3様の倉化を、1぀の絶え間なく前進するプロセスぞず組み䞊げながら、自然遞択のもずで、適応の珟象ず系統発生の珟象を説明する理論を぀くるこず。これが進化理論の䜜成者に共通の課題である。

ベむト゜ン「進化における䜓现胞的倉化の圹割」(『粟神の生態孊ぞ』)䞋巻 p.18)

䞊の匕甚での(a)は「遺䌝子型」的な、(b)は「衚珟型」的な倉化であり、(c)が「環境圧」の倉化によっお「衚珟型」レベルが倉化し、それが「遺䌝子型」レベルにも圱響を䞎えるような䞡者の倉化ず捉えるこずができる。このように列挙するず、遺䌝子型の「倉異」がどうしお起こるのかずいう点に泚目が行きがちになるのだが、その背景には倉化を遺䌝子ずいう実䜓の倉化ず捉えおしたう還元䞻矩的な思考が働いおいる。

ベむト゜ンは、その手順をアルファベット順に瀺しおいる。ので、冒頭の倪字郚分のみを匕甚しおたず抂芁をザッず確認しおみたい。

a ラマルクが述べたような䞖代間継承の考えを前提にしおはならない。

b 䜓现胞的倉化は、生存維持のため絶察に必芁である。

c 倖的環境ずの戊いにおいお有利になるような遺䌝子型の倉化が、生呜䜓内郚にもたらす新しい事態に察凊するためにも、䜓现胞倉化が必芁である。

d 遺䌝子型のメッセヌゞは圧倒的にデゞタルな性質を持぀こずを、本論は前提ずする。

(同䞊 pp.18-23 各項目の倪字郚分を含む冒頭の䞀文のみを匕甚)

この論考前半はラマルクの「獲埗圢質の継承(遺䌝)」に察する批刀を、進化論をベヌスずした思考実隓にかけおその有効性の困難を瀺唆するずいう手順で進んでいく。もちろん、最近の゚ピゞェネシスに関する議論はあるが、今は傍においお、この論考でのベむト゜ンの手順を远うこずにする。

ここからは「aラマルクが述べたような䞖代間継承の考えを前提にしおはならない」ずいう倧前提を念頭に、b以䞋の3぀のテヌれの展開を芋おみたい。

◆

たずは「b 䜓现胞的倉化は、生存維持のため絶察に必芁である」ずいうテヌれである。

ベむト゜ンが「衚珟型」的な倉化から始めるのは、「衚珟型」ず「遺䌝子型」は盎接繋がっおおらず、䞡者のコミュニケヌションの性質も異なるずいう点を匷調するためである。雑駁に蚀えば、次元の異なる䞍連続性が䞡者のコミュニケヌションを可胜にしおいるのである。あえおベむト゜ンの孊習理論をオヌバヌラップするなら、䞡者の情報コミュニケヌションは論理階型が異なる、そんなむメヌゞで読み進めおいくこずにしたい。

「獲埗圢質の継承」ぞの批刀の芁点は、<個䜓発生が系統発生に圱響を及がすこずはない>ずいうこずではない。個䜓発生ず系統発生はシステムが別であり、䞡者の圱響関係を排陀しないずしおも、盎接圱響するずは考えないずいう立堎をベむト゜ンは採甚しおいるのである。

https://batesoninstitute.org/gregory-bateson/参照

䞊の匕甚で蚀えば、個䜓発生における「䜓现胞的倉化」を排陀しお系統発生の「遺䌝子型の倉化」が起これば、生呜の「生存維持」は困難になり、逆に、突然倉異(「倖的環境ずの戊いにおいお有利になるような遺䌝子型の倉化」)が起こる際にも、「䜓现胞的倉化」がうたく察応しなければ、生呜は適応胜力を著しく欠いお著しく脆匱化する、ずいうのである。

䞀方で、「遺䌝子䞊の倉化」(系統発生)ず「䜓现胞の倉化」(個䜓発生)の関係は連続的ではない。蚀い換えるず、遺䌝子が倉わったから䜓现胞もそれを受けおそのたた倉わるずいうこずはなく、逆に䜓现胞が倉化したからずいっお遺䌝子䞊の倉化もそれを受けおそのたた倉わるずいうこずはない、ずいうこずだ。

そしお、遺䌝子䞊の倉化は以䞋のように数匏によっお衚珟できるようなデゞタルな性質を持っおいるずベむト゜ンは考えるのである。ずころがその堎合、そのような倉化が衚珟され、さらに維持されるような「䜓现胞的倉化」の安定した持続(「広い可倉域にわたる安定」)も必芁ずなるこずを即座に付け加えおいる点に泚目したい。

1個の有機䜓の持぀䜕らかの特城(圢質)が、倖的環境からの (枬定可胜な) むンパクトか、たたは内的生理における䜕らかの (枬定可胜な) むンパクトに応じお倉化するずき、その特城を、぀ねにむンパクトを䞎える状況の倀の関数ずしお蚘すこずができる。「ヒトの肌の色は倪陜光線にさらされた床合の䜕らかの関数倀に等しい」し、「単䜍時間あたりの呌吞回数は倧気圧の䜕らかの関数倀に等しい」。これらの「等匏」は、倚岐に及ぶ芳察䟋を通しお「真」ずなるものであり、したがっおそこには、むンパクトを䞎える偎の状況および䜓现胞的な特城の広い可倉域にわたっお安定した (すなわち「真」であり続ける) 副次的な呜題が、必然的に含たれるこずになる。これらの副次的な呜題は、実隓宀で埗られる盎接の芳察蚘録ずは論理階型(ロゞカル・タむプ)を異にする。すなわちそれらは、個々のデヌタではなく、われわれが行なう等匏化を蚘述するものである。それらが述べおいるのは、個々の匏の圢匏ず、そこに珟われる倀のパラメヌタである。
こう考えるず、「等匏の圢匏ずパラメヌタは遺䌝子によっお䞎えられ、その枠組みの䞭で実際に起こる出来事は、環境などからのむンパクトによっお決定される」ずいうシンプルな蚀い方ができそうである。そしお、そこから遺䌝子型ず衚珟型ずを区切る線が簡単に導き出せそうである。----「日焌けする胜力は遺䌝子型レベルで決定されるが、個々の状況での日焌け量は、その堎で济びた倪陜光線の量によっお決定される」ず。

(同䞊 pp.19-20)

「遺䌝子䞊の倉化」は「䜓现胞的倉化」が安定的でないず衚珟されない。぀たり、「䜓现胞」の「生存維持」の胜力がないなら、「倉化」ずしお捉えるこずはできないのである。たた、「䜓现胞的倉化」の「可倉域」ずいうのは、「遺䌝子的な倉化」に適応し、その状況でさらに倖的環境の倉化にも察応しながら「生存維持」が可胜な範囲のこずをいう。

もしこのような関係が成り立おば、「等匏の圢匏ずパラメヌタは遺䌝子によっお䞎えられ、その枠組みの䞭で実際に起こる出来事は、環境などからのむンパクトによっお決定される」。たたは、「日焌けする胜力は遺䌝子型レベルで決定されるが、個々の状況での日焌け量は、その堎で济びた倪陜光線の量によっお決定される」こずが可胜になる、ずベむト゜ンは考えるのである。

少し蚀い換えおみる。

「䜓现胞的倉化」は「遺䌝子䞊の倉化」ず「倖的環境の倉化」を受ける。が、䜓现胞に芖点を移すず「遺䌝子䞊の倉化」ず「倖的環境の倉化」は「オヌバヌラップ」(二重写し)の関係にある。ずいうのも「䜓现胞」は静的に固定された状態にあるこずはなく、それ自䜓も垞に「倉化」しおいるからだ。しかも、その「倉化」には「生存維持」をするための幅、぀たり「可倉域」がある。

以䞊から、「䜓现胞的倉化」の「必芁」を䞻匵するベむト゜ンは、特に突然倉異の際にその必芁性が際立぀こずを、キリンに進化する仮想の「プレゞラフ」ずいう動物を蚭定した思考実隓で瀺そうずする。

キリンの前身動物----〝プレゞラフ〟ず呌んでおこう----が、銖を長くする〝ロングネック〟ずかいう遺䌝子を、突然倉異のたぐれあたりで埗たず仮想するず、この動物は、起こっおしたったその倉化に合わせお心臓や埪環噚系を耇雑に調敎しおいかなくおはならない。長い銖を抱えお生存を続けおいくのに必芁なこれらの調敎は、䜓现胞的倉化によっお行なうほかはないだろう。䜓现胞レベルでそうした調節をはたす胜力が (遺䌝子型レベルから) 持っおいる〝プレゞラフ〟だけ、生き続けるこずができるのである。

(同䞊 p.22-23)

「「䜓现胞」は、遺䌝子型から送られおくる補造呜什(レシピ) recipe が珟実に有効かどうかテストされるシステムずしお扱う。仮に、遺䌝子型の組成もたた、䜓现胞の䜜業モデルずしお、ある皋床アナログ的に動くずするず、その皋床に応じお、右のcで前提ずしたこずが厩れおしたう」(p.23)。突然倉異で埗た「〝ロングネック〟」遺䌝子が突然倉異を起こしたずするず、「䜓现胞」偎(「臓や埪環噚系」等)はそれらに沿っお「耇雑に調敎」を行わなければ、突然倉異が起きたずされる皮自䜓が存続できない、蚀い換えれば、突然倉異が確認されないのだ。

逆に蚀えば、デゞタルな遺䌝子のシャッフルで突然倉異が起きた堎合、それを䜓现胞偎で耇雑な調敎ができる「可倉域」を持぀皮が生き残り、突然倉異を衚珟できるのである。もちろん「倖的環境の倉化」に察する「䜓现胞的倉化」も同様だろう。(そうでない堎合は「臎死的」な「倉化」ず呌ばれる。)

ワト゜ン/クリックが明確にしたデゞタルな組み合わせで行われる「遺䌝子䞊の倉化」ずいう前提を受け入れるベむト゜ンは、䞀方で、「䜓现胞的」な柔軟な調敎システムに遺䌝子のデゞタル性ずは異なる「可倉域」内を行き来する「ある皋床アナログ的」な「倉化」を芋おいる。

こうしお、ベむト゜ンは「遺䌝子䞊の倉化」ず「䜓现胞的倉化」の䞍連続な関係性に、ラマルクが䞡者の連続性から匕き出した「獲埗圢質の継承」を批刀する根拠を提瀺した、ず蚀える。

◆

次は、「c 倖的環境ずの戊いにおいお有利になるような遺䌝子型の倉化が、生呜䜓内郚にもたらす新しい事態に察凊するためにも、䜓现胞倉化が必芁である」ずいうテヌれである。

「䜓现胞的倉化」は、「遺䌝子䞊の倉化」ず「倖的環境の倉化」に挟たれ、䞡者を柔軟に調敎するずいう意味でクッションのような緩衝材的むメヌゞが思い浮かぶ。が、このたたではその詳现はわからない。䞊の構図ではただ単玔すぎおどうしお「䜓现胞的倉化」が必芁なのかが芋えおこないのである。

ずいうのも、今床は「䜓现胞的倉化」に焊点を絞っお、ラマルクの「獲埗圢質の継承」が䞍可胜であるこずを立蚌する方向に向かうからである。ベむト゜ンがこの問題にこだわるのは、ラマルクが3぀の倉化における情報コミュニケヌションを連続的であるかのように考えおいるからだろう。

よっお、システム同士が異質で䞍連続である理由を究明する必芁が出おくる。ずいうのも「䜓现胞的倉化」は「生存状態」の維持ずいうずおも倧きな圹割を担うからだ。「遺䌝子䞊の倉化」ず「倖的環境の倉化」はこの圹割を担う必芁がないずいう意味で、異質なのである。では「生存状態」の維持は「䜓现胞的倉化」ではどのように行われるのか?

ベむト゜ンは「経枈」の修蟞を甚いお、「可倉域」内で調敎を行おうずする「䜓现胞的」なシステムの仕組みを、「柔軟性の経枈」ず呌び、お金や゚ネルギヌにおける「経枈」ず「䜓现胞」における「柔軟性の経枈」ずの違いを比范察照しながら、その特城を列挙する。

ただ䜓现胞の柔軟性経枈は、われわれになじみの深い金銭や゚ネルギヌの経枈ずは、1぀重芁な点で異なっおいる。金銭や゚ネルギヌの堎合、新しい支出は以前の支出に加算される be addedものだ。そしお支出の総和が蓄えの限界に近づいたずき、経枈的圧迫がかかっおくる。これず察照的に、䜓现胞が耇数の異なった倉化から支払いを芁求される堎合、その党䜓的な効果は乗算的 multiplicativeである。この問題は次のように曞き衚すこずが可胜である。----有機䜓がずりうるすべおの可胜な生存状態の有限集合をずする。そのなかで突然倉異ず䞡立可胜な生存状態の集合を1、突然倉異2ず䞡立可胜な生存状態の集合を2ずする。このずき、2぀の突然倉異を経過した埌の有機䜓がずりうる生存状態は1ず2の「論理積」に等しい。すなわち、1、2共通のメンバヌのみからなる (通垞) もっず狭い䞋䜍集合域内に限定される。こうしお、突然倉異 (ないしは他の遺䌝子型の倉化) をこうむる床に、有機䜓の䜓现胞的倉化の可動範囲が狭められおいくこずになる。2぀の突然倉異が、正反察方向の䜓现胞的倉化を有機䜓に迫った堎合には、䜓现胞レベルでの調節の可胜性はたちたちれロに萜ちおしたうはずである。

(同䞊 pp.24-25)

䞊の匕甚ではベむト゜ンのい぀もの思考ツヌルが出おくる。それは「乗算的」ずいう蚀葉が集合における「論理積」ずしお扱われおいる点だ。぀たり論理挔算である。「加算的」は「OR」を、「乗算的」は「AND」を指す。加算は「A∪B」であり、乗算は「A∩B」である。

論理和 A∪B
論理積  A∩B

論理挔算で眮き換えるのは、ベむト゜ンが論理回路ずしお「䜓现胞的倉化」を考えようずしおいるからだ。ベン図で芖芚的にむメヌゞすればわかりやすいだろう。「加算」は円Aから芋れば円Bに広がっおいくのに察し、「乗算」は2぀の円A Bが重なる郚分だけに限定されおいくのである。぀たり、回路ずしお「䜓现胞的倉化」を芋おみるず、遺䌝子䞊の突然倉異や環境䞊の倉化が起こるたびに、円の重なる郚分が狭たっおくるずいうのである。

ベむト゜ンは「加算的」な金銭や゚ネルギヌの「経枈」に察しお、「䜓现胞的」な「経枈」は「乗算的」ずいうのである。その特城を䞊の匕甚では「1、2共通のメンバヌのみからなる (通垞) もっず狭い䞋䜍集合域内に限定される。こうしお、突然倉異 (ないしは他の遺䌝子型の倉化) をこうむる床に、有機䜓の䜓现胞的倉化の可動範囲が狭められおいくこずになる」ず衚珟しおいる。「もっず狭い䞋䜍集合内」ずいうのはベン図で2぀の円が重なった郚分を指しおいる。

「䜓现胞」の「経枈」が「乗算的」なのは、「遺䌝子䞊の倉化」にも「倖的環境の倉化」にも「䞡立可胜な生存状態」を維持しなくおはならないからだ。この「䞡立可胜な生存状態」を維持する「可倉域」は、倉化が立お続けに起こるず狭たっお、柔軟性もなくなっおくるず予想される。これは進化論から考えるず圓然の垰結のように思われる。

ずころが、それでも柔軟性は維持されるのだ。ここに「䜓现胞的倉化」の「経枈」が䞀枚岩でないのではないか、ずいうベむト゜ンの予枬が加わる。それが「䜓现胞的倉化の可塑性」ずいう考えだ。

䜓现胞的倉化の可逆性ずいう点に関しお、特に泚目しおおきたい点がある。高等な有機䜓にあっおは、環境の芁求に察しお「深局での防埡」ずも呌べるものが敷かれおいるケヌスが倚く芋られるずいうこずだ。海抜れロメヌトルの䜎地から、3000メヌトルの高地ぞ昇った人間の呌吞は荒くなり、動悞は激しくなるが、この第1段階の倉化は戻りがきわめお早い。同じ日に山を䞋りれば、ただちに消え去るものである。しかし山に䜏み着くこずになった堎合、今床は第2の防埡圢態が珟れる。さたざたな生理的倉化をベヌスにした「順化」が埐々に進行しお、激しい運動をしおいないずきは、呌吞も心臓も再び静穏な状態を取り戻す。そしお、この「深い」レベルでの防衛は、䜎地に戻っおからも、解陀にしばらく時間がかかる。そればかりか、はじめのうち、䜕かしら䜓の䞍調を芚えるこずもあるだろう。

(同䞊 p.27)

「䜓现胞的倉化」には、衚局での「可逆性」ずいう性質によっお党䜓の「可倉域」を䞍可逆的に狭くなっおいかないような「深局での防埡」を敷く「経枈」が働いおいる、ずいうのである。䞊の匕甚での䜎地に䜏む/高地に䜏むずいう倖的環境の倉化に察する「可逆性」の䟋では、滞圚の期間が長くなるほど「可逆性」の働きも鈍くなるこずが瀺される。

ここで、ベむト゜ンがオヌバヌラップしおいるのは、粟神医孊領域で緎り䞊げ぀぀あった、自らの論理階型的な「孊習」理論である。以䞋の習慣圢成の「経枈」に぀いおは「統合倱調症の理論に芁求される最䜎限のこず」 (1959 『粟神の生態孊ぞ』䞭巻所収)ですでに怜蚎されたものである。(この論考がパロアルトでのセラピストずしお経歎ず䞊行しおいる点に泚意したい。)

これず䌌た「深局での防埡」が、行動の領域でも明瞭に芳察される。䞍慣れな状況に盎面した際、われわれは詊行たたは思考によっお察凊するが、その状況が繰り返し珟れるようになるず、次第に過去の経隓で奜い結果の埗られたやり方で自動的に事を凊す「習慣」を圢成する。同じ皮類の問題に、その぀ど考えたり詊したりを繰り返すのは、効率の悪いこずだ。習慣圢成によっお、そうした無駄が省かれ、貎重なメカニズムを別の新しい問題のためにずっおおくこずができるようになるわけである。

(同䞊 p.28)

「可逆性」の問題を行動の領域ぞ、぀たり順化ず習慣圢成ぞの移すず面癜いこずがわかる。逆に「可逆性」のみのシステムがもしあるずしたら、恒垞性の維持はずおもコストがかかっおしたうからだ。ずいうのも「こうした耇雑な回路党䜓が、可逆的倉化が維持されおいる間じゅう、その目的のために䜿えるようになっおいなくおはならないのだ。可逆的な倉化ずいうのは、回路党䜓のメッセヌゞ系路をかなり「食い぀ぶす」、割高の倉化なのである」。

このようにしお、過去の行動を「習慣」たで萜ずし蟌んでいないず、新たに、行動を起こす際に、すべおがやり盎しになっおしたう「可逆性」が、「深局の防埡」に関わる「柔軟性の経枈」の䞀郚であり、行動領域における生存状態の維持に関わっおいるこずを明瀺する。

ず同時に、このホメオスタティックな回路が、「䜓现胞的倉化」の「柔軟性」に関わるずすれば、行動領域のそれよりもはるかに耇雑であるず予想する。「噚官Aのホメオスタティックな制埡に寄䞎するホルモン情報䌝達物質は、同時にB、C、D噚官にも圱響を䞎えずにはいない」からである。

◆

最埌は「d 遺䌝子型のメッセヌゞは圧倒的にデゞタルな性質を持぀」ずいうテヌれだ。

このようなクッション圹を果たす「䜓现胞的倉化」の重局的な「柔軟性の経枈」ず比べおみるず、突然倉異するような「遺䌝子䞊の倉化」がずおも異質であるこずがわかる。ベむト゜ンは再び「〝プレゞラフ〟」ずいうキリンに進化する以前の想像䞊の動物を想定し、思考実隓を開始する。

䞀方、突然倉異その他の遺䌝子型 genotypic レベルでの曞き換えによる倉化は、これずはたったく性質を異にするはずだ。倉化した埌の遺䌝的情報の党䜓が個々の现胞の䞭に保持されるわけだから、隣接する噚官や組織から受け取る情報に倉化が生じなくおも、以前ず違った動きを (それが適切であるずきには) 瀺すこずができる。〝ロングネック〟ずいう突然倉異遺䌝子を抱え持った〝プレゞラフ〟が、同時に〝ビッグハヌト〟ずかいう遺䌝子を授かったずするず、この動物は、䜓内のホメオスタティックな系路に䟝存せずに、倧きな心臓を獲埗し保持するこずができる。この突然倉異が、〝プレゞラフ〟の生存にずっおプラスの䟡倀を持぀のは、それによっお高い䜍眮に持ち䞊げられた頭に十分な血液が送れるようになるからではない。それが目的であれば、䜓现胞的な(゜マティック) somatic 方法でも察凊しおいけた。そうではなく、有機䜓党䜓の柔軟性がそれによっお増加し、環境たたは遺䌝子型の倉化が以埌有機䜓に課しおくる他の(・・)芁玠に応じる䜙裕ができるずいうずころに、突然倉異の䟡倀があるのである。

(同䞊 pp.30-31)

雑駁に蚀えば、突然倉異が「個々の现胞の䞭に保持される」堎合、「遺䌝子䞊の倉化」は「䜓现胞的倉化」が行う「生存状態」の維持に必芁な調敎機構の「可倉域」の幅を独自に広げるこずができる、ずいうのである。䞊の匕甚では「〝ビッグハヌト〟ずかいう遺䌝子を授かったずするず、この動物は、䜓内のホメオスタティックな系路に䟝存せずに、倧きな心臓を獲埗し保持するこずができる」ず衚珟されおいるのがそれだ。

「䜓现胞的倉化」、぀たり「䜓内のホメオスタティックな系路に䟝存せずに」、「有機䜓党䜓の柔軟性がそれによっお増加し、環境たたは遺䌝子型の倉化が以埌有機䜓に課しおくる他の(・・)芁玠に応じる䜙裕ができる」ずいうのは、「生存状態」を維持するための調敎は、「䜓现胞的倉化」ず「遺䌝子䞊の倉化」の2぀のレベルで行われおいる、ずいうこずである。

少し先取りになるが、以䞊をたずめたセンテンスを先に挙げお、ラマルク説ぞのベむト゜ンの仮説の提瀺に向かうこずにする。以䞋の匕甚で、「ゞェノピスティック・システム」ずは「遺䌝子䞊の倉化」を行うシステムであり、「゜マティック・システム」ずは「䜓现胞的倉化」を行うシステムである。

進化には、2぀の制埡システムがはたらいおいる。個䜓の䜓内に生じるストレスを蚱容可胜範囲で調敎するホメオスタシス機構ず、生き残れない遺䌝子型を個䜓矀から抹消する自然遞択の掻動だ。工孊的な芋地から芋た堎合、問題は、䜎次レベルにある可逆的な゜マティック・システムから高次レベルにある非可逆的なゞェノティピック・システムぞの情報の流入をどうやっお制限するかずいう点にある。

(同䞊 p.34)

「䜎次レベルにある可逆的な゜マティック・システムから高次レベルにある非可逆的なゞェノティピック・システムぞの情報の流入」ずはラマルクの「獲埗圢質の継承」を指しおいる。この「継承」぀たり「情報の流入」の「制限」が問題になる理由は、2぀のシステムが䞍連続で異質だからこそ「生存状態」の維持が可胜であるずベむト゜ンは考えるからだ。

もし「獲埗圢質の継承」が2぀のレベルで起こったらどうなるか、ベむト゜ンはシミュレヌトしお2぀の問題を抜出しおいる。䞡方ずも冒頭の郚分のみ匕甚する。

1 問題はホメオスタシス回路網の経枈性に関わっおいる。ある奜たしい圢質が、䜓内環境のホメオスタシス機構に寄り掛かっお珟れ出おいるずき、それを遺䌝的に固定しおしたえば、その圢質ず盞互連関しお動いおいる他の倚数の倉数たで固定されおしたうこずになる。(以䞋略)

2 ラマルク匏の継承が起こった堎合、(われわれの仮説においお) 進化を支える2぀のプロセス盞互の盞察的な時間構造が厩れおしたうこずになる。(以䞋略)

(同䞊 pp.32-34)

第1に、「柔軟性の経枈」が厩れおしたう。そしお第2に、系統発生(「遺䌝子䞊の倉化」)の非可逆性(戻れない)ず個䜓発生(「䜓现胞的倉化」)の可逆性(戻れる)ずいう時間構造の違いも厩れおしたう。そうベむト゜ンは考える。これらはベむト゜ンが立おた仮説の厩壊を瀺すものではない。むしろ、生き物の生存性が危機に晒されるこずになるのだ。

ずいうのも「ホメオスタシス回路網の経枈性」の芳点からすれば、「獲埗圢質」が「遺䌝子䞊の倉化」に流入しお、子々孫々に「継承」される堎合、「䜓现胞的倉化」の可逆性ずいう性質が、非可逆的な「遺䌝子䞊の倉化」に占められるからだ。䞀床日焌けするず皮膚の色は戻らずどんどんメラニンが増えお黒くなり、䜎地から高地に移った者は空気の薄さに適応できず、心拍数が䞊がったたたになるのである。

ただし、2぀のシステムが共存しながらも「獲埗圢質の継承」に䌌た䌝達が可胜である点をベむト゜ンは「ボヌルドりィン効果」ずしお玹介しおいる。ゞェヌムズ・ボヌルドりィンは「遺䌝子䞊の倉化」すなわち「進化」ず「䜓现胞的倉化」すなわち「孊習」が䞀切無関係なのかず問い、たるで「獲埗圢質の継承」が起こるような進化のシナリオがありうるこずを提起した。

生物集団を考えおみる。倖的環境の倉化にある個䜓がうたく振る舞うこずで生き残り、子孫を残しおいくず、その子孫からなる生物集団の遺䌝子の構成自䜓が倉化するずいうものである。個䜓レベルの「孊習」が集団レベルの「進化」に方向性を䞎えるず解釈すれば、「獲埗圢質の継承」に䌌たシナリオになる、ずいうのが「ボヌルドりィン効果」である。

が、「ボヌルドりィン効果」の堎合、子々孫々にわたる非可逆的な時間が前提になっおおり、芪䞖代の「孊習」が次の䞖代の遺䌝子構成を倉えるこずではない点は泚意すべきだろう。非可逆的な「遺䌝子䞊の倉化」の䞭にあっおもすぐ次の䞖代に遺䌝子構成が倉わるこずはないのである。

こうしお「ボヌルドりィン効果」を経由したベむト゜ンは、「遺䌝子䞊の倉化」ず「䜓现胞的倉化」のどちらが「倧きな頻床で起こるず掚枬されるのか」ず問う。ここでたた「〝プレゞラフ〟」の思考実隓になる。

先ほど仮想した〝プレゞラフ〟の䟋で考えよう。その動物の遺䌝子〝ロングネック〟を抱え蟌んだずき、心臓や埪環系はもちろんのこず、平衡感芚を叞る 半芏管や背骚の怎間板、姿勢反射、倚くの筋肉の長さず厚さの比率、猛獣から身をかわす戊術に至るたで、すべおを修正しないずいけない。ずすれば、耇雑な有機䜓では、珟状远認的なゞェノタむプ倉化が革新的なものを数の䞊で圧倒しおいるこずが必芁である。そうでなければ、皮の䜓现胞的柔軟性ずいうものが尜きおしたうだろう。
逆から考えるず、有機䜓は、その倧倚数が、あらゆる時点においお、゜マティックな状況を远認するゞェノティピックな倉化が起こる可胜性を䜕重にも抱えお生きおいるのではないかず想像される。突然倉異も遺䌝子再配分 gene redistributionもランダムな珟象だず考えられるが、その堎合、期埅される突然倉異が起きる可胜性を䜕重にも匵りめぐらせおおけば、そのうち1぀くらい圓たる可胜性が倧きくなるわけである。

(同䞊 p.35)

「〝プレゞラフ〟」が「生存状態」を維持するためには「珟状远認的なゞェノタむプ倉化が革新的なものを数の䞊で圧倒しおいるこずが必芁」であるずいう箇所に泚意したい。ベむト゜ンは「遺䌝子䞊の倉化」がすべお突然倉異を匕き起こすずは考えない。むしろ「䜓现胞的倉化」を「远認」するような「遺䌝子䞊の倉化」が圧倒的に倚く、「倖的環境の倉化」によっお突然倉異の革新が起こるたでそれは続く、ず考えるのである。

泚目したいのは、2぀の倉化の二重で䞍連続な構造は負のフィヌドバックを繰り返す゜マティック・システムずそれを「远認する」ゞェネティック・システムで安定をえおいるが、埌者はデゞタル的な性質である限り、確率的な動きをするずいうのだ。ベむト゜ンは、ゞェネティックな埌者を「倖的環境の倉化」のありよう次第でその保守性が革新的な正のフィヌドバックに倉わりうるシステムずしお想定しおいる、ず蚀える。

◆

以䞊のように、「玔理論」的な蚘述で運んできたこの論考だが、実際の怜蚌になるず困難や䞍可胜性が埅ち受けおいるずいう自己批刀的な蚘述がこの埌続く。詳现は省略するが、論理階型を甚いた自身の「孊習」理論をオヌバヌラップしお、「孊習」の偎から「進化」ぞず接近するこの仮説には、芳察や実隓の困難が぀きたずう点もいく぀か指摘される。ここたで展開しおきた仮説は「ベむト゜ン予想」ずでも呌ぶべきもの、ず蚀えそうだ。

䞀方、「䜓现胞的倉化」、「遺䌝子䞊の倉化」の関係を論じおきたベむト゜ンは、いよいよ「倖的環境の倉化」ぞず重心を移しおいく。その前に、ベむト゜ンはここたで論じおきた自説をいったん6぀の項目にたずめおいる。倪字になっおいる冒頭郚分だけを匕甚しおザッず確認するだけでも、6項目の共通の前提が予想できるかもしれない。

1. 䜓现胞的調敎の珟象を、柔軟性の経枈ずいう芳点から適切に蚘述するこずができる。

2. この柔軟性経枈は〝乗算〟のシステムであり、それぞれの芁求に察凊するこずが、柔軟性の利甚可胜幅を<論理積>圢成の仕組みにのっずっお切り萜ずす。

3 遺䌝子型を曞き換える倉化は、通䟋、䜓现胞の調敎胜力に負荷をかける。

4 遺䌝子型の倉曎が耇数回、盞前埌しお起こるずき、䜓现胞は乗算的に圧迫を受ける。

5 環境圧によっお獲埗された特城は、遞択の条件が適切であるずき、遺䌝的に決定された同様の特城によっお眮き替わりうる。

6 圢質の獲埗には、䜓现胞レベルより、遺䌝子型レベルの倉化に因る方が、䞀般に、柔軟性の経枈の䞊で有利である。

(同䞊 pp.39-44 各項目冒頭の倪字郚分のみ匕甚)

5番目ず6番目の項目には、りォディントンのショりゞョりバ゚の実隓ぞの蚀及がある。

これも同時期に曞かれた「統合倱調症の理論に芁求される最䜎限のこず」(1959)にある䟋だ。ベむト゜ンは統合倱調症を怜蚎する䞭で、「習慣」が「適応の経枈性」によっお生じる点に泚目しおいた。さらにこの「経枈性」が遺䌝孊の堎合、孊習による「適応の経枈性」より、「遺䌝的レベルからの決定」の「経枈性」の方がコストがかからないのではないか、ず予想しおいた。

バむ゜ラックスの 胞郚の2぀の節がずもに翅を぀けおいる 特性の圢成にさいしおも、これず類比される珟象がはたらくず考えおいけない理由はない。同じ衚珟型を埗るのに、柔軟性には富んでいおも、芋通しの効きにくい、コストが高く぀く䜓现胞的倉化より、遺䌝的レベルからの決定ずいう方法によった方が経枈的だずいう考えは、十分に成り立぀だろう。

ベむト゜ン「統合倱調症の理論に芁求される最䜎限のこず」(『粟神の生態孊ぞ』䞭巻 p.194)

孊習理論ずの類比で取り䞊げられたりォディントンの䜕十䞖代にもわたる実隓䟋は、この論考では圓の遺䌝孊領域で粟査される。が、そこでは孊習ず進化の時間構造の違いずは別の時間蚭定が導入される。りォディントンの䜕十䞖代にもわたる進化の実隓は、環境が長期的に安定しお圧力をかける実隓宀だからこそ可胜だった。が、短期的に環境圧が倉化する堎合はどうなるのか?

7 最埌に、本論のテヌれの「逆」を考えおみるのも興味深い。ここで論じおきたのは、個䜓矀が幟䞖代にもわたっお倉わるこずのないストレスを受け続けるずきには、ラマルク的な継承を 遺䌝的に シミュレヌトするこずが、生存䞊の䟡倀に぀ながるずいう点である。獲埗圢質が遺䌝するこずを瀺す目的で過去に怜蚌された事䟋もみな、環境圧が倉化しないずいう条件䞋でのものであった。しかしストレスの匷さの倉動が、予期せぬ圢で、か぀2、3䞖代に䞀床ずいうような頻床で蚪れる堎合、この「逆」をなす問題が提瀺される。 そういう状況は、自然界では皀にしか起こらなくおも、実隓宀で造り出すこずは可胜である。

ベむト゜ン「進化における䜓现胞倉化の圹割」(『粟神の生態孊ぞ』䞋巻 p.44)

怜蚌が困難か䞍可胜な自らの仮説をもし怜蚌可胜な方向に転回させるなら、実隓宀で「倖的環境の倉化」を極端に短期化する必芁がある。そんな想像が働いたかのように思えるこの発想は、自然のリズムたたは生態系を動かすずいう人間䞭心䞻矩的の副産物をもたらしかねない危険も携えおいる。

䞀方、ベむト゜ンはたず「倖的環境の倉化」から他の2぀の「倉化」を怜蚎する際に効果的な「逆呜題」ずしおこの時間スパンの短瞮ずいう考えを扱う。ずいうのも、工孊的なフィヌドバック・システムに近い扱いが生物においお可胜になるからである。

ただ、この逆呜題を実隓宀の䞭で怜蚌するのは無理だずしおも、進化ずいう倧きく開かれた図のなかでは、䜕かこれ 䜓现胞的同化 に䌌た䜜甚がはたらいおいる様子が芋えおくる。この問題を、ダむナミックな圢で提瀺するために、有機䜓の党䜓をレギュレヌタヌregulator 制埡䜓ずアゞャスタヌ adjuster 同調タむプ ずいう抂念で二分するのが䟿利である。[Prosser, 1955] プロッサヌの提瀺したこの区分は、有機䜓の内的生理が倖的環境の倉数ず同じ次元の倉数を含むずき、内的倉数が、倖的倉数の倉化に抗しおどれだけ䞀定倀を保ちうるか、その皋床を分類の基準ずする。この基準によるず、定枩動物は「レギュレヌタヌ」に、倉枩動物は「アゞャスタヌ」に分類される。氎生動物が䜓倖ず䜓内の浞透圧の関係をやり繰りする方法にも、同じ二分法が圓おはたるだろう。

(同䞊 p.45)

生物が工孊甚語で「定枩動物は「レギュレヌタヌ」に、倉枩動物は「アゞャスタヌ」に」眮き換えられるずも蚀える。が、この眮き換えによっお、「倖的環境の倉化」が、生物によっお「䜓现胞的倉化」や「遺䌝子䞊の倉化」のどのあたりたで届くのかずいうこずが理解できるようになる。「定枩動物」なら環境圧を䜓现胞レベルに留めお恒垞性を保ち、遺䌝レベルたで届かないようにするが、「倉枩動物」は遺䌝レベルの制埡に委ねるずいうように。

レギュレヌタヌにおいお、恒垞性維持のための芏制がなされるのは、個々の有機䜓を぀くる生理的ネットワヌクが環境ず接する面(むンプットずアりトプットの地点)、たたはその付近である。これに察しお、アゞャスタヌでは、環境の倉数が䜓内に入り蟌むこずを蚱される。その䞊で、有機䜓のより深みにある恒垞化のプロセスを駆動しお、䜓内の倉動に察応するのでなくおはならない。

(同䞊 p.46)

新思玢瀟版『粟神の生態孊』では、䞊の匕甚の䞭に、レギュレヌタヌでは倖界の枩床が䞊昇したずきには、ただちに発汗プロセスが䜜動しお、䜓内枩床の䞊昇が食い止められるが、アゞャスタヌの堎合「冬眠」ずいうかたちで〕環境の倉数が生理システムに及がす圱響に察凊するずいう䟋を蚳者が補足しおある。

このようにしお工孊的に生物を捉えるず、「倖的環境の倉化」をも制埡する「゚クストラ・レギュレヌタヌ」ずいう芳念も出おくる。「自然界には----ヒトがそのもっずも顕著な䟋だが----環境を倉え、あるいは制埡しお、䜓倖においおホメオスタティックな制埡を獲埗する有機䜓も存圚するのだ」。

この「超制埡者(゚クストラ・レギュレヌタヌ)」の存圚を進化の流れに組み蟌むず、「事態は逆方向に進んでいる」ずベむト゜ンはいう。「自然遞択は、長期的には、アゞャスタヌよりもレギュレヌタヌに、レギュレヌタヌよりも゚クストラレギュレヌタヌに有利にはたらいおいる。この点からするず、遠心的な方向ぞ制埡の堎を移しおいくこずが、進化における長期レベルでの利をもたらすず蚀えそうである」ず。

「倖的環境の倉化」が短期的になり倉動が激しくなるず、遺䌝レベルぞの同調(adjust)ずいう「求心化」する方向よりも制埡(regulate)ずいう「遠心化」の方向に向かうずいうのである。この方向は「倖的環境の倉化」にも及ぶ可胜性が「超制埡者(゚クストラ・レギュレヌタヌ)」の存圚によっお予想されるのである。

最埌のセンテンスを以䞋に匕甚しお終わりにしたい。

これほど倧きな問題に考えを巡らすのは、ロマンチックにすぎるかもしれない。しかし、遺䌝的同化ず逆向きのケヌスを想定しおみたこずで、䞀定のストレス䞋で個䜓矀が倉化する方向ず、進化の党䜓的傟向ずが互いに逆向きであるずいう事実に、玍埗のいくようになるのではないだろうか。䞀定したストレスが制埡の䜍眮の求心化を促し、倉動するストレスがその遠心化を促すのだずすれば、進化の図柄を決定する遠倧な時間ず倉化のレベルで、制埡が遠心的な方向ぞ移行しおいくのは理にかなったこずであるず思われる。

(同䞊 pp.47-48)

翻蚳では、「制埡が遠心的な方向ぞ移行しおいくのは理に適ったこずであるず思われる」ずいう蚀葉でこの論考が閉じられる。原文では「centrifugal shift of control will be favored」ずある。その埌に続く「芁玄」Summaryの最埌のセンテンスでも「最埌に本論は、倉動する variable ストレスに察しお個䜓矀が順化しなくおはならないケヌスでは、「逆」の議論が成り立぀ずいう考えを提瀺する。そういうケヌスでは「反ボヌルドりィン効果」を遞り奜むfavorように自然遞択がはたらくず考えられる」ずある。

それゆえ、この末尟の文は「理に適った」の郚分は原文では「遞り奜み」ずいう䞻芳的な意味合いで䜿甚されおいるず考えおもよさそうだ。぀たり、経枈合理性も䞀぀の他の生物同様の「順化」の䞀぀ず捉えるずいうこずである。ずいうのも、この堎面でベむト゜ンは明確に生態(ecology)の問題に螏み蟌んでいるように思われるからだ。

もしそうなら「進化における䜓现胞倉化の圹割」ずいうタむトルの意味も、生物孊領域から生態孊領域ぞず重心移動するこずになるだろう。

1960幎あたりに曞かれたずされるこの論考が、1963幎に発衚された理由は、本曞でだけではわからない。が、レむチェル・カヌ゜ン『沈黙の春』(1962)の次の幎に発衚される点から芋お、終盀の「逆呜題」の提瀺は単なる「䜓现胞倉化」の考察の副産物にずどたらないように思われる。

(ベむト゜ンがレむチェル・カヌ゜ンに蚀及するのは1970幎に発衚する「環境危機の根にあるもの」たでないので、あくたで憶枬の域を出ないのだが。)


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