もし、アルゴン凝固のガスがアルゴンじゃなかったら。について考えてみた話。
どうも、ロテラと申します。
内視鏡の治療に携わっていて、ふと気づいたことがあるんです。
内視鏡治療で使われるアルゴンガス。
よく考えたら、アルゴンガスって内視鏡の治療でしか見たことがないんですよね。他に見たことなくないですか?
治療に使われるガスでは酸素や二酸化炭素、窒素なんかの方がよく見かけるのに、なぜ治療にはアルゴンガスなんでしょうか。
気になったので、「もしアルゴンじゃなかったら?」と考えてみることにしました。
もし、酸素だったら
酸素には助燃性があります。
手術では電気メスを使います。止血の時には大きな電気を流すので、放電(火花のようなもの)が起きることがある。
もし周りが酸素だったら、その火花から必要以上に燃え広がってしまう。体の中で、それは起こせません。
危険すぎて、考えたくもありません。
もし、二酸化炭素や窒素だったら
不燃性なので、一見使えそうですよね。
でも、ここで問題があります。
そもそもアルゴンガスは、どうやって電気を組織に伝えているのか。
その鍵が「プラズマ化」です。
そもそも、プラズマ化って何だろう
アルゴンは普段、電気をほとんど通しません。いわゆる不導体に近い状態です。
でも、ここに高い電圧をかけると、アルゴンが一気にプラズマ化して、電気を通せる状態に変わります。
つまり、プラズマ化しなければ電気は流れない。電気が流れなければ、凝固はできない。
ここで二酸化炭素や窒素に話を戻すと、この2つはプラズマ化しにくいんです。だから電気を通せない。凝固に使えないんですね。
じゃあ、プラズマ化できるガスを探そう
電子を放出しやすい元素は、プラズマ化しやすい。
それが、元素周期表の一番右端に並んでいる貴ガス元素です。
ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン…。
つまり、この仲間の中から探せばいいということになります。
「あれ、じゃあアルゴンじゃなくてもいいんじゃない?」
そう思いますよね。私もそう思いました。
特にキセノンなんて、内視鏡の光源でも使われているくらいですから。
もし、ヘリウムやネオンだったら
同じ希ガスでも「プラズマ化のしやすさ」には差があるんです。
電子の結びつきを、ラグビーのスクラムだとイメージしてください。
このスクラム、崩すにはいろいろな工夫が必要です。そして、ガスによって崩しやすさが違う。
ヘリウムやネオンのスクラムは、かなり手強い。崩すのに苦労します。
その点アルゴンは、貴ガス元素の中でも比較的スクラムを崩しやすい方。
だから扱いやすいんです。
もし、キセノンだったら
キセノンのスクラムは、アルゴンよりもさらに崩しやすいんです。電離のしやすさだけで言えば、むしろアルゴンより優秀。
しかも内視鏡の光源でも使われているくらい、医療現場にも馴染みがあります。
でも、キセノンには大きな問題があります。
空気中に含まれる量が、アルゴンの約10万分の1しかない。超希少なんです。
その希少さは、値段にもはっきり出ています。家庭用の電球は数百円で手に入りますよね。でも同じ「光源」でもキセノンランプは数万円。
崩しやすくても、こんなに高額では、いつもいつもは使えない。
止血のたびにこのコストがかかってしまったら、現場では続けられないんです。
やっぱり、アルゴンだった
ここまで考えてきて、アルゴンの特徴を整理するとこうなります。
燃えないから、電気メスの火花でも安全。
希ガスの中でもスクラムを崩しやすく、ちょうどいい電圧でプラズマ化できる。
そして空気中に約0.9%含まれていて、手に入りやすくコストも安い。
さらに、アルゴンプラズマ凝固ならではの強みがあります。
アルゴンガスを伝って電気が組織に流れる。まるで電極のシャワーを浴びせるような状態です。
通電で焼けた部分からどんどん電気抵抗が上がっていく。電気は抵抗の高い場所を避けて、まだ焼けていない抵抗の低い部分へ逃げていく。
つまり、焼けた部分はそれ以上焼けず、焼けていない部分をどんどん焼こうとする。
だから、広い範囲を均一に、しかも浅く凝固できる。
じんわりと広い範囲から染み出すoozing。この止血に、これ以上ない方法なんです。
ロテラノート
oozingのようなじんわり出血に最適な方法。
つまり、やっぱりアルゴンだった。
