人手不足なのに、“人手のかかるうどん屋”が増えていく——投資脳の連想ゲーム
うどん屋の競争なら、
「どこのうどんがおいしいか」
を考えればいい。
でも最近の丸亀製麺、はなまるうどん、資さんうどんを見ていると、どうもそれだけではない気がしてきました。
むしろ私が気になったのは、
人手不足の日本で、なぜ“人手のかかりそうな店”を増やしているのか。
ということです。
こんにちは、長期投資家@VOOです。
今日は、うどんの話から始めて、
外食チェーンの本当の資産とは何なのか。
そこまで連想してみます。
丸亀製麺は、まだ強い
まず、ここは間違えないようにしたいところです。
丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスの2026年3月期。
丸亀製麺セグメントの売上収益は約1,372億円。
前期比7.1%増で、過去最高。
事業利益も約220億円で、こちらも過去最高でした。
原材料費や人件費、水道光熱費が上昇する中でも、増収でコスト増を吸収しています。
つまり、
「丸亀が弱くなった」
という話ではありません。
一方、はなまるうどんも変わり始めています。
吉野家ホールディングスは「はなまるターンアラウンド」を進め、2024年度309億円だった売上高を2029年度480億円へ伸ばす目標を掲げています。
都市部への集中出店、新業態、デジタル活用による省人化。
同じ「うどん屋」でも、違う方向へ動き始めています。
そして、そこへ猛スピードで入ってきたのが、
資さんうどんです。
74店舗が、110店舗になった
資さんうどんは、北九州発祥のうどんチェーンです。
肉ごぼ天うどんだけではなく、丼、カレー、定食、ぼたもちまである。
「うどん専門店」というより、
“うどんを中心にしたファミリーレストラン”
に近いかもしれません。
2024年10月、すかいらーくホールディングスが資さんうどんを買収しました。
当時74店舗。
それが2026年6月末には110店舗まで増えています。
「資さん、すごいな」
で終わってもいいニュースです。
でも私は、別のところで引っかかりました。
人手不足なのに、大丈夫なのか?
丸亀製麺やはなまるうどんは、基本的にセルフサービスです。
注文する。
うどんを受け取る。
天ぷらを取る。
会計する。
お客さん自身が、店内オペレーションの一部を担っています。
一方、資さんうどんはテーブルサービスを基本とする業態です。
そこで思いました。
ちょっと待てよ。
今、日本の外食産業で大きな問題になっているのは、人手不足です。
しかも人件費も上がっている。
それなのに、
人手のかかる業態を全国に広げて大丈夫なのか。
ここで「資さんは人気だから伸びる」という単純な線に、少しブレーキがかかりました。
でも、ゼロから店を作るわけではない
そこで、すかいらーく側から見てみます。
すると景色が変わりました。
すかいらーくグループには、全国に3,000店を超える店舗があります。
ガスト。
バーミヤン。
しゃぶ葉。
ジョナサン。
夢庵。
そして、その店舗網の一部を、
資さんうどんへ業態転換できる。
実際、2026年第1四半期には14店舗を業態転換し、そのうち7店舗が資さんうどんでした。
つまり、
土地を探す。
建物を建てる。
人をゼロから集める。
物流網を新しく作る。
そこから始めなくてもいい。
すでに、
店がある。
人がいる。
物流がある。
仕入れ網がある。
教育の仕組みがある。
すかいらーく自身も、M&Aした企業に提供できるものとして、既存店舗からの転換、人材育成、生産・物流インフラ、共同購買、マーケティングデータなどを挙げています。
ここで私は、
「資さんうどんが強い」
という話から、別のものを見始めました。
本当に強いのは、「店を変身させる力」ではないか
外食企業の強さというと、以前なら、
「人気メニューを作れる会社」
を想像していました。
でも、これからは違うのかもしれません。
消費者の好みは変わる。
人口も変わる。
街も変わる。
物価も変わる。
10年前に強かった業態が、10年後も強いとは限りません。
だったら、
その場所で求められる店に入れ替えていく。
ガストだった場所を資さんにする。
別の場所では、しゃぶ葉にする。
すかいらーくは2024年だけで64店舗を業態転換しています。
同社によれば、転換店舗では売上が転換前比149.6%となり、近隣店舗とのカニバリ解消効果も確認されたとしています。
ここで、私はこう考えました。
外食チェーンの本当の資産は、「店」ではないのかもしれない。
店を別の店に変えられる仕組みそのものが、資産なのではないか。
ただし、看板を替えれば終わりではない
ここは、機械や設備の現場にいる人間として気になります。
「ガストを資さんに転換」
文字にすると簡単です。
でも現場では、そんなに簡単ではないはずです。
厨房設備は合うのか。
給排水は足りるのか。
電気容量は。
ガスは。
客席のレイアウトは。
厨房機器を入れ替えるなら、誰が施工するのか。
新しい機械を入れれば、当然メンテナンスも必要になります。
壊れたら誰が直すのか。
部品はあるのか。
そして何より、
資さんの味を全国で同じように出せるのか。
すかいらーく自身も、資さんのうどんをセントラルキッチンで製造する検証の中で、地域による水質の違いから同じ味を再現することに試行錯誤していると説明しています。
全国展開というのは、地図の上に点を増やすだけではありません。
現場まで同じ品質で回って、初めて全国チェーンになる。
ここは、本業が設備に近い私には特に気になるところです。
そして最大の問題は「人」
既存店舗を転換すれば、人材をゼロから集めなくてもいい。
これは大きな強みです。
でも、
人がいることと、人件費が安いことは別です。
資さんが人気になって売上が増えても、そのために多くの人員が必要になれば、利益は思ったほど残らないかもしれません。
逆に考えると、セルフサービスの丸亀製麺やはなまるうどんは、人手不足の時代だからこそ強い可能性があります。
少ない人数で店を回せる。
お客さん自身がオペレーションの一部を担ってくれる。
人件費が上がれば上がるほど、この構造が効いてくるかもしれません。
だから、
資さん型が正解。
でもない。
丸亀型が正解。
でもないんです。
お金は、どこから資さんへ来るのか
もう一つ考えたいことがあります。
資さんうどんの売上が増えた。
では、
そのお金は、どこから来たのか。
日本人が突然、今までよりたくさん外食するようになったわけではないでしょう。
資さんで1,000円使った人は、
その日、
丸亀へ行かなかったかもしれない。
ラーメン屋へ行かなかったかもしれない。
回転寿司へ行かなかったかもしれない。
スーパーで弁当を買わなかったかもしれない。
つまり資さんの競争相手は、うどん屋だけではない。
「今日の昼飯、どこにする?」
という財布の中で、
牛丼とも、
ラーメンとも、
ファミレスとも、
回転寿司とも戦っている。
お金は消えません。
移動します。
そう考えると、
「うどん市場で誰が勝つか」
という見方そのものが、少し狭く感じてきます。
短期では資さん。でも、その先は分からない
短期では、資さんうどんには勢いがあります。
74店舗から100店舗を超え、既存店転換によって全国展開を加速できる。
これは、すかいらーく傘下に入った大きなメリットでしょう。
でも中期になると、
人件費。
改装費。
競合の動き。
こうしたものが効いてきます。
はなまるは省人化を進めています。
丸亀製麺もブランド力や顧客体験をさらに高めようとしています。
そして長期では、
「どのうどん屋が勝つか」より、「消費者の変化に合わせて業態を変え続けられる会社はどこか」
の方が重要になるのかもしれません。
良い会社と、良い投資先は別
もちろん、
資さんが伸びている。
だから、すかいらーく株を買えばいい。
そんな単純な話ではありません。
すかいらーく自身が、資さんの全国展開や業態転換を成長戦略として公表しています。
つまり、
「資さんが伸びる」
だけなら、すでに多くの投資家が見ています。
見るべきなのは、そのさらに先でしょう。
売上は増えても利益は残るのか。
人件費を吸収できるのか。
転換投資を回収できるのか。
一度来た客が、二度、三度と来るのか。
そして3,000店を超える店舗網を、
時代に合わせて組み替え続けることができるのか。
良い会社と、良い投資先は同じではありません。
私が今回、うどんから考えたこと
最初は、
丸亀製麺。
はなまるうどん。
資さんうどん。
その3社の競争を見ていました。
でも考えているうちに、気になったものが変わっていました。
うどんではなく、店でした。
さらに、
店ではなく、その店を変えられる仕組みでした。
需要が変わったら、業態を変える。
そのためには、
土地がいる。
建物がいる。
設備がいる。
物流がいる。
仕入れ網がいる。
そして、人がいる。
人気メニューだけでは、全国チェーンは作れません。
逆に、巨大な店舗網を持っていても、時代に合わない店をそのまま抱えていたら、それは資産ではなく重荷になるかもしれない。
だから今回のニュースを見て、私はこう思いました。
外食チェーンの強さは、「何店舗持っているか」ではなく、「その店舗を何に変えられるか」に移っているのかもしれない。
そして、その変身には人も、お金も、設備も必要です。
だから次に外食チェーンのニュースを見るとき、
「何店舗増えた?」
だけではなく、私はもう一つ見てみようと思います。
その店、誰が働いて、誰が直して、次は何の店に変えられるんだろう。
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