ドナウの流れ
子供の頃、世界の大きな川の名前を覚えることに興味があった。地図や図鑑を見ては、ミシシッピ川、アマゾン川、ナイル川、インダス川、ライン川、メコン川、揚子江、などとまるで呪文をとなえるように覚えたものである。
それらのなかに、ドナウ川もあった。

ハンガリーの首都、ブダペスト。街中を流れるドナウ川。
クルーズに乗る前に、川沿いの小道をぶらぶらと歩いた。途中、これぞ船長!って感じの人と出会い、しばらく会話を楽しんだ後、再び歩き始める。
その、たおやかに流れる大河を見ていると、川沿いの街並みの美しさよりも、この川の下流にウクライナがあるのだ! という思いが何故だか急に湧き上がってきた。
この地を訪れる前までは、ハプスブルク家興亡の残照を、ドナウ川沿いに巡るのが目的のひとつになっていた。
しかし、この大河の流れは、戦争に苦しむウクライナの人びとの顔をよみがえらせ、僕の感情をかの地の方角に向かわせたようである。
一秒でもはやく平和が訪れるよう、大いなるドナウの流れに思いを託した。
* ヘッダーの写真は、愛の鍵で埋め尽くされた橋の欄干越しに、ドナウ川と国会議事堂・街並みを望む。
