善人か? 悪人か?
僕は、見知らぬ人と会ったとき、この人は善人か悪人かと無意識的に見ている節がある。特に異国を旅している時は、目線を足下から頭まで動かすような仕草は流石にしないけど、そのような態度になっているのかも知れない。
日本では、外国人や旅行者が路上などで何か困っている場合、手助けしようと思う人がほとんどだと思う。それに反して外国では、シメシメ、良いカモがきた、こいつから金や荷物などをまきあげよう、と企む人が多いのも事実である。残念だが、どちらかというと、そのような国々の方が多数派で、世界の常識だと言っても不思議ではない。
僕は、そのような場面に、世界中で数多く出くわしてきた。個人旅でも、仕事での添乗中でも。一度では話しきれないので、今日は、その中の一つを。他は又の機会に。
ヘッダーの写真は十年ほど前、バンコクのワットアルン(日本名、暁の寺)からの返り、乗船したばかりの船上で撮った一枚である。当時、息子と二人でバックパック旅をしていた。小船は、すぐに乗客でいっぱいになり、座りきれない人は立ったまま、揺れながら岸を離れた。しばらくすると、黒色の大きなビニールバッグを前にした現地人らしきおっさんが周りをキョロキョロ見回していた。この男は怪しい、と僕は直感した。旅行や参拝に行った人が乗客のほとんどで、離れていく寺院や景色を眺めるのが普通である。チャオプラヤ川のなかほどで、少し船が揺れた。瞬間、その男はバッグを腹の上に置き、近くの乗客向かって大げさに身体を傾け歩み寄った。その乗客からみれば、バッグが邪魔になってその下が見えない状態だ。何と、男の手が瞬時にバッグの下から伸びた。
僕はわざと日本語で叫んだ。
「気をつけろ!」
男はその意味不明の声にひるんだのか、何もなかったかのようにシラッとそっぽを向いた。スリに失敗したようである。僕は、その後の危険性もあるので、それ以上のことはあえて何も言わなかった。
船着場に着いて、僕たちは男の後から下りた。男はターミナルの外へ出ずに、そのまま建物の中で立ち止まった。察するに、船は彼の仕事場なので、次の船に乗ってカモをさがすのだろうと思った。船の揺れを利用したスリの術が、彼のスキルに違いない。盗む人は、そればかりを日々考え努力しながら生きている。被害にあわないように、これらに注意しながら旅を楽しみたいものだ。
