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このラノベを知ってくれ① 『かぜ江』朝香祥 ~少女向け三国志の先駆け~

埋もれてほしくない!」「もっと色んな人に読んでほしい!」そんなライトノベルやら小説やらを、筆者の独断と偏見でピックアップして紹介していく当note。
古くは80・90年代の作品から最近の作品にいたるまで、幅広く紹介していけたらなぁなんて思っています。筆者の好みの都合上、女性向け作品が多くなるかと思いますがご了承くださいな。

そんなわけで記念すべき第一回目は、朝香祥著『かぜ江』シリーズを紹介しようと思う。


朝香祥「旋風は江を駆ける 上」(集英社コバルト文庫)
表紙は孫策。イケメンですね。

『かぜ江』シリーズは、1997年から2000年にかけて、集英社コバルト文庫から全11巻が刊行された作品だ。少女小説――いわゆる少女向けライトノベルを代表する一作である。
作者は朝香祥(あさか・しょう)先生。1996年にスーパーファンタジー文庫『夏嵐~緋の夢が呼ぶもの~』にてデビューし、その後日本や中国の古代史をテーマとした作品を多く執筆した。その他の代表作は『明日香幻想』シリーズ(集英社コバルト文庫)など。残念ながら現在では執筆業は引退されているようだが、X(@cyanyue)にて元気そうな姿を見ることができる。
挿絵は桑原祐子(くわばら・ゆうこ)先生が担当。現在も漫画家として活動されている。

ちなみにかぜ江というシリーズ名は、第一作のタイトル『旋風(かぜ)は江を駆ける』を略したものだ。

あらすじ

舞台は後漢末期、『三国志』の時代の中国。
ニ十歳の青年武将・孫策は父を失って以降、権力者の一人・袁術のもとに仕えていた。しかし腹黒い袁術は孫策を顎で使うばかりで、約束した報酬をまともに与えようとしない。業を煮やした孫策は袁術からの独立を決意。彼は同い年の幼馴染で親友の周瑜に、独立するための策を相談するが――。
固い絆で結ばれた二人が、一つの夢を目指して激動の時代を駆け抜けていく!!

少女小説としての「三国志」

三国志に限らず、歴史小説というとどうしても小難しいイメージが付きまとう。だが本作はメインキャラに美青年たちを配し、彼らの戦いと絆に焦点を当てた王道のストーリーを展開。
少女小説らしいキャッチーさで、コバルト文庫のメインターゲットたる少女読者層を取り込むことに成功したといえる。

朝香祥「旋風は江を駆ける 上」(集英社コバルト文庫)
表紙を飾るのは周瑜。美人だ。

三国志版ブロマンス(?)

勇敢な武闘派であり、やや無鉄砲だが真っ直ぐな熱血漢の孫策と、名家の生まれで頭脳明晰、浮世離れしたところもあるが穏やかで容姿端麗な貴公子・周瑜

彼らの関係性が本作の肝といって良い。この二人、幼馴染で親友とはいうものの、性格も家柄も正反対、故になかなか意見が合わず、結構な頻度でケンカや口論をするのだ。それこそ、ケンカするほど仲がいい…という言葉で流せないようなレベルの言い争いをすることもしばしば。しかし、本心では誰よりもお互いを大切に想っていて、隣にいてほしい、隣にいたいと願っている――ところがどっこい、孫策のキレやすい性分や周瑜の本心を言いたがらない悪癖などが災いして、相思相愛(?)であるはずなのにこじれてしまうのだ。

朝香祥「旋風の生まれる処 下」(集英社コバルト文庫)
個人的にはこの10代の頃の2人のビジュも好き。

とまぁこのように、読んでいるこちらがもどかしく感じてしまうほど不器用な、しかし微笑ましい関係性が全編にわたって描かれているワケだ。カラッとした爽やかな友情とはまた違うこの特有な雰囲気、『陳情令』『山河令』などの中華ブロマンス好きの方にも是非味わってもらいたい。

また、孫策を慕い付き従う呂蒙や、派手好きだが世話焼きの呂範など、脇を固めるキャラも皆美形且つ魅力的だ。彼らの和気あいあいとした日常のやり取りも、本作の魅力の一つといえる。

本格的な歴史描写

ここまで散々少女小説としての魅力をあげつらってきたわけだが、それはそれとして、歴史描写がおざなりにされていないところも本作の特筆すべき点といえよう。正史三国志をベースに、史実に準拠した骨太なストーリーが展開されている。イケメン武将を並べただけのなんちゃって三国志ではない、ということだ。

馬上での一騎打ちや大船団での合戦、策略を巡らせた頭脳戦など、歴史ものならではの戦闘シーンも見ごたえ十分で、本作の大きな魅力となっている。

呉という国

孫策・周瑜らは、三国志における一国・の人物だ。しかし他の二つの国(魏、蜀)と比べると呉の知名度はかなり低いと言わざるを得ない。というのも、本家の『三国志演義』において蜀が主人公サイド、魏がライバルサイドとして描かれていることで、残された呉は何かとハブられがちな扱いになってしまったのだ。実際、三国志に興味の無い方でも孔明曹操などはご存じだろうが、孫策や周瑜の名を聞いたことがある方は結構少ないんじゃないだろうか。そんな状況で呉をメインとした作品を出版するというのは、なかなかの冒険だったことだろう。

しかし本作が世に出て以降、エンタメ作品における呉の存在感は、特に女性向け作品において少しずつではあるが増している。最近では、人気2.5次元俳優の荒牧慶彦さんが企画・出演された舞台『剣劇「三國志演技~孫呉」』(2024年)にて、孫策と周瑜が主人公として登場していた(めっちゃ面白かったです。荒牧さん演じる周瑜が美人で凛々しくて最高でした)。

剣劇「三國志演技~孫呉」

何かと埋もれがちだった孫策・周瑜ら魅力的な英雄たち。かぜ江シリーズは、そんな彼らが再び世に知られるきっかけの一つと言えよう。舞台で彼らと出会った方々にも、是非読んでいただきたい傑作だ。

祝!電子書籍化

長らく入手困難の状態が続いていた本作だが、2023年にようやく電子書籍化が実現した。桑原先生による美麗で可愛い挿絵も変わらず収録されているほか、朝香先生による電子書籍限定の書き下ろし短編もあるので是非読んでいただきたい。
各電子書籍サイトから読めるぞ!


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