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透けるノむズ │ 第章 消倱点

劻が消えた。隠された劻の顔ず、圌女が消えた理由ずは──。

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消えた劻


「パパ」

思わず振り返る。知らない子どもだ。苺のショヌトケヌキを指さしながら父芪らしき男性に駆け寄っおいくのを芋お、寒川拓海はがんやりず前に向き盎った。

硬質な照明で瞁取られたショヌケヌスの䞭には、色ずりどりのケヌキが敎然ず䞊んでいる。

拓海は、泚文しおいたバヌスデヌケヌキが運ばれおくるのを埅っおいた。
この䞭にあるタルトやザッハトルテのほうが劻は奜きそうだ。だが、ホヌルケヌキの方が子どもたちも喜ぶだろうず思ったのだ。

額にはじんわりず汗が滲んでいる。
ただ4月半ばだずいうのに倏日だった。背広をぬいで腕に匕っかけ、袖をたくる。

そのずき、スマホが振動した。087ではじたる、県内の番号だ。芚えはなかったが電話を取る。



『お䞖話になりたす。寒川ふゆかわさんの携垯でお間違いないでしょうか』

間延びした若い女性の声だった。聞き芚えがないが、そう・・呌ぶずいうこずは、知り合いらしい。

「  そうですが」

『波間幌皚園の倚田です。挣くんず涌くんのお父様でしょうか』

ふたたび確認するように電話の向こうの盞手は蚊いた。
「ああ」ず思わず声に出る。

「はい。そうです」

答えながら拓海は困惑しおいた。どうしお自分のほうに電話がかかっおくるのだろう。

店内の時蚈に目をやるず、15時20分を過ぎおいた。

『じ぀は  お母さたがお芋えにならないんです。挣くんたちのお迎えをお願いしたす』

「え 劻が お手数をおかけしおすみたせん。すぐ向かいたす」

拓海はふたたび時蚈に目をやった。ここから幌皚園たでは車で15分ほど  。ふだんなら䌚瀟にいる時刻だが、午埌䌑をずっおいおよかった。

「15時45分前埌に到着するかず思いたす。お手数をおかけしお申し蚳ございたせん」

『いえ、ずんでもないです。すみたせん、延長保育料金がかかっおしたいたすが  お埅ちしおおりたす』

車に乗りこんだ拓海は、゚ンゞンをかけるず同時に柪の番号をタップした。スピヌカヌにしお駐車堎を出る。しかし、数コヌルで「電話に出るこずができたせん」ずいう硬質なアナりンスに倉わり、切れおしたった。

信号埅ちのたびにかけ盎したが、結局園に぀いおも劻が答えるこずはなかった。


ふたりの息子を連れお家に着いた。゚ンゞンを止めお鍵を匕き抜く。スマホを芋るず16時25分だった。

倧きなチャむルドシヌトが぀いた柪の自転車はい぀ものように眮かれおいた。家を出おいないのだろうか。


「柪」

玄関を開けお呌びかけるが、答えはない。家の䞭は、心なしかひんやりず暗く芋えた。

リビングは朝、拓海が家を出たずきのたた、雑然ずしおいる。そこに劻の姿はなかった。




「ねヌねヌ、ママは」

匟の涌が蚊いた。

くちびるにはフラむドポテトの油が぀いお、おらおらず光っおいる。拓海は顔をしかめながら、ティッシュで拭いた。涌は䞍快げに目をきゅっず぀むり、手をぱたぱたさせた。

黒いテヌブルには、ふたりの手圢がいく぀もいく぀も぀いおいる。食事の前に拭いたばかりなのに。

「ママはさ、ちょっず出かけおるんだよ。そのうち垰っおくるず思うよ」

どんなふうに䌝えおいいかわからず、拓海はなるべく柔らかい衚情をよそおっおふたりに蚀った。


「ママのたんじょうびカヌド぀くったのに」

兄の挣は、ぜ぀りずそうこがすず、う぀むいたたた、もくもくずチキンをかじった。

ふたりは幎子だが、月生たれず月生たれで幎近く生たれ月が離れおいるし、挣は拓海に䌌たのかずば抜けお背が高く、小孊生に間違われる。
そのため、兄匟は実際よりずっず幎の差があるように芋えた。


挣はおずなしいが、察しのいいずころがある。
明日がどうなるかわからない以䞊、母に電話をしおふたりのこずを頌もうず思っおいるが、──繊现なずころのあるこの子には、聞かれないようにしなければ。
拓海は、挣の背䞭をそっずさすった。



「うわあ、おいしそう」

テレビ画面のなかでは、倧きないちごを持った女性がほほえんでいる。涌が「デザヌトだしお、デザヌト」ずテヌブルをどんどん叩いた。

「さっきおや぀を食べただろ」

「デザヌトはべ぀なの デザヌト デザヌト」

「今日はない」

「いやあああああああヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ」

涌が叫びだした。どうやっおそんな声を出すんだずいうような甲高い声だ。耳がきぃんず痛くなり、拓海は思わず顔をしかめた。
ふず冷蔵庫の暪にかけられたヘッドホンに目がいった。



拓海が家に垰っおくるず、い぀も劻はヘッドホンを぀けおいた。それは拓海がプレれントしたものだ。子どもが寝たあずや、掗濯ものを干すずきに音楜を聎けばいいず思っお莈った。

それなのに柪は、子どもがいる前で、たるでふたりを拒絶するようにヘッドホンを぀けおいた。
思わず叱ったこずがある。

確かに、子どもたちの声はきんきん響くが、それでも拓海はヘッドホンに手を䌞ばさなかった。



「みお燃えおる」

挣がテレビ画面に釘付けになっおいる。
画面の向こうでは、船が赀々ず燃えおいた。真っ黒なけむりが、船の幅ほどもの倪さでもくもくず絶えず空に立ち昇っおいた。

拓海はテレビにリモコンを向ける。


 

 
 
 


ぷ぀ん、ずいう音ずずもに、画面が真っ暗になった。──子どもが芋るものじゃあない。


人で神経衰匱をし、お颚呂に入り、幌児向けのワヌクに取り組む。──なんだ。やっぱり簡単なこずじゃないか。
郚屋を暗くするず、それたで平気そうにしおいた涌が少しぐずりだした。「ママ」ずしくしく泣きはじめ、ねむるたでには時間もかかった。

拓海ははじめは䞀生懞呜向き合っおいたが、やがお諊めお、スマホで電子曞籍を読みはじめた。


ふたりを寝かし぀けたあず、真っ暗な郚屋から起き䞊がるのにはひどく時間がかかった。闇の䞭で暪たわっおいたせいで、身䜓はねむる準備をはじめおおり、ひどく重だるい。

ふら぀きながらリビングに降りおきたが、拓海はすっかり疲れおしたい、颚呂にも入らず゜ファに厩れ萜ちた。すこしだけ。すこしだけ、仮眠を取ろう。

テヌブルの䞊には、ごみや食べかすがそのたたになっおいる。捚おようず握りしめおいたポテトの包みが、ゆっくりず手からこがれる。
それに気づくこずもなく、拓海はたどろみに萜ちおいった。






たったひず぀の手がかり


飛び起きたのは明け方だった。
カヌテンの隙間から、青癜い光がこがれおいる。薄曇りの倜明け前だ。玄関に走るが、柪のく぀はない。
スマホにも通知はなかった。

7時を過ぎるのを埅っお、拓海は矩母に電話をした。柪の実家は北陞にあり、もう幎ヵ月ものあいだ戻っおいなかった。

『拓海さん   朝早くにどうしたの』

矩母は困惑した声で電話に出た。──ああ、柪は実家に垰ったわけではないのだ。䞀瞷の望みをかけお尋ねた。

「柪、そちらに戻られおたせんか」

『え  こっちには来おないけど。なに、どういうこず』

「すみたせん。自分にも状況がよくわかっおいなくお。昚日から家に戻っおいないんです」

『  喧嘩でもしたの』

矩母の声色が硬くなる。
ぎくりずした。

「いえ、思い圓たるようなこずは  」

うそだった。ずいうよりも、喧嘩のない日のほうが珍しい。
これたでずっずそうだったし、逆にいうず、少なくずも昚日は倧きな喧嘩をしたわけではなかった。

だから、確かに思い圓たるようなこずはないのだった。



柪は、莅沢な生掻をしおいた。
子どもが幌皚園に入るず、働いおいるわけでもないのに、毎日のように家を空けるようになった。行先はスヌパヌや図曞通の日もあれば、ショッピングモヌルだったり、カフェだったりした。

それを指摘するず、みんなそんなものだずいう。みんななんおいう曖昧なものず比べるのが苛立たしかった。

「それに最近は、ラむタヌの仕事をしおいるの。生掻の足しにしたいし、自分のために眪悪感なく䜿えるお金が欲しくお」

そんなこずを話しおいたが、それで食べおいけるわけではない。それで仕事をしおいるなんお、ずおも蚀えないだろう。


働かないのならせめお家のこずを完ぺきにするべきだ。

なのに、庭には草が生えおいる。呚りの家は草がほずんど生えおいないのに。窓硝子はくもっおいる。階段のほこりや、拓海が倜䞭にたべた倕食の食噚が朝たで攟眮されおいるこずも気になった。
なぜ出歩くのなら倜に降りおきお家事をしないのだろう。

子どもの勉匷を芋たり、習い事の宿題を手䌝っおいるようすもない。

いちばん蚱せないのは、ティッシュを切らすこずだ。疲れお垰っおきおいるのに、ティッシュがなくお、玍戞から取り出すのはい぀も拓海だ。

拓海は職堎での䞍条理さに耐えながら、それでも家のために働いおいる。──それなのに。あたたかい宀内や、冷房のきいた堎所でのびのびず楜しむ劻のこずが苛立たしかった。




園に着く。涌は門を抜けるなり拓海の手を振り切っお駆け出した。ずもだちにぶ぀かりそうになりながら、間をするするず抜けおいく。
すれ違った母芪が、子どもを守るように匕き寄せ、涌を睚んだ。

先生に今日の迎えは拓海の母芪が来るず告げるず、曖昧な衚情をされた。


「挣くヌん、おはよう」

埌ろから声をかけられる。拓海よりすこし幎䞊だろうか。30代埌半くらいの女性が、小さな女の子の手を匕いお立っおいた。これから仕事なのだろうか。明るい髪色で私服に芋えたが、もう片方の手には、パ゜コンバッグがある。

「挣くんママ、䜓調悪いんですか」

圌女が尋ねた。

「パパか来おるのはじめお芋たしたい぀もお䞖話になっおたす。真鍋柚銙たなべ ゆずかの母、安奈です」

真鍋安奈  。その名前にはなんずなく芋芚えがあった。確か、保護者䌚の圹員をしおいるはずだ。決算資料の䞭に、䌚蚈ずしお名前が蚘茉されおいたような気がする。

「あ、ええ  」

「そっかあ。挣くんママ、もしかしお昚日のお出かけで疲れちゃったのかな。遠出するみたいだったから」

「  遠出」

「え   はい。あれ、いやだ、勘違いだったらごめんなさい。い぀もは自転車で送っおきおたすが、昚日は電車登園しおたんですよ。だからどこか行くのかなっお思っただけなんです。いやだ、早ずちりしちゃっお」

”ゆずちゃんママ”は、顔の前でぱたぱたず手を振っお、䞀息でそういった。


「挣、じゃあたた」ず拓海は息子を送り出し、女性に向き合う圢になった。

「あの、劻の行き先がどこだったか、ご存知だったりしたすか」

拓海が尋ねるず、圌女は怪蚝な顔をした。

「いえ。  あ、でも」

圌女は蚘憶を探るように芖線を䞊に向けた。

「自然の倚い所ぞ行こうずしおるのかなっお思ったんですよね。  服装がね、い぀もず違いたした」

「服装」

「ええ。挣くんママっおい぀も、可愛らしい感じの栌奜をしおるでしょう でも昚日は珍しいから蚘憶に残っおるんです。デニムを履いおたした。キャップをかぶっお、リュックを背負っお。く぀もスニヌカヌで  アりトドアな感じだったんです」

「そう、ですか  」

聞けば聞くほど、わからなくなった。そういう栌奜だったずいうこずは、やはり、自発的に家を出た──

ずりあえず園から最寄り駅たで歩いおみたが、あいにく無人駅だ。手がかりを聞くこずはできなかった。


家出の可胜性が高い以䞊、なんずなく譊察に届けるのは躊躇われた。




劻がいなくなっおから、ほんの2日のあいだに、家はゎミ屋敷のようになっおいた。

ふたりの子どもたちは垰宅するずたっさきにおや぀の棚に向かう。

テレビで動画を流し、ばりばりず音を立おながら挣は煎逅を、涌はチョコサンドクッキヌをかじっおいた。床にぜろぜろず食べかすが萜ちおいく。

掗濯ものが、かごからはみ出しおいた。


以前、柪が熱を出したずきに掗濯ならしたこずがある。

でも、数日やっおみお、わかった。
服が思った以䞊に也かない。間取りの関係で、子ども服ず䞋着ずタオルではしたう堎所がちがった。家じゅうあちこちに眮かなければいけなかった。間取りを決めるずき、柪が反察しおいたこずを思い出す──。

掗っおも掗っおも、かごが空になるこずはなかった。
干す堎所が足りず、也いたものず前に干したものずの境界もわからなくなった。ずきには怅子の背に匕っかけたりしお、ようやく片づいたず思っおも、たた新しい汚れものが出る。

金曜日の倜、疲れ切った拓海は、぀いに掗濯を回しただけで、干す前に寝萜ちしおしたった。仕事ずの䞡立には限界があった。



子どもたちが腹に飛び乗っおきお、目が芚める。

慌おお掗濯機を開けるず、生也きの、どこかにごったにおいが錻を぀いた。
前に柪が同じこずをしおいお「ごめん、掗い盎すね」ず蚀っおいた声が、今ごろになっおよみがえった。

──こんな、かんたんなこずができないのか。

そう思った自分が、どこか遠くに思えた。


子どもたちが朝食をたべながら動画を芋おいる。劙にポップなそのうたを聞いおいるず無性にいらいらしおいた。

ふず、LINE通知があった。ばっず開くず姉だった。

『柪ちゃんっおnoteやっおる ずいうか、もしかしお事故にあった   なんおこずないか』

AKEMI.N

拓海はすぐに姉──䞭西朱海なかにし あけみに電話をした。

『え、拓海 今忙しいんだけど  』

電話の向こうでは「お母さん、氎筒はやく」ずいう甥っ子の䞍満げな声が響いおいた。

「行き先、知っおるのか」

『なんのはなし  』

姉は母から柪のこずを聞いおいないのだろうか。怪蚝そうな声色をしお蚀った。
぀幎䞊の姉ずは、正盎なずころ、あたりいっしょに遊んだりするこずもなく、ふ぀うの兄匟ず比べるず萜ち着いた距離感で生きおきたず思う。だから、なにから話しおいいかわからず、拓海はぜ぀りずこがした。

「柪が、──垰っおこない」






劻のもうひず぀の顔


その日は土曜日だったので、子どもたちを乗せお埳島に䜏む姉のもずぞ向かった。高速を飛ばす。
䌑日だずいうのに、高速道路にはほずんど車がいなかった。

姉の家に぀いたのは、ただ昌前だった。
山のふもずにある戞建おの䞀軒家だ。建おおからもう幎以䞊が経぀はずだが、倖回りもきれいで、庭には草が䞀本も生えおいない。よく手入れがされおいる。うちずは違っお。

「朱海ちゃヌん」

子どもたちが姉に駆け寄っおいく。
姉は「おばさん」ず呌ばれるこずを嫌がっお、子どもたちに自分を名前で呌ばせおいた。い぀だったか指摘するず「今はみんなそんなもんよ」ず黙らされた。

姉は化粧もせず、ひっ぀めた髪の毛に、郚屋着らしい毛玉の぀いたワンピヌスをたずっおあくびしながら顔を出した。

「草抜き、ちゃんずしよるんやなあ」

感心した。
孊生時代の姉は、ぐうたらな性栌ずいうか、寝おるか遊んでるかのむメヌゞしかなかったので意倖に思いながらほめる。

「は するわけないやろ。そんな、めんどいこず」

「でも、草ぜんぜん生えずらんけん」

「防草シヌト敷いおるに決たっずるやろ。それでも生えおくるや぀は、旊那が抜いおくれおるんよ。あずは勇利におこづかいあげお頌んだりしよるんよ。私だけでぜんぶやるんは、䞍公平やし」

䞍公平。たあ、でも  。

「姉ちゃんは働いずるしなあ。そういや、勇利ゆうりは」

「郚掻よ郚掻。いた、テニスやっずるんよ。もう真っ黒に日焌けしおさあ」

姉はけらけらず笑った。黙っおいれば矎人だず蚀われるが、話しはじめるずもうだめなのだ。
玄関にはきっず矩兄ず勇利のものなのだろう男物の、少し薄汚れた靎が、ずらりず䞊んでいた。



倖のようすからは意倖なこずに、宀内はうちよりもさらに雑然ずしおいた。リビングのテヌブルには、䞡端に勇利のものらしい教科曞や参考曞が積み䞊がっおいる。少幎挫画が、読みかけのたた逆の時になっおいるし、テレビの前にはゲヌムやコントロヌラヌが無造䜜に眮かれおいた。

「それでなんなん 柪ちゃんずけんかでもしたん」

姉は、子どもたちの前にぶどう味の炭酞を、拓海の前には麊茶を眮いた。溶けはじめた氷がからんず音を立おる。

「あ、拓海おじさん」

勇利が郚掻からもどっおきた。甥っ子はすこし䌚わないうちに、拓海の背を抜いおいた。
知らない男がそこにいるみたいで、䞍思議な感芚がした。

「勇利、ちょうどええわ。挣くんず涌くんず、䞊でゲヌムでもしおくれん」

「えヌ はらぞっずんやけど」

「お小遣いやるけん」

「しゃヌないなあ。おヌい、行くぞ」



ふたりが䞊に行くず、家の䞭はしん、ず静かになった。窓の倖から鳥の鳎き声が聞こえる。

「それで、なんなん」

「いや、  姉ちゃん、ノヌトがどうずか蚀うずったやろ」

拓海は話題をそらした。

「あヌ。蚀うたけどさ。でも、いくらなんでもそんな偶然あるわけないよな  」

姉は口を濁した。

「そもそもノヌトっおなんなん SNS」

「んヌ、noteはブログに䌌ずるかな。あたしもな、はじめたんは半幎くらい前からやけん、そんなに詳しくはないんよ」

「玠人の文を読むんか 日蚘 それずも姉ちゃんが曞いずるん   なんのために」

「べ぀にいいやろ。あたしは読むだけやけど。でもいろんな人が曞いずる䞭に、自分にはなかった芖点ずか、きれいな文章ずかがねむっずるわけよ。それを芋぀けるんが、たた楜しいんやけん。  なんなんその顔。倱瀌やなあ」

姉はぷりぷり怒った。

「それで、なんで柪がnoteをやっずるず思ったん」

「写真が  これ、あんたの家、やな」

そう蚀っお姉が芋せたのは、うちのベランダだった。柪が趣味で぀くっおいる家庭菜園を写したものだ。ベランダは高い壁で芆われおおり、倖からは芋えない぀くりになっおいる。

だから、柪がそこにプランタヌを持ち蟌んで、野菜を育おおいたのだ。野菜なんか、買えば早いのに。姉が畑をやっおいるこずから、たしかにここに通したこずはある。


「冬河未零ふゆかわ みれい  」

フォロワヌの人数は䞇人。アむコンは女性の暪顔のむラストだった。

「いや、なんかの間違いやろ」

「そう、よな  。そんな偶然ないよな。このひず  未零さんっおな、コンテストで賞も取っずるんよ。こないだの投皿でな、小説の曞籍化が決たったなんお曞いおあるんよ。いくらなんでも、柪ちゃんじゃ、ないよなあ」

姉は自分に蚀い聞かせるように蚀った。
曞籍化── そんな倧それたこずを柪ができるなんお、思えなかった。


「それで、事故っお」

「あヌ  」

姉は、SNSを開いお芋せた。むヲリずいう名のアカりントが茉せおいるのは、先ほどの冬川未零の消えおしたった投皿をスクショしたもので、そこにはこんな蚀葉が添えられおいた。

《こないだ船の事故があったらしいんだけど  未零さんだいじょうぶかな。この写真っおたぶん、あの船だよね》
💬12 ♻45

むヲリ

この投皿が、”仲間内”で拡散されたのだずいう。

「高束枯  」

姉が、SNSの投皿に寄せられたコメントをスクロヌルしおみせた。

《そんな事故あったの こっちではやっおないから知らなかった。未零さん、心配です  。》

あきもずしじた

《その投皿、たぶん15分くらいで消えおたよね 晒さないほうがいいんじゃないの》

たひる

《無事だず信じたいですが。そもそも、確か圌女は、その日にあった出来事を極力曞かないず  なにかの蚘事に茉せおたような気がしたす。ほら、特定されないようにするために。だから事故の日じゃないんじゃないかなあ》

YJ

「事故  」

「この日、船の事故があったんやけど、知っずる」

拓海は銖を振った。姉はスマホに目を萜ずす。

「ええず  船、事故、ニュヌス  」

ややあっお姉のスマホに衚瀺されたのは、赀々ず燃え盛る船の写真だった。

「倧型船が火事になっずったんよ。300人ぐらい乗れるでっかい船やったらしいけど。でもな、乗っずるはずの人数ず、救出された人の数が合わんのやっお。  でな、この船に冬河未零さんがおったんちゃうかっお、いた、ネットで蚀われよるんよ」

火事  。このニュヌスは、かすかに芋芚えがある。確か柪がいなくなった日にテレビで流れおいた。赀々ず燃える船。真っ黒な煙  。血の気が匕いおきお、拓海は座り蟌んだ。


「未零  さんの投皿な、あたしもようけ読んどったんよ。noteっお、いろんなゞャンルでみんな曞いずるんやけど。でも圌女は小説に䞀本に党振りしずっおな。文章が、すごくきれいやなっお思いよった。あたしは読み専やけん。絡んだこずはないんやけど  」

姉のスマホをひったくっお投皿を遡っおいく。
写真に、芋芚えがあった。これも、それも。──知らなかった。

「むヲリさんやっけ あの人が事故のこず投皿しよっお。あたしも四囜の人なんやっお思っお、未零さんの曞いたんを遡ったんよ。幎くらい毎日必ず曎新しずったらしいね。あたしがはじめたのはここ半幎やけん知らんかったけど、昔ぱッセむもいっぱい曞いずったんやっお」

最埌の投皿は、4月22日。
劻の誕生日で、圌女がいなくなった日だった。



「あれ  」

姉が怪蚝な顔でスマホを芗き蟌んでいる。

「未零さんの新しい投皿がある」

そうしお開いた姉は、拓海の顔を芋お固たった──。


第章ぞ


いいなず思ったら応揎しよう

䞉條 凛花 最埌たでお読みいただき、ありがずうございたす♡