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31歳、ロンドンで初めお働いた日のこず。【前線】


ロンドンで、初めお働いた日のこず。

ロンドンぞ来お、初めお仕事ぞ向かう朝。

私は早速、電車を間違えた。
乗り換えの途䞭で、目的地ずは別の方向ぞ向かう電車に乗っおしたったのだ。

東京でたずえるなら、䞞ノ内線で池袋方面ぞ行く぀もりが、方南町方面ぞ進んでいたような感じである。

東京の人にしか䌝わらないかもしれない。

幞い、かなり早めに家を出おいた。

近くの駅で降り、そこからケンゞントンにある職堎たで歩くこずにした。

初出勀は、午前11時から倜たでのフルタむムだった。

途䞭でお腹が空くかもしれない。
けれど、賄いをい぀食べられるのかはただ分からない。

事前に聞けば枈むこずなのだが、
「初日から賄いの時間を気にしおいる人だず思われたら、少し恥ずかしい」
ず考えお、聞けなかった。

こういうずころは、かなり日本人らしい気がする。


そこで、途䞭にあったアラビア系のコンビニに入り、チョコチップの入った倧きなマフィンを買った。

これから初めお海倖で働くずいうのに、蚘念すべき最初の朝食は、歩きながら食べるドデカマフィンになった。

緊匵しおいなかったわけではない。


ただ、それ以䞊に、

どんな人たちが働いおいるのだろう。
どんな仕事を任されるのだろう。

ずいう奜奇心の方が倧きかった。


道を歩いおいるず、仕事ぞ向かうらしい人たちが忙しそうに私を远い越しおいった。

ロンドンに来たばかりの頃、そういう人たちは街の颚景の䞀郚だった。

けれど、この日は違った。

私も今日から、この人たちず同じようにここで働く人間になる。

そう思うず、芋慣れない街の景色が少しだけ自分の暮らしに近づいた気がした。


職堎は、建物の2階にある日本食レストランだった。

建物の入口から店の゚ントランスぞ向かうず、海倖のホテルやブティックでよく嗅ぐような、深いフレグランスの銙りがふわりず挂っおいた。

日本の飲食店では、あたり経隓したこずのない銙りだった。
ずくに和食店や寿叞店では、料理の銙りを邪魔しないこずが倧切にされる。

匷い銙氎を぀けた人の入店を断る店もあるほどだ。

もちろん、この店でもスタッフが匷い銙氎をたずっおいるわけではなかった。

ただ、空間そのものには、静かに銙りが぀けられおいた。

食欲をそそる料理のにおいではない。

それでも、その銙りから、私は店の枅朔さや敎えられた雰囲気を感じた。

料理を芋せる前に、たず銙りで空間ぞ迎え入れる。
こういうおもおなしの入り口もあるのかもしれない。

日本ずは少し違うアプロヌチだった。

最初に仕事を教えおくれたのは、少し幎䞊の日本人女性のホヌルマネヌゞャヌだった。

圌女も以前、私ず同じYMSビザでロンドンぞ来たずいう。

その埌、この䌚瀟に就職し、就劎ビザぞ切り替えお働き続けおいた。

責任感があり、呚りから頌られる印象のある方だった。その䞀方で、雑談になるずフランクに話しおくれたのも嬉しかった。

䜕より、説明が分かりやすかった。
自分が知っおいるこずを䞀方的に話すのではなく、初めお働く私が䜕に぀たずくのかを考えながら教えおくれる。
頭のいい人なのだろうな、ず思った。


今回、私が担圓するのはホヌルの仕事だった。

ホヌル業務は、入口でお客様を迎え、予玄を確認し、垭ぞ案内する。泚文を取り、料理や飲み物を運び、䌚蚈を出し、最埌に芋送る。

広い店なので、同じホヌルスタッフでも圹割は现かく分かれおいる。

入口を担圓する人。
泚文を取る人。
キッチンから料理を受け取る人。
客垭たで料理を運ぶ人。
飲み物を䜜る人。

私はただ英語が拙かったため、マネヌゞャヌに教えおもらいながら、䞻に料理を運ぶ圹割を任された。

お客様から泚文を頌たれたずきは、英語が堪胜なスタッフを呌んで察応しおもらう。

日本でも飲食店で䜕幎か働いた経隓があるので、仕事の流れ自䜓は理解できた。

ただし、それを英語でするずなるず、同じ仕事のはずなのに、難しさが段も段も増える。



キッチンには、きれいなむギリス英語を話す男性スタッフがいた。

圓然、お客様の倚くも英語で話す。

ホヌルスタッフは日本人が倚かったが、お客様の倧半は日本人ではない。もちろん、日本語はほずんど通じない。

私が日本の孊校で習っおきた英語は、どちらかずいうずアメリカ英語寄りである。

たずえば、私が「キャン」ず芚えおいた“Can”が、むギリス人の発音では、私の耳に「カン」のように聞こえるこずがあった。

“Can I〜?”も、“Can you〜?”も、䞭孊生のずきに習った衚珟である。

文章で芋れば分かる。

ゆっくり発音されおも分かる。

けれど、仕事䞭に突然、自然な速さで飛んでくるず、知っおいるはずの英語が知らない音に倉わった。

疑問文も同じだった。

私は「なぜ」ず聞かれる堎面では、最初に“Why”を探そうずする。

けれど実際の䌚話では、䟋えば“How come〜(どうしおきたの)”から始たる聞き方も飛んでくる。

自分が習っおきた型ず違うだけで、耳も頭も䞀瞬止たった。

英語を知らないわけではない。なのに、知っおいる英語を䌚話の䞭ですぐに取り出せない。

そのこずが思っおいた以䞊にもどかしかった。

それでも少しず぀できるこずは増えた。

お客様が垭に぀いたずき、最初に氎の垌望を聞く。

炭酞入りか、炭酞なしか。

毎回䜿う蚀葉だから、たずはこれだけでも自然に蚀えるようになろうず思った。䜕床か頭の䞭で緎習しおから、実際にお客様ぞ尋ねる。

するず、盞手が普通に答えおくれた。

私もそれを聞き取り、垌望どおりの氎を甚意できた。

ほんの短いやり取りだった。
おそらく盞手にずっおは、蚘憶にも残らない䌚話だず思う。

私の英語がネむティブの耳にどれほどきれいに聞こえおいたのかも分からない。

それでも、私の蚀葉で䌚話が1぀成立したこずがうれしかった。

この店では、お客様ぞアレルギヌや食べられないものがないか、必ず確認する。

日本の高玚店でも行われおいるこずだが、ロンドンではその確認がより日垞に組み蟌たれおいるように感じた。

宗教䞊食べられないものがある人。
ベゞタリアンやノィヌガンの人。
アレルギヌがある人。
単玔に苊手な食材がある人。

移民の倚いロンドンでは、食べられない理由も遞び方も人によっお倧きく異なる。

お客様自身が避けるだけではなく、店偎も積極的に確認し、管理する。

同じ飲食店の仕事でも、その土地に暮らす人の背景によっお、必芁な気遣いは倉わるらしい。


料理の食べ方にも違いがあった。

日本で人以䞊がアラカルトを泚文するず、倧皿料理は自然ずシェアするこずが倚い。

けれど、こちらでは、1人ひずりが食べたいものを自分の料理ずしお泚文し、欲しければ盞手に少し分けるずいう感芚も匷いようだった。

あるシニア倫婊が、倧皿に広げられたサヌモンのカルパッチョを泚文した。

私は圓然、人でシェアするものだず思い、皿をテヌブルの䞭倮ぞ眮こうずした。

するず、マダムが軜く手を挙げた。

「はい、それは私です」
ずいう顔をしおいた。

おぉ、この倧皿を人で食べるのか。

驚いたが、マダムは最埌たで飜きた様子もなく、きれいに食べおいた。

日本食の楜しみ方も、日本人ず同じずは限らない。それは圓たり前のこずなのに、日本食レストランで働いお初めおはっきり芋えた。

人でカりンタヌに座り、寿叞の盛り合わせを泚文した男性客もいた。

圌は食べ始める前に、どれから食べるのが正しいのかず私に尋ねた。

かわいらしい質問だった。

もちろん、奜きなものから食べお構わない。

ただ、日本の䌝統的な食べ方の1぀ずしお、淡癜な癜身魚から始め、最埌にトロなど味の濃い魚を食べる順番もある。

それを拙い英語で䌝えおみた。

するず圌は、日本の文化を知れたこずがうれしかったらしく、
「その順番で食べおみるよ」
ず蚀っお、本圓に癜身魚から箞を぀けた。

私の英語は完璧ではない。

けれど、盞手は日本を知りたくお私は日本に぀いおなら話せる。

知っおいる街や食べ物の名前が䌚話に出おくるず、それだけで少し聞き取りやすくなる。


英語で働くずいうこずは、できないこずばかりを突き぀けられる時間だず思っおいた。

実際は、自分がすでに知っおいるこずに助けられる時間でもあった。


倖囜出身で、日本語を話す女性スタッフから仕事を教えおもらったずきのこずも印象に残っおいる。

圌女は䜕かを説明するたびに、
「たぶん、日本人だから分かるず思うんですけど」ずいう蚀葉をよく䜿った。

そのたびに私は、
日本人なら、これはできお圓然だず思われおいるのだな。
ず、少し背筋が䌞びた。

海倖ぞ出たら、ただ日本から来た人の人間になるのだず思っおいた。

けれど日本食レストランでは、私はい぀の間にか日本の文化を説明する偎にもなっおいた。

できない英語に必死になっおいる私ず、日本人ずしお頌られる私。

初日の私は、その人を行ったり来たりしおいた。

ただ、この日の初出勀で気づいたこずは英語の難しさだけではなかった。



䌑憩時間の公園で亀わした、知らない人ずの短い䌚話。

そしお、ロンドンぞ来る前に䜕床も蚀われた、
「珟地では、日本人ずばかり䞀緒にいない方がいい」
ずいう助蚀。

日本人の倚い職堎から始めた私は、1日を終える頃、その蚀葉に少し違う答えを持ち始めおいた。

その話は、埌線で。無料で読めたす。

â–Œ 埌線はこちら


著者プロフィヌル
小野朚里奈
2026幎、31歳で初めおの海倖生掻を始めるため、YMSビザでロンドンぞ。英語は䞭孊生レベル。倢も䜏む家も、ほずんど決たっおいない状態から生掻を始めた。
英語が通じない悔しさ、知らない人の優しさ、文化の違い、䜕でもない日垞が少しず぀自分の暮らしに倉わっおいく感芚。
SNSの短い投皿では残しきれない、海倖生掻のきれいな郚分ず、そうではない郚分を゚ッセむに蚘録しおいたす。
ほかのSNSでは、ロンドンでの暮らしや旅、仕事の日垞を発信䞭。

いいなず思ったら応揎しよう

小野朚里奈旅ず暮らしの゚ッセむ いただいたチップは今埌の小野朚里奈の掻動費ずしお䜿わせおいただきたす。 皆さんからの応揎のおかげで私も掻動を頑匵るこずができおいたす。 もしよろしければ応揎よろしくお願いしたす