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妻は注意しなかった。娘は工程を改善した。

妻が洗濯物を干していると、娘が言った。

「ママ、お洗濯反対に干してるよ?」

服が裏返しのまま干されていた。

妻は、それを分かったうえで、そのまま干していた。

「〇〇ちゃんが脱ぐときに裏返しになってるから、そのまま干してるんだよ。別に裏返しでも干せるから大丈夫」

「ふーん」

会話は、それで終わった。

妻は怒っていない。

「次からちゃんと表に戻してね」とも言っていない。

娘も、注意されたとは思っていない様子だった。

ただ、自分が裏返しに脱いだ服は、裏返しのまま干される。

その仕組みを説明しただけだった。

翌日、妻が娘をお風呂に入れていると、娘は脱いだ服を一枚ずつ確認していた。

そして、裏返しになったものだけ自分で表に戻してから、洗濯かごへ入れた。

誰にも言われていない。

前日の「ふーん」は、話を聞き流した音ではなかったらしい。

おそらく娘は、服が裏返しのまま干されている状態が嫌だったのだと思う。

娘は、ハンカチをできるだけきれいに畳みたい。

物を並べるときも、曲がっているより、まっすぐ並んでいる方がいい。

服にも、正しい向きで干されていてほしかったのだろう。

ただ、面白いのはそこではない。

娘は妻に、

「反対に干さないで」

とは頼まなかった。

干すときに直してもらうのではなく、そもそも裏返しの服が洗濯かごへ入らないようにした。

発生した問題を直すのではなく、問題が発生する前の工程を変えたのである。

私は仕事で何か問題が起きると、その場所だけを直すより先に、なぜその状態になったのかを考える。

最後に見つかった不具合も、原因は一つ前の工程にあるかもしれない。

その場で元に戻すだけでは、同じことがまた起きる。

だから、できるだけ上流へ戻って原因を潰したくなる。

娘が服を表に戻していると聞いて、思った。

私と同じではないか。

仕組みを聞いた翌日には、もう自分で工程を変更している。

再発防止までが早い。

まだ三歳なのに、末恐ろしい。

主に、同じ思考回路を持つ人間が家庭内に二人いる妻にとって。

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