芋出し画像

「もう䞀泊しおいけば」あの倏、垰りたくなかった家

垰る日の朝だけ、
どうしおあんなに静かだったんだろう。

昚日たで䜕ずも思わなかった郚屋。

柱時蚈。

少し色あせたカレンダヌ。

座垃団。

障子。

廊䞋の端に眮かれた新聞。

党郚い぀もず同じなのに、

「今日、垰るんだ」

ず思った途端、
急によそよそしく芋えた。

倏䌑み。

䜕日か泊たった、
おじいちゃん、おばあちゃんの家。

垰り支床をしおいる倧人たちの暪で、

子どもの自分だけが、

「ただ垰りたくないなぁ  」

ず思っおいた。

「着いたよ」の䞀蚀で始たった倏

車を降りるず、
玄関が開く。

「よう来たねぇ」

その声を聞くだけで、

「あぁ、倏䌑みが始たった」

ず思った。

玄関には自分の家にはない匂いがした。

叀い朚の匂い。

畳の匂い。

台所から挂っおくる、
䜕かを煮おいる匂い。

決しおおしゃれな家ではなかった。

むしろ、

「なんでこんな物たで取っおあるの」

ず思うくらい、
いろんな物が眮いおあった。

い぀からあるのかわからない眮物。

䜕幎も同じ堎所にある箱。

誰が䜿っおいるのかわからない孫の手。

匕き出しを開ければ、
茪ゎムや也電池や叀いボヌルペン。

それなのに、

あの家には劙な安心感があった。

䜕をしなくおも、
そこにいおいい。

そんな空気があった。

なぜか早起きしおしたう

普段なら、

「起きなさい」

ず蚀われおも起きないのに、

泊たりに行った朝だけは、
劙に早く目が芚めた。

ただ家の䞭は薄暗い。

倧人たちは起きおいる。

台所から、

トントントン  

包䞁の音。

カチャカチャ  

食噚の音。

テレビからは、
小さな音で朝のニュヌス。

寝がけたたた居間ぞ行くず、

「もう起きたの」

そう蚀われる。

そしお、

「ただ寝ずっおいいのに」

ず蚀われながら、
結局そこに座る。

テヌブルの䞊には、
昚日買っおもらったお菓子が残っおいる。

食べようずするず、

「朝ごはん食べれんくなるよ」

ず止められる。

自分の家でも䌌たようなこずを蚀われおいるのに、

なぜかここでは、
怒られおいる感じがしなかった。

倧人の話は、意味がわからなかった

昌になるず、
芪戚が集たるこずもあった。

倧人たちは、
ずっず話をしおいる。

誰々がどうした。

あそこの家がどうした。

昔の誰々はこうだった。

子どもには、
たったく興味がない。

名前を聞いおも、
誰のこずかわからない。

だから途䞭で抜け出す。

別の郚屋ぞ行ったり、

庭をうろうろしたり、

抌し入れを開けおみたり。

昔のアルバムを芋぀けるこずもあった。

「これ誰」

ず聞くず、

「お父さんだよ」

「えっ!?」

そこには、

自分ず同じくらいの幎霢の父芪が写っおいた。

倧人にも、
子どもの頃があった。

圓たり前のこずなのに、
あの頃は䞍思議だった。

ずっず父芪だったわけじゃない。

ずっず母芪だったわけじゃない。

おじいちゃんも、
おばあちゃんも、

昔は若かった。

そんなこずを、
叀い写真が教えおくれた。

冷蔵庫には「い぀の」ずいう物があった

おばあちゃんの家の冷蔵庫は、
ちょっずした探怜堎所だった。

飲み物を取ろうずしお開けるず、

タッパヌ。

タッパヌ。

さらにタッパヌ。

「これ䜕」

「昚日の煮物」

「これは」

「挬物」

「じゃあ、これは」

「  なんだったかな」

おばあちゃん本人がわからない。

子ども心に、

「倧䞈倫か、この冷蔵庫  」

ず思ったものです。

でも䞍思議なこずに、

「これ食べる」

ず出しおくれる果物は、
い぀もおいしかった。

桃。

ぶどう。

スむカ。

梚。

「もういらない」

ず蚀っおいるのに、

「もう䞀個食べな」

なぜか増える。

断ったはずなのに、
皿の䞊から食べ物がなくならない。

あれはきっず、

祖父母の家だけに存圚する、
謎の氞久機関だったんでしょう。

倜になるず、家が少しだけ怖くなった

昌間は平気だった廊䞋が、
倜になるず急に怖くなる。

トむレたで遠い。

しかも暗い。

「䞀人で行ける」

なんお蚀ったくせに、

廊䞋の途䞭から、
ちょっず早足になる。

甚を枈たせたら、

垰りはもっず速い。

䜕かが埌ろから来る気がする。

振り返りたい。

でも、

振り返ったら䜕かいそうだから、
絶察に振り返らない。

垃団たで戻っおしたえば無敵だった。

倧人たちはただ起きおいお、
隣の郚屋から笑い声が聞こえる。

䜕を話しおいるのかはわからない。

でも、

その声が聞こえおいるだけで安心した。

そしお気づけば眠っおいた。

垰る日は、突然やっおきた

あれだけ長く感じおいたのに、

「明日垰るよ」

ず蚀われるず、

「もう」

ず思った。

もっずいたかった。

特別な堎所ぞ連れお行っおもらったわけでもない。

豪華な旅行でもない。

毎日、

食べお、

遊んで、

ゎロゎロしお、

怒られお、

笑っお、

眠っただけ。

なのに、

垰りたくなかった。

垰る日の朝。

垃団が片付けられる。

荷物がたずめられる。

忘れ物がないか確認される。

玄関に靎が䞊ぶ。

そしお決たっお、

「これ持っおいきな」

ず袋を枡される。

野菜。

果物。

お菓子。

なぜか倧量の食べ物。

芪が、

「こんなにいらないよ」

ず蚀っおも、

「いいから持っおきな」

ず抌し蟌たれる。

今思えば、

あれは食べ物を枡しおいたんじゃないのかもしれない。

「たた元気でね」

「ちゃんず食べるんだよ」

「たたおいで」

蚀葉にする代わりに、

袋いっぱいに詰めおくれおいたんだず思う。

「もう䞀泊しおいけば」

垰ろうずするず、

そんなこずを蚀われた。

子どもの自分は、
本気で期埅する。

「えっ、泊たっおいいの!?」

でも芪は、

「明日から予定あるから」

なんお答える。

心の䞭では、

予定なんおなくなればいいのに  

ず思っおいた。

車に乗る。

窓を開ける。

「バむバヌむ」

家が少しず぀遠くなる。

おじいちゃんずおばあちゃんは、
ただ立っおいる。

曲がり角を曲がる盎前たで、
手を振っおいる。

自分も手を振る。

姿が芋えなくなる。

そこでようやく前を向く。

しばらくするず、

さっきたでいた家が、
もうずっず遠い堎所のように感じた。

倧人になっお、わかったこず

子どもの頃は、

倏䌑みだから楜しいんだず思っおいた。

でも違ったのかもしれない。

あの堎所には、

自分が䜕者であっおも関係なく、

「来おくれお嬉しい」

ず思っおくれる人がいた。

勉匷ができるずか。

仕事ができるずか。

お金を持っおいるずか。

立掟だずか。

そんなものは、
ひず぀も必芁なかった。

玄関を開ければ、

「よう来たね」

垰ろうずすれば、

「もう䞀泊しおいけば」

それだけ。

倧人になればなるほど、

条件なしに自分の存圚を喜んでくれる堎所は、
実はずおも貎重だったのだず気づく。

今では、味わえなくなった倏

あの家が、
今も残っおいる人もいるでしょう。

もうなくなっおしたった人もいるでしょう。

おじいちゃんやおばあちゃんが、
今も元気な人もいれば、

思い出の䞭でしか䌚えない人もいる。

町䞊みも倉わった。

道路も倉わった。

家も建お替えられた。

自分自身も、
すっかり倧人になった。

昔ずたったく同じ倏は、
もう二床ずやっおこない。

でも䞍思議です。

ふずした瞬間に、
あの家のこずを思い出す。

叀い畳の匂い。

台所から聞こえる包䞁の音。

少し倧きすぎるテレビの音。

倜の暗い廊䞋。

食べきれないほど出された果物。

垰り際に持たされた、
重たい袋。

そしお、

「たたおいで」

ずいう声。

蚘憶ずいうものは、

倧きな出来事より、
こんな䜕でもないものを残しおいる。

あなたにも「垰れる倏」がありたせんでしたか

毎日いろんなこずを考えお、

仕事をしお、

家のこずをしお、

誰かのために動いお、

知らないうちに心が疲れおしたう。

そんなずきくらい、

昔の倏ぞ垰っおみおもいいず思うんです。

もちろん、
本圓に戻るこずはできたせん。

でも目を閉じれば、

蚘憶の䞭の玄関は、
今でも開く。

「よう来たね」

そう蚀っおくれる声がする。

昔の自分が、
靎を脱いで走っおいく。

倧䞈倫。

少しくらい䌑んでいきなよ。

急いで倧人に戻らなくおもいい。

心の䞭なら、

もう䞀泊したっおいいんです。

あの日は蚀えなかったけれど、

今なら蚀える気がしたす。

もう䞀泊どころか、

できるこずなら、

あの倏にもう䞀床だけ泊たりたい。

䜕か特別なこずがしたいわけじゃない。

ただ朝になったら、

台所から聞こえる音で目を芚たしお、

「もう起きたの」

そう蚀っおもらいたい。

それだけでいい。

それだけで、

きっず心は少し軜くなる。

🌻最埌に

あなたには、

「もう䞀床だけ垰っおみたい倏」

がありたすか

祖父母の家かもしれない。

昔䜏んでいた町かもしれない。

芪戚が集たった倏かもしれない。

もう䌚えない誰かず過ごした倏かもしれたせん。

よかったら、
あなたの蚘憶に残っおいる「倏の堎所」をコメントで教えおください。

忘れおいた景色を蚀葉にしおみるず、

昔の自分から、

「そんなに頑匵らなくおも倧䞈倫だよ」

ず声をかけおもらえるこずがありたす。

今幎の倏。

忙しい毎日の途䞭で、
ほんの少しだけ昔ぞ垰っおみたせんか。

心の䞭のあの家では、

きっず今でも、

あなたのための座垃団がひず぀、

ちゃんず空けおありたすから。

いいなず思ったら応揎しよう

ひら🎈 🌟ぜひ応揎お願いしたす🌟 もっずがんばりたす(àž‡ •̀_•́)àž‡