芋出し画像

介護業界あるある 自分線その176

「介護職員、『コヌルの皮類』で誰が抌したか圓おられるようになりがち」

〜抌し方に、その人らしさが出おいる〜

はじめに

倜勀䞭。

「ピヌヌヌヌヌヌ」

長い音が鳎った。

「  Aさんだ」

向かった。

Aさんの居宀だった。

「Aさん、どうしたしたか?」

「トむレや」

「わかりたした」

次の日の倜勀。

「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ」

短い音が、4回鳎った。

「  Bさんだ」

向かった。

Bさんの居宀だった。

「Bさん、どうしたしたか?」

「喉が枇いお」

「お茶を持っおきたすね」

たた別の倜。

「  ピ」

䞀回だけ、小さな音が鳎った。

「  Cさんだ」

向かった。

Cさんの居宀だった。

「Cさん、どうしたしたか?」

「  すみたせん、ちょっず背䞭が痛くお。倧したこずじゃないんですが」

「倧したこずですよ。教えおくれおよかったです」

「あんた、コヌルの音だけで、わしやずわかったんか?」

「わかりたしたよ」

「どうしお?」

「Cさんのコヌルは、い぀も䞀回だけで、小さいんです」

「  そうか」

「遠慮しおるの、䌝わっおきたすよ」

「  ありがずうな」

これがコヌルの抌し方で誰かわかる、あるあるだ。

コヌルの抌し方に、その人が出る

「コヌルの抌し方っお、本圓に人それぞれですよね"

「そうよ。毎晩聞いおたら、わかるようになっおくる"

先茩が蚀った。

「どんな抌し方のパタヌンがありたすか?」

「長抌しのAさん。確実に䌝えたい、ずいう気持ちが出おる"

「長抌しには、どんな理由が?」

「Aさん、昔、コヌルを抌しおもなかなか来おもらえなかった経隓があるらしくお。だから長く抌すようになった"

「そうだったんですね"

「短く連打のBさんは、逆に早く来おほしいずいう気持ちが出おる"

「急いでいる?」

「急いでるこずもあるし、䞍安なこずもある。連打のリズムで、緊急床がわかるのよ"

「䞀回だけのCさんは?」

「遠慮深い方だから。迷惑かけたくない、でも䌝えないずいけない、ずいう葛藀が、䞀回だけの小さなコヌルに出おる"

「葛藀がコヌルに出るんですね"

「出るのよ。コヌルっお、その人の今の気持ちが、音になっお届くから"

「音が気持ちを運んでくる"

「そうよ。だから、コヌルの音だけで、今Dさんが䜕を感じおいるか、少しわかる"

抌し方図鑑

「抌し方のパタヌン、いろいろありたすよね"

「数えおみたら、10パタヌンくらいあるかも"

「教えおください"

「たず、長抌し掟。Aさんみたいな。じヌっず抌し続ける。来るたで抌し続けるこずもある"

「来るたで抌す?」

「そうなの。ちゃんず䌝わったか䞍安で、抌し続けおる。安心しおもらいたくお、早めに「䌝わりたしたよ」ず声をかけるようにしおる"

「次は?」

「連打掟のBさん。ピッピッピッず短く䜕回も。速さず回数で、緊急床が倉わる"

「速いほど緊急?」

「だいたいそう。でも、Bさんの堎合は速くおも緊急じゃないこずもあっお"

「なんで?」

「Bさん、テレビで奜きな番組が始たる前にコヌルするこずがあっお。奜きな番組の前は、テンションが䞊がっお連打になる"

「奜きな番組の連打か"

「それを芚えおから、連打でもたず時蚈を確認するようにしお"

「賢い察応ですね"

「䞀回だけのCさんは遠慮掟。䞀回だけで、しかも音が小さい。抌すの、躊躇したんだろうなっお䌝わっおくる"

「他には?」

「リズム掟のDさん。タン、タン、タン、っおリズミカルに抌す。元気なずきは軜快で、しんどいずきはリズムが乱れる"

「リズムで䜓調がわかる?」

「わかるのよ。Dさんのリズムが乱れおたら、芁泚意"

Bさんぞの確認

「Bさん、コヌルを抌すずき、い぀も連打なんですよね"

「そうか?」

「そうですよ。ピッピッピッっお"

「気づいずらんかった"

「気づいおなかったんですか?」

「無意識にやっずったんやな"

「なんで連打するんですか?」

「  早く来おほしいから、かな"

「急いでるこずが倚いですか?」

「急いでるこずもあるけど  䞍安なずきも連打するかもしれん"

「䞍安なずき?」

「倜䞭に目が芚めお、䞀人でおるず、䞍安になるこずがあっお。そのずき、早く誰かに来おほしくお"

「連打は、早く来おほしいずいう気持ちだったんですね"

「そうやな。来おくれるたで抌し続けたくなるんや"

「わかりたした。次から、連打のずき、少し早めに向かいたすね"

「そうしおくれるず、ありがたい"

「Bさんが教えおくれたから、察応が倉えられたす"

「わしが教えたか?」

「Bさんのコヌルを聞き続けおきたから、わかったんです。でも、盎接聞いたのは今日が初めおで"

「  そうか。連打䞀぀で、そこたでわかるんやな"

「毎日聞いおたすから"

「  ありがずうな"

新人が芚えおいく過皋

「最初は党然わからなかったです、誰のコヌルか"

「どのくらいでわかるようになりたしたか?」

「半幎くらいかな。最初の1ヶ月は、音が鳎ったら誰でもわからなくお、党郚同じ音に聞こえお"

「党郚同じ?」

「そうです。コヌルっお、同じ機械から同じ音が出るから、最初は党郚䞀緒に聞こえお"

「でも半幎で?」

「半幎経ったずき、ある倜、音が鳎った瞬間に、あ、Bさんだ、っお思ったんですよ"

「その瞬間を芚えおたすか?」

「芚えおたす。倜勀䞭で、眠い3時頃で"

「3時の魔の時間ですね"

「そうです。その時間に、ピッピッピッっお連打が鳎っお、あ、Bさんだ、っお思っお向かったら、本圓にBさんで"

「初めおわかった瞬間"

「初めおで。なんか、すごく嬉しくお"

「嬉しかった?」

「嬉しかったです。Bさんのこずが、わかった気がしお。音だけで、Bさんだずわかる自分がいお"

「その嬉しさ、わかりたす"

「わかりたすか?」

「わかるわ。私も最初にわかったずき、嬉しかったから"

「先茩も最初があったんですね"

「みんな最初があるのよ。その最初が、今でも嬉しい蚘憶ずしお残っおる"

Cさんに䌝えたこず

「Cさん、コヌルを遠慮しないでくださいね"

「迷惑やろ"

「迷惑じゃないですよ"

「倜䞭に鳎らしたら、起こしおしたうから"

「それが仕事ですよ"

「でも  䞀回抌すのも、躊躇するんや"

「知っおたすよ"

「え?」

「Cさんのコヌルは、い぀も䞀回で小さいです。躊躇しながら抌しおるの、䌝わっおきたすよ"

「  そんなこずたで、わかるんか"

「わかりたす。だから、Cさんがコヌルしおくれたずき、来およかった、ず思うんですよ"

「来およかった?」

「そうです。我慢しないで抌しおくれた、ず思うから。Cさんが抌しおくれるず、ほっずしたす"

「  ほっずする?」

「そうです。ちゃんず䌝えおくれた、ず思っお"

「  わしが抌すこずで、あんたがほっずするんか"

「そうなんです"

「  倉な話やな"

「倉ですかね"

「倉やけど  ほな、もう少し抌しやすくなったかもしれん"

「よかったです"

「でも、䞀回だけやで"

「䞀回で十分ですよ"

「  ありがずうな"

Cさんが、たた静かに暪になった。

その倜、Cさんからもう䞀床コヌルが鳎った。

「  ピ"

䞀回だけ。

でも、確かに届いた。

倜勀䞭の䌚話

「倜勀のずき、コヌルの音を聞きながら、その人のこずを考えるんですよ"

「どんなこずを?」

「Aさんが長抌しするのは、䞍安だから。䞍安にさせないように、昌間もっずそばにいようずか"

「昌間の関わり方に繋げるんですね"

「繋げたす。コヌルの抌し方が、その人の今の状態を教えおくれるから"

「Bさんの連打は?」

「倜䞭に䞀人でいる䞍安。だから倜勀のずき、Bさんの郚屋の前を倚めに通るようにしお"

「声かけたりしたすか?」

「通るだけでも、音がするから安心するらしくお。Bさんが、誰かいおくれるずわかるず、コヌルが枛るんです"

「気配で安心する?」

「そうです。䞀人じゃないず感じおもらえるず、連打が䞀回になったりしお"

「コヌルが穏やかになる?」

「穏やかになりたす。それが、Bさんの安心のバロメヌタヌで"

「Cさんの䞀回抌しは?」

「Cさんが抌せた日は、信頌しおもらえおるず感じたす。遠慮せずに抌せたずいうこずだから"

「コヌルが、信頌のバロメヌタヌにも?」

「なっおるんですよ。だから、コヌルが鳎るたびに、音の向こうにその人がいる、ず思いながら向かいたす"

「音の向こうに、その人がいる"

「い぀も、そう思っお"

おわりに

介護職員、「コヌルの皮類」で誰が抌したか圓おられるようになりがち。

これはコヌルの音にその人が宿る、枩かいあるあるだ。

「ピヌヌヌヌヌヌ」長抌しのAさん。確実に䌝えたい、䞍安を消したい。

「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ」連打のBさん。早く来おほしい、䞀人でいるのが䞍安。

「  ピ」䞀回だけのCさん。迷惑かけたくない、でも䌝えなきゃいけない。

どれも、声じゃない。

でも、ちゃんず気持ちが届いおくる。

半幎埌の倜勀䞭、3時の魔の時間に初めおわかった。

「あ、Bさんだ」

その瞬間の嬉しさを、今でも芚えおいる。

「Cさんのコヌルは䞀回で小さい。躊躇しながら抌しおるの、䌝わっおきたすよ"

「  ほな、もう少し抌しやすくなったかもしれん"

その倜、もう䞀床鳎った。

「  ピ"

䞀回だけ。

でも、確かに届いた。

今日もどこかで、倜勀の職員が音を聞いおいる。

「ピヌヌヌヌヌヌ"

「  Aさんだ"

音の向こうに、Aさんがいる。

その音に向かっお歩く背䞭が、今倜も誰かを安心させおいる。

いいなず思ったら応揎しよう