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透明化される「マスキュリサイド」(男殺し)

8月5日、金沢市で60代の女が見ず知らずの50代の男性をナイフで刺す事件が起きた[1]。しかし、この事件は小さなローカルニュースとして取り上げられただけだった。

翌日6日に、世田谷区内を走行していた小田急線の電車内で30代の男が男女5人ずつ計10人を襲い、4人を切りつける事件が起きた[2]。最も執拗に狙われたのは20代の女性であった。この事件は大々的に報道され、注目されることとなった。人数の多さよりは、被害者が若い女性であったことが騒がれる原因であった。この事件は「フェミサイド」(女殺し)であるとして騒がれた。(被害者は存命であるにも関わらず。)

小田急線の事件が大騒ぎになり、人々の怒りが世の中を飲み込むほどに、金沢の事件は些細な事件として風化していく。20代の女性に比べて、50代の男性は「まだしも刺してもいい」存在として社会的に規定されていく。「女殺し」への怒りが世の中を覆うことで、「マスキュリサイド」(男殺し)は透明化されていく。

事実、この国において、男性は女性よりも犯罪の被害に遭いやすい。犯罪被害者の約7割は男性であり、殺人・暴行・傷害等の事件の被害者は約6割が男性である[3]。

犯罪被害者の性別

それにも関わらず、「女性が襲われる」ことばかりがクローズアップされる。この社会では、女性の命の方が男性の命よりも重く見られているからだ。

60代の女が50代の男性を刺しても、30代の男が20代の女性を刺しても、全く同じように悪い。ところが、この社会ではそう主張することが、つまり「命の重さは性別によらず平等だ」と主張することが、「女性の命を軽んじている」と非難の対象になる。

「女性の命は男性の命よりも重い」と言わないと許されない世の中になってしまっている。これを乗り越えなければ、ジェンダー平等は永遠にもたらされない。

[1] エムザ、男性刺される 金沢、殺人未遂容疑68歳女逮捕(北國新聞社) - Yahoo!ニュース

[2] 小田急線刺傷 容疑者、女子大学生に複数回切りつけ 追いかけ襲ったか(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

[3] 平成28年版 犯罪被害者白書 - 警察庁 14.罪種別 被害者の年齢・性別 認知件数(平成26年)による。男の数は男女の計から「うち)女」を引いた数。

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