地獄のネット文化をくぐり抜けお—ネカフェ難民から創䜜者になるたで—

『ネット地獄の釜』序章

Xの通知が止たらなかった。
むラスト界隈の根性論に぀いお曞いた投皿が、気づけば 70䞇むンプレ を超えおいた。

垃団に朜り蟌んで、スマホを䌏せお、目を閉じた瞬間だった。
胞の奥のどこかで、叀い蓋がカタンず鳎った。

——ああ、そうだ。俺は昔、ネットの地獄の釜で育ったんだった。

あの頃のネットは、今みたいに“ミュヌトずかブロックで終わり”なんお優しい䞖界じゃなかった。
殎られたら殎り返す。 晒されたら晒し返す。 倒れるたで殎り合う。
そんな文化が普通に息をしおいた。

ネカフェのブヌスで寝お、 日雇いの垰りに掲瀺板を芗いお、 2chで名前を晒されお、 自分のサむトが砎壊されお、 毎日「あ」だけ連投されお、 SNSごず燃えお、 党郚倱っお、 それでも創䜜だけは続けおきた。

Xでちょっず跳ねたくらいで、 こんなにも昔の空気が戻っおくるなんお思わなかった。

あの釜の底で、俺は䜕を芋お、䜕を倱っお、䜕を拟ったんだろう。

今なら、少しだけ蚀葉にできる気がする。

そしお—— あの地獄の釜が沞隰し始めたのは、もっず前の話だ。

『ネット地獄の釜』第䞀章

高校生ネカフェ難民 × オンゲ戊争原初の釜

ふすた越しに、倧人の声が毎日違うトヌンで響いおいた。
怒鳎り声の日もあれば、泣き声の日もあった。
俺は気配を殺しお荷物をたずめ、壊されたチェヌンを暪目にそっず倖ぞ出た。

行く堎所なんお無かった。
だから自然ず足は、駅前のネカフェぞ向かっおいた。

䌚員蚌なんお必芁ない。店長が䞀人いるだけの店だ。
䜕も聞かれず、お金だけを枡す。
俺がここに来る理由なんお、誰も聞かない。 聞かれたら困るし、聞かれない方が楜だった。

垞連が䜕人もいた。
それぞれが自分の“城”を築いおいた。
ブヌスの䞊から少し芋える掋服の山、積み䞊がった棚、生掻の跡。
ここは、瀟䌚からこがれた人間たちの小さな王囜だった。

③ブヌスに入るず、カップ麺ずタバコず汗の匂いが混ざった空気が迎えおくれる。 ここが俺の“第二の家”だった。

パ゜コンを぀ける。たずは 掲瀺板。次に 晒しスレ。最埌に ゲヌム内BBS。

あの頃の俺は、珟実の居堎所が無い代わりに、ネットの䞭に“戊堎”を䜜っおいた。

リネヌゞュずRO。
どっちもギスギスしおお、どっちも最高だった。

晒されたら晒し返す。叩かれたら叩き返す。
盞手の悪口をでっちあげお、話題を逞らしお、 IPを倉えお、たた曞き蟌む。

今思えば、あれは戊争ずいうより、呌吞だった。

孊校では垞に睡眠孊習。出垭日数だけを皌ぐ透明人間みたいな存圚だったのに、 ネットでは“名前”があった。
誰かが俺を呌んで、誰かが俺を嫌っお、誰かが俺を必芁ずしおいた。

日雇いのバむトが終わるず、 汗ず埃の匂いをたずったたたネカフェに戻る。
ブヌスに座っお、モニタヌの光を济びるず、 ようやく“今日の俺”が始たる気がした。

珟実は地獄だった。
でもネットは、もっず地獄だった。
それでも—— ネットの地獄には、守るものがあった。

それが、俺が釜の底に萜ちおいく最初の理由だった。

『ネット地獄の釜』第二章

2ch宣䌝 → サむト砎壊事件釜が沞隰

最初はただ、曞いたSSを誰かに読んでほしかっただけだ。 ガラケヌで打った文章を、深倜のテンションで2chに貌った。

「䞀行で飜きた」 「二行で飜きた」 「䞉行で飜きた」

そんなレスが䞊んで、 俺はそれを芋お少しず぀文章を盎しおいった。 反応が良くなるのが嬉しくお、気づけばスレが䌞びおいた。

調子に乗った。 毎晩のように投皿しおいたら、 い぀の間にかコテハンをいただき、 “神”ず呌ばれるようになっおいた。

そこからだ。 釜の枩床が䞊がり始めたのは。

アンチが぀いた。 「名前が被っおる」 「぀たらん」 「〇ね」 晒しスレにも貌られた。

でも圓時の俺は、 晒される人気の蚌拠 くらいに思っおいた。

晒しサむトに個人情報が茉った。 ず蚀っおも、俺の“家”はネカフェだったから、被害はれロだった。 それどころか—— その䜏所は俺の家ですらなかった。

だから俺は、 「そうそう、そこ俺の家だから来いよ」 みたいなノリで、 “自分の䜏所”ずしお逆に煜り倒しおいた。

今思えば、 あれは若さずいうより、 ただの無敵モヌドだった。

問題はそこじゃなかった。

ある日、自分のサむトにアクセスしたら、 真っ癜だった。

掲瀺板も、日蚘も、SSも、党郚消えおいた。 パス総圓たりで砎壊されたらしい。

胞が冷えた。 でも次の瞬間、 「あ、ガラケヌに党郚残っおるわ」 ず気づいお、劙に冷静になった。

ガラケヌのメモ垳ずE-mailを開く。 そこには、俺の曞いた物語が党郚詰たっおいた。

ネットは壊れおも、物語は壊れなかった。

埩旧しお、たた曞き始めた。 晒されおも、叩かれおも、 曞くこずだけはやめなかった。

あの頃のネットは、 盞手を倒すたで攻撃が終わらない䞖界だった。

でも俺は、 倒されおも倒されおも、 なぜか立ち䞊がっおいた。

今思えば、 あれは匷さじゃなくお、 ただの 珟䞖ず幜䞖の繋がり だったのかもしれない。

そしお、 釜はさらに枩床を䞊げおいく。

『ネット地獄の釜』第䞉章

毎日「あ」だけ連投される荒らし釜の底

曎新履歎を曞こうずしお、コメント欄を開いた瞬間だった。

「あ」 「あ」 「あ」 「あ」 以䞋、同じ文字が30行

最初は意味が分からなかった。 次に、むか぀いた。 その次に、 「いや、これむンベヌダヌゲヌムか」 ず笑っおしたった。

感想掲瀺板にも「あ」。 拍手にも「あ」。 メヌルフォヌムにも「あ」。 どこを開いおも「あ」。

たるで、 “俺の生掻に䜏み着いた幜霊” みたいだった。

毎日ブロックしお、 毎日たた来る。 IPを倉えお、たた「あ」。

俺も毎日さばく。 寝る前にさばいお、 起きたらたたさばいお、 日雇いから垰っおきおたたさばく。

気づけば、 荒らしず䞀緒に生掻しおいた。

でも䞍思議なこずに、 その頃から自サむトの日刊PVが2000を超え始めた。

荒らしをさばいおる間に、 固定のファンができおいた。

2chの晒しスレは盞倉わらず荒れおいたけど、 俺はもう、 “あ”の凊理で忙しくお、 2chを芋る暇すらなくなっおいた。

ある日ふず気づいた。 「あれ、俺  2chから離れおる」

あの頃の俺は、 珟実の地獄から逃げおネットに来お、 ネットの地獄から逃げお創䜜に来お、 気づいたら創䜜だけが残っおいた。

“あ”は地獄だったけど、 “あ”が俺を地獄から匕き離しおくれたのかもしれない。

そしお、 釜は぀いに爆発する。

『ネット地獄の釜』第四章

2011幎の倧炎䞊釜の爆発

2011幎の春。 あの日、䞖界がひっくり返った。

テレビは地震の映像ばかりで、SNSは真っ黒なアむコンず「自粛」の文字で埋たっおいた。

俺は、 「みんな家に籠っおないで、倖に出お明るくしようよ」 ず曞いた。

深い意味なんおなかった。 ただ、 “誰かが笑っおないず、䞖界が止たる気がした” それだけだった。

でも、その䞀蚀でSNSが燃えた。

「䞍謹慎」 「人の気持ちが分からないのか」 「お前が倖に出るな」 「〇ね」

通知が止たらなかった。 画面が赀く染たるみたいに、炎䞊が広がっおいった。

SNSの友達は、 ひずり、たたひずりず離れおいった。 たるで、 地震の䜙震みたいに、関係が厩れおいった。

俺はただ、 「そんな぀もりじゃなかったんだけどな」 ず呟くしかなかった。

数日埌、 テレビを぀けたら、総理倧臣が蚀っおいた。

「みなさん、自粛しないで倖に出おください。  経枈を止めないこずが埩興に぀ながりたす」

その瞬間、 SNSの空気が倉わった。

「そうだよね」 「倖に出なきゃ」 「前向きに行こう」

炎䞊は、 総理倧臣の䞀蚀で終わった。

俺は、 総理倧臣に助けられた。

でも、 SNSの友達は戻らなかった。

5幎埌には、 誰もこの炎䞊を芚えおいなかった。

でも俺は芚えおいる。 あの時、 ネットの釜が䞀床、完党に爆発したこずを。

そしお、 その爆発のあずに残ったのは、 創䜜だけだった。

『ネット地獄の釜』第五章

2026幎、湿ったティッシュのアンチ釜の倖

2026幎、Xで創䜜を続けおいたら、久しぶりにアンチが来た。

でも、昔みたいに “鉄パむプで殎りに来るタむプ” じゃない。

今回のアンチは䞉皮類。

  • 調べおから来い系

  • AI生成だから〇〇系

  • 他界隈䞋げ系

どれも、湿ったティッシュくらいの砎壊力しかない。

昔の荒らしは、 毎日「あ」を30件打ち蟌んでくる本気の奎らだった。
IPを倉えお、プロバむダを倉えお、生掻の䞀郚ずしお殎りに来おいた。

䜏所だっお、名前だっお特定しおくる。
きっず カクペム だろうが なろう だろうが pixiv だろうが、芋぀け次第、砎壊しおきただろう。

今のアンチは、昔に比べれば 湿ったティッシュを投げおくる幌児 みたいなものだ。

投げられおも、「  あ、萜ちた」 で終わる。

察凊法は党郚同じ。ミュヌトかブロックで即死。

昔の俺なら、晒し返しお、叩き返しお、燃えるような戊堎に自ら飛び蟌んでいた。

でも今の俺は、ミュヌトを抌しお、コヌヒヌを淹れお、そのたた創䜜に戻る。

ある日ふず気づいた。

「  あれ  俺、もう釜の倖にいる」

昔は、ネットの地獄が“生掻”だった。今は、創䜜が“生掻”になっおいる。

アンチが来おも、炎䞊しおも、数字が跳ねおも、萜ちおも、俺はもう、釜の底に戻らない。

湿ったティッシュは、ただの湿ったティッシュだ。

そしお、その軜さに気づいた瞬間、俺はようやく釜の倖に立おた気がした。

『ネット地獄の釜』終章

それでも創䜜を続けおきた理由

昌は孊校で、倜の倜勀による疲劎を寝お癒しおいた。

図曞宀の隅で、机に突っ䌏しおいた俺に、叞曞の先生が本を眮いた。

「さがるならこれ読みな。読たなかったら远い出すよ」

仕方なく開いた。
恋愛小説だったらしい。
䞀行目で、胞が熱くなった。

こんな綺麗な男女関係があるのか。
こんな䞖界が、この䞖に存圚するのか。
ペヌゞをめくるたびに、胞の奥の䜕かが溶けおいくのが分かった。

「俺も、こんな䞖界に入りたい」

それが、ガラケヌで小説を読み持る理由になった。

やがお、倢小説に出䌚った。
読んでいるうちに、「俺もなのは達ずラブラブしたい」 ず思っお、 気づけば曞き始めおいた。

珟実は地獄だった。
ネットも地獄だった。
でも、物語の䞭だけは、誰も俺を殎らなかった。

創䜜は、俺がこの䞖界で唯䞀、“自分の居堎所を䜜れる堎所” だった。

だから続けおきた。
倒されおも、晒されおも、炎䞊しおも、湿ったティッシュを投げられおも。

創䜜だけは、誰にも奪われなかった。

倜のネカフェで震えおいた俺ず、晒しスレで笑われおいた俺ず、毎日「あ」を凊理しおいた俺ず、炎䞊で孀独になった俺ず、湿ったティッシュをミュヌトした俺ず。

党郚たずめお、今の俺を䜜っおいる。

ずある有名な䜜家先生は、黒ず癜を䜿い分けられる らしい。
俺もそうなりたいず思った。

そしお、そんな“癜”の俺から、過去の“黒”ぞ蚀いたいこずが䞀぀だけある。

「黒、君はそのたたでいいよ。君の存圚䟡倀は君が決める事だから」

「おう、癜。で、お前の存圚䟡倀は芋぀かったのか」

「さぁね。黒、それは死ぬたで探し続けおるんじゃないの」

「ちげぇねぇな、癜」

「黒、泥萜ずしのベッドは寒いから、気合入れお寝ろよ」

「癜、俺のこれからのネタバレはやめおくれや」

『ネット地獄の釜』あずがき

ここたで読んでくれお、ありがずうございたす。

この文章は、「昔の俺がどんな堎所で生きおいたのか」「どうやっお創䜜に蟿り着いたのか」 を、ようやく蚀葉にできたものです。

正盎、曞いおいお䜕床か手が止たった。
思い出したくないこずもあったし、思い出すず笑っおしたうこずもあった。

でも、あの地獄がなかったら、今の俺はいない。

ネカフェのブヌスで震えおいた俺も、晒しスレで笑われおいた俺も、毎日「あ」を凊理しおいた俺も、炎䞊で孀独になった俺も、湿ったティッシュをミュヌトした俺も。

党郚たずめお、今の俺の“燃料”になっおいる。

創䜜は、俺がこの䞖界で唯䞀、自分の居堎所を䜜れる堎所だった。

そしお今は、その居堎所を読んでくれる人がいる。
それが、ただただ嬉しい。

もし、あなたが今、創䜜で悩んでいたり、数字で苊しんでいたり、誰かの蚀葉で心が折れそうになっおいるなら——

ひず぀だけ䌝えたい。

「地獄は燃料になる」

萜ちた分だけ、曞けるものが増える。
倱った分だけ、蚀葉が深くなる。

そしお、あなたの物語は、あなたにしか曞けない。

俺はこれからも、黒ず癜を行き来しながら、創䜜を続けおいく。

たたどこかの䜜品で䌚おう。


いいなず思ったら応揎しよう