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この人から買いたい

同じようなものが並んでいる。

値段も、大きくは変わらない。
説明も、だいたい同じ。

ちゃんと見れば、違いはある。

品質も、実績も、条件も。
比較しようと思えば、いくらでもできる。

それでも、決まる。

同じようなもの、
同じようなサービス。

それでも。

なぜか、これになる。
なぜか、この人になる。

理由がないわけじゃない。

あとから考えれば、
それらしい説明はいくつも出てくる。

でも、

最初に動いていたものは、
そこではなかった気がする。

同じことを言っているのに、
なぜか違う。

言葉の内容は変わらない。
説明の流れも似ている。

ただ、
受け取ったときの感じの、揃い方が違う。

すぐに通り過ぎていくものと、
なぜか残ってしまうもの。

その違いが、
どこにあるのかは、はっきりしない。

でも、

その人が話しているときだけ、
少しだけ、空気が変わる。

説明を聞いているはずなのに、
どこかで、別のものに触れている感じがする。

言葉よりも先に、
何かが届いているような。

そのまま話を聞いているうちに、
気づかないまま、距離が変わっている。

選んでいるつもりでいても、
もう、その人の中にいる。

条件で決めたわけでも、
比較で選んだわけでもないのに、
結果だけが、そこに収まっている。

あとから、理由は説明できる。

でも、
それで決まった感じはしない。

「この人から買いたい」

その中身は、
まだ言葉になっていないまま、
いろんな場所で起きている。


── 観測ログ


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