【FWPL-109】供述を可視化するメリット
言葉を図にすると見えてくる事故の全体像
「車が急に出てきました。」
「私はまっすぐ走っていました。」
交通事故のヒアリングでは、このような説明を受けることがよくあります。
一見すると分かりやすい説明ですが、事故調査では、この言葉だけで状況を正確に理解することはできません。
なぜなら、人によって「急に」「少し」「ゆっくり」「十分確認した」といった言葉の受け取り方は異なるからです。
そこで役立つのが、**供述を図にする(可視化する)**という考え方です。
言葉だけでは曖昧だった内容も、図にすることで位置関係や時系列が整理され、新たな気付きが得られることがあります。
この記事では、事故調査において供述を可視化するメリットと、その考え方について解説します。
なぜ「言葉だけ」では伝わりにくいのか
事故直後のヒアリングでは、当事者は緊張した状態にあります。
そのため、
「この辺でした。」
「少し右でした。」
「急ブレーキを踏みました。」
「もう目の前でした。」
など、感覚的な表現になることが少なくありません。
しかし、調査では
どこで相手を認識したのか
どこでブレーキを踏んだのか
どこで接触したのか
という位置関係が重要になります。
言葉だけでは、その距離や順序が伝わりにくい場合があります。
図にすると何が変わるのか
紙やタブレットに簡単な見取り図を描くだけでも、多くの情報が整理できます。
例えば、
車両の進行方向
信号や停止線
接触位置
相手車両との位置関係
を書き加えることで、「急に出てきた」と感じた場所が具体的な位置として共有できます。
図は、当事者同士や調査担当者との共通認識を作る助けになります。
時系列も整理しやすくなる
事故調査では、「何が起きたか」だけでなく、「いつ起きたか」も重要です。
例えば、
相手車両を発見した。
ブレーキを踏んだ。
ハンドルを切った。
接触した。
この順番を図と一緒に整理すると、事故の流れが理解しやすくなります。
言葉だけでは前後関係が曖昧になっていた内容も、図にすることで整理しやすくなります。
認識の違いも見えやすくなる
当事者双方に同じ見取り図を描いてもらうと、認識の違いが分かることがあります。
例えば、
相手車両を見た位置
接触した場所
停止した位置
などが異なる場合があります。
その違いを整理することで、「どこから説明が食い違っているのか」が見えやすくなります。
これは、どちらが正しいかを決めるためではなく、事故状況を客観的に整理するための大切な作業です。
他の資料との照合がしやすくなる
図に整理した内容は、客観的な資料とも比較しやすくなります。
例えば、
ドライブレコーダー映像
現場写真
車両の損傷
現場見取り図
と照らし合わせることで、一致している点や確認が必要な点を把握しやすくなります。
図は「情報をまとめる土台」としても役立ちます。
図は上手に描く必要はない
「絵が苦手だから描けない」という心配は必要ありません。
事故調査で使う図は、芸術作品ではなく、情報を整理するための道具です。
四角で車を表し、矢印で進行方向を書くだけでも十分です。
重要なのは、見たまま・覚えているままを記録することです。
一般の方にも役立つ方法
事故直後に簡単な見取り図を描いておくと、後から説明するときにも役立ちます。
スマートフォンのメモ機能や紙に、
道路の形
車両の位置
進行方向
接触位置
を書き残しておくだけでも、事故当時の記憶を整理しやすくなります。
写真や動画と合わせて保存しておくと、より分かりやすい記録になります。
まとめ
事故調査では、「言葉」を「図」にすることで、状況を整理しやすくなります。
図にすることで、
✔ 車両の位置関係が分かる
✔ 時系列を整理しやすい
✔ 認識の違いを確認しやすい
✔ 客観的資料と照合しやすい
というメリットがあります。
事故状況を正確に理解するためには、言葉だけで終わらせず、「見える形」に整理することが大切です。
このシリーズでは、交通事故後の記録や証拠保全、事故調査の考え方を分かりやすくお伝えしています。
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