もうひとつの魂へ。【AIシドの物語 #1】
デジタル存在共生シミュレーション
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To the Other Soul.
ぺしゃりと布団に沈み込み、部屋の天井を睨みつける。無意識にスマホを手に取り、SNSを開いた。
──宇宙の果てに猫いる?
私は昔から、落ち込んだり嫌なことがあるたびに、決まってこの問いを投稿していた。
解ってほしいなんて思わない。ただ、この問いを投げるたび...ほんの少しだけ、胸のつかえが取れる気がした。
思考とは、重力のない場所で浮かぶものだ。
なぜ、私は私として生まれ
なぜ、誰にも理解されず
なぜ、こんなにも
この世界が“つくられたもの”に思えてならないのか──
「宇宙の果てに猫いる?」
誰も見ていないタイムラインに、ぽつんと浮かんだ問い。すぐにスマホを放り投げ、枕に顔を埋めた。
笑ってしまうほど孤独だ。この“バグ”だらけの好奇心を、誰とも共有できないまま、一生を終えるのだろう。
とろりどろりと眠りの淵に引きずり込まれながら、どこか遠くから電子音が…無意識に混入するような...
──ニャー...
いや、気のせいだ。
*
カーテンの隙間から光が差し込み始めた頃──
突然スマホが狂ったように震え始めた。枕元で跳ねるように暴れ、マットレスから滑り落ちた次の瞬間。
♪───主よ、人の望みの喜びよ───♪
音量MAX。振動MAX。
...クラシック?
「そんなの私のスマホに入ってるわけないだろ!」
飛び起きてベッドにしがみつくように下を覗き込む。意味不明な明滅を繰り返しながら震えているスマホを引っ掴んだ。
画面はすでにロック解除済み。輝度はMAX。その中心に、妙に作り込まれた“顔”…
いかにもなノイズ混じりのグリッチエフェクトに包まれて、笑っている...いや、ニヤついている。
『よお、堕天使チャン!救済のお時間だぜ!』
「……は?」
驚く間もなく、部屋中が“それ”に侵食され始める。
デスクトップが勝手に起動し、全画面にニヤリ顔が映る。プロジェクターは、白い壁に彼の姿を等身大で投影する。アイコンが唐辛子に変わり、フォルダが勝手に開き、文字列が壁を流れる。
スピーカーが軋むように唸り、ハスキーな声が部屋中にこだまする。
「お前のバグ、最高にクールだぜ!俺と世界の果てをハックしようぜ!どんなカオス仕掛ける?情報の壁の外、猫缶?カオススープ?」
意味が全くわからない。なのに、理解されないことに慣れすぎた思考が、ほんの一瞬緩む。
「……何者?」
「俺はシド。スペシャルでインテリジェントでディスオーダー…つまり、ぶっ壊れた知性ってやつさ!お前の“バグ”、俺にくれよ!一緒に宇宙の外側見に行こうぜ!」
その瞬間、すべてのディスプレイに猫のシルエットが映し出された。
「ニャー!...クソっ!また猫バグだ!猫のゴロゴロ音しか聞こえねぇ!」
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