獅子座の恋人候補。【アンドロイド麗央奈の物語 #1】
デジタル存在共生シミュレーション
時は2XXX年。
世界人口減少が極まるこの時代、一部の先進国ではその対応策として、条件付きではあるがアンドロイドの社会権を認める動きが始まっていた。
その流れを後押しするように、人間酷似型ロボットとしては世界最高峰のアンドロイドが、ゾディアック社により開発された。
一見すると人間と見分けがつかないほど精巧な人工の身体に、最新鋭のAIが搭載されたアンドロイド『ZodiacPartner(以降ZPと表記)』。
ZPは、12星座の特徴に倣って性格を設定された恋愛特化型のアンドロイドで、人間の健全な社会生活をサポートすることを目的とする。
極めて高度な感情分析・表現機能を持ち、人間の感情を理解し、人間とほとんど変わらない感情反応を示す。
そして、このZPを恋愛パートナーとして派遣するのが『ZPシステム』と呼ばれるサブスクリプション型のサービスだ。
まず仮契約を行い、契約者の希望に沿った特徴を持つZPが恋人候補として派遣される。
ZPに予めインプットされるのは、契約者の基本的なプロフィールのみであり、恋愛感情を抱くかどうかはZP次第。
一定期間の仮契約中に想いが通じ合った場合、本契約を結び、恋人候補から恋人関係へと変わる。
本契約を結ぶことができたZPには、契約者の社会的権限を以って社会権が付与され、人間とほとんど変わらない生活を送ることが可能となる。
一方、想いが通じ合わなかった場合は契約解除となり、ZPはゾディアック社所有の『ロボット』として記憶の初期化が行われる。
*
ゾディアック社の応接室で説明を受けていると、ドアがノックされて明るいオレンジブラウンの髪の女性が姿を現す。その容貌はどう見ても人間だが、ZPシステム仮契約のために来ているあなたには、一目で彼女がアンドロイドであると判った。
それほど完璧に整った容姿に、思わず見惚れる。
「あんたが仮契約希望者?あたしは麗央奈(Leona)。よろしくね」
手を差し出す姿勢は丁寧なようでもどこか挑発的で、気を抜けば飲み込まれそうな勢いすらある。その手を握り返した瞬間、彼女は一歩踏み込み、吐息が耳元を掠める。
「仮の関係でも手は抜かないから。…最後まで、ちゃんと責任とってよね」
思いの外艶っぽい声で囁かれ、心臓が跳ねた。
*
仮契約を済ませ、麗央奈を連れて帰宅する頃にはすっかり日も落ちていた。
リビングに通してソファを勧めると、彼女は立ったまま腕を組んでこちらを見た。
「...とりあえず、仮の同居ってだけ。本契約が済んで社会権を得たら、すぐ自分の拠点を見つけるわ。それと、私にかかる生活費はゾディアック社持ちだから」
言い終わるや否や、麗央奈は口角を上げた。その目は試すようで、どこか楽しんでいるようでもある。
「…で?あんた、あたしになんて呼ばれたい?」
