【21歳秋:誰もが愚かで誰かを裏切っていたあの頃】
21歳の秋ごろ、3年間付き合った彼女と別れた僕は、その後も、幾度となく「しおり」と会い続けていました。
そんなある日のこと、友人の「まなぶ」から思わぬ誘いを受けました。
「飲み会をやろう!」
提示されたメンバーを聞いた瞬間、僕の頭の中は一瞬でパニックに陥りました。
男性は僕とまなぶ。
女性はしおりと、「なおみ」。
なおみは、僕たちの友人である「ひろし」の彼女です。
なぜ、ひろし抜きの飲み会に彼の彼女を呼ぶのか?
つい最近まで、まなぶはしおりのことが好きで、夜な夜な彼女の家の前に車を停めて待ち伏せしていたではないか。
そして、なぜしおりとなおみは、当たり前のようにその誘いに乗っているのか。
何がどうなってその場がセッティングされたのか、当時の僕には何一つ理解できませんでした。
テーブルの向かい側で覚えた「違和感」
当日、釈然としない戸惑いを抱えたまま、飲み会が始まりました。 お酒が入ってしまえば、それなりに賑やかで楽しい時間が流れていきます。けれど、僕はスタート直後から、どうしてもぬぐえない、ある「違和感」を覚えていました。
テーブルの向かい側に座る、まなぶとなおみの距離感です。
(ん? なんか、このふたり近くないか?)
二人の身体は触れ合うほど近く、交わす言葉や空気感は、どう見てもただの「友人と友人の彼女」のそれではありませんでした。まるで付き合いたての恋人同士のような生々しい距離感。
二人のちょっとした仕草や視線の交わし方に、僕の胸の中で嫌な予感が確信へと変わっていきました。
(ふたりの間には、間違いなく何かある)
やがて店を出る時間になり、次の店に行くのか?またこのまま解散なのかと思ったその時、まなぶの口から出た言葉で、僕の予感は事実だと突きつけられました。
「この後はホテルに行くよ! もちろん、別々の部屋な!」
僕は最初、その「別々」という言葉を男女別という意味で受け取っていました。しかし、そうではありませんでした。
まなぶとなおみが同じ部屋に入り、僕としおりが別の部屋に入る、そういう意味だったのです。
知らなかったのは、僕だけだった
ホテルの部屋に入り、二人きりになったあと、僕はしおりの口から驚くべき事実を聞かされました。
「なおみとまなぶは、そういう関係だよ」
どうやらこの日の飲み会は、まなぶとなおみの「密会」を作るために、しおりも含めた3人が裏で計画したものだったそうです。
この不気味な集まりの本当の目的を知らなかったのは、僕一人だけでした。その事実にも、強いショックを隠せませんでした。
なぜ、二人がそうなったのか。 いつからそんな関係が始まっていたのか。 詳しく聞いた記憶はありません。
夏に行った、7人でのプチ旅行のとき、すでに二人はそういう関係だったのかもしれません。けれど、僕からその真意を問いただすことは一度もありませんでした。
なぜなら、彼女がいながらしおりと会い続け、まなぶの気持ちを知りながら彼を突っぱねていた僕に、人を責める資格など最初からなかったからです。
ドロドロした青春の裏側
それにしても、人間の心とはなんと複雑で、恐ろしいものなのだろうかと思います。
まなぶは、僕からしおりを奪うことはできなかったけれど、結果として友人であるひろしの彼女と深い関係になっていた。
なおみはなおみで、僕にしおりを引き合わせて当時の彼女から奪略させるきっかけを作り、自分は彼氏の友人と密会を重ねていた。
自分がしてきたことを棚に上げて言える立場でないことは重々承知していましたが、(よくそんなことできるな)と、心底怖くなったのを、はっきりと覚えています。
後日、まなぶとなおみがほどなくして、その関係を終えたという話が耳に入ってきました。 そしてその後、ひろしとなおみも別れました。
当時、まなぶとひろしは頻繁に顔を会わせる間柄だったのですが、最後までバレていなかったのか?その事を聞いた記憶は残っていません。なので、きっとうまくやっていたのでしょう。
また、どんな顔をして、ひろしと会っていたのか?そのことも、当時の僕には知る由もありませんでした。
こうしてnoteに過去を綴っていると、甘酸っぱい青春の思い出の裏に隠れていた、ドロドロとした人間関係の闇が次々と鮮明に蘇ってきます。
誰もが愚かで、誰もが誰かを裏切っていたあの頃。
決して誇れるような綺麗な過去ばかりではないけれど、これが確かに僕たちが生きていた、21歳の秋の現実でした。
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