シン・値上げの極意(2)〜見積項目明細を示すことはオススメしません〜
前回は、
「1万円で仕入れた材料の原価はいくらか?」
という問いを通じて、
原価は変動費だけではなく、固定費も含めて捉える“感覚”
についてお話しました。
今回は、その感覚を踏まえて
実際の値上げ交渉の準備について考えていきます。
明細分け“だけで”説明する交渉はおすすめしない
よくある方法として、
見積明細を細かく分けて
それぞれの項目について
客観データを示しながら交渉する
というやり方があります。
私はこの方法を、そのままはおすすめしません。
理由はシンプルです。

① 手間のわりにリターンが小さい
細かく分解すればするほど、
準備に時間がかかり
説明も複雑になり
結果として、
思ったほど価格転嫁できない
という懸念が高まります。
② 後々まで尾を引く
一度細かい明細で合意してしまうと、
担当者が変わったとき
再交渉のとき
同じ説明を繰り返す必要が出てきます
そしてその時、
上がったはずの材料費が下がっていたら。。。
明細に明記した材料それぞれについて
都度、交渉する必要が生じるかも知れません。
では、どんな準備が必要か?
値上げ交渉は、準備でほぼ決まります。
ここで重要なのは、
価格を“構造的に説明できるかどうか”
です。
ここでいう“構造”とは、
単なる明細ではありません。
価格がどのような条件で動くのか、その仕組みのこと
です。
「明細」と「構造」はまったく違う
例えば、
材料費をさらに細かく分けて
それぞれの市場動向を説明する
これは一見、丁寧な説明に見えます。
しかし実際には、
交渉ネタを増やし
個別に突っ込まれ
値引きの余地を広げる
結果として、
「上下に動く交渉」になってしまいます
実際に起きていること
帝国データバンクや商工中金の調査でも、
原材料価格の上昇は理解される
しかし価格転嫁は不十分
という結果が多く見られます。
つまり、
変動費の値上げは通るが、それだけでは足りない
ということです。
なぜうまくいかないのか?
理由は明確です。
固定費に含まれる原価を、交渉のテーブルに乗せられていないから
これが、多くの企業の“つまずきポイント”です。
では、どうするのか?
ここで難しく考える必要はありません。
固定費を細かく分解する必要はない
大切なのは、
価格がどのような条件で「上下左右に動くのか」を説明できること
です。
上に動く(値上げ)
下に動く(値下げ)
だけでなく、
条件によって変わる
価値によって変わる
提供の仕方によって変わる
こうした、
“構造としての価格”を捉える視点
が必要になります。
値上げを成功させるためには、
明細で説明するのではなく
構造で説明する
つまり、
原価構成を理解し、価格構造として語れる状態をつくること
これが、本質です。
次回(シリーズ)予告
では、その「構造」とは具体的に何なのか?
次回は、
価格が「上下左右に動く」とはどういうことか?
について、もう一歩踏み込んで解説していきます。
