経済学者は配管工であれ?人はバナナじゃない!と説くノーベル賞夫婦の絶望を希望に変える経済学
経済学って聞くと、難しい数式を使って株価やGDPを予測する学問だというイメージが強いかもしれません。
しかし、2019年にノーベル経済学賞を受賞したアビジット・バナジーとエステル・デュフロの夫婦は、超ユニークな方法を発見しました。
これが世紀の発見だったわけで、ノーベル賞を取りました。
すっごく簡単にいうと、それは「経済学者は『配管工』のようになるべきだ」という考え方です。
どういうことかというと・・・
物理学者が宇宙の法則を解き明かすように、難しい理論を押しつけちゃいけない!
配管工のように「蛇口から水が漏れていないか」「パイプが詰まっていないか」といった細かい仕組みを調整することこそが、人々の生活を確実に良くするんだ!
という感じ。
そんなノーベル賞夫婦が書いた『絶望を希望に変える経済学』は、私たちがニュースを見て「きっとこうだ」と思い込んでいる常識が、実はデータの裏付けがない、ただの直感に過ぎないことを教えてくれる本です。
今日はこの本を徹底紹介していきますね!
移民のナゾ「人はバナナとは違う」
多くの人は「移民がたくさん来ると、私たちの仕事が奪われて給料が下がる」と直感的に考えます。
需要と供給の法則で考えれば、バナナがたくさん市場に出回れば値段が下がるのと同じ理屈に思えるからです。
しかし、実際のデータ(マリエル難民事件など)を見ると、移民が急増しても地元の人の給料は下がりませんでした。
なぜなら、人間はバナナとは違い、労働者であると同時に「消費者」でもあるからです。
彼らが食事をし、髪を切り、家を借りることで、そこには新しい需要が生まれ、結果として仕事が増えます。
また、移民は地元の人と競合するのではなく、地元の人がやりたがらない仕事を担ったり、地元の人がより高度な仕事に専念できるように支えたりする「補完的」な役割を果たすことが多いのです。
移民の受け入れは、家賃を分担し家事を助け合う「新しいルームメイト」を迎えるようなものであり、経済全体で見ればプラスに働くことが多いことが分かっています。
ネバネバした経済
「貿易を自由にすれば、国全体が豊かになる」というのは経済学の教科書的な定説です。
たとえ国内の工場が潰れても、労働者は成長している産業や地域へ移動すればいい、とされてきました。
しかし、現実の人間は教科書通りには動きません。
著者たちは、現実の経済を粘着性(ネバネバ)という言葉で表現します。
工場が閉鎖されても、家の値段が下がって売るに売れなかったり、年老いた親や友人がいる地元を離れられなかったり、長年の職人としてのプライドがあったりと、人はそう簡単に移動できません。
人間は水のようにサラサラと流れるわけではなく、ハチミツのようにその場に留まり、ダメージを受け続けてしまいます。
だからこそ、単に「貿易は良いことだ」と叫ぶのではなく、その場に留まらざるを得ない人々をどうケアするかという配管工事が不可欠なのです 。
成長という幻想と、本当に大切なこと
多くの政治家が「減税すれば成長する」と約束しますが、著者たちは「経済成長のスイッチがどこにあるのか、正直誰もわかっていない」と断言します。
高度経済成長期のような時代を取り戻そうと躍起になるよりも、もっと大切なことがあります。
それは、たとえ成長が緩やかでも、すべての人が尊厳を持って生きられる社会を作ることです。
仕事とは単にお金を稼ぐ手段ではなく、社会とのつながりや自分の存在意義を感じる場所でもあります。
仕事を失った人に対して「お金だけあげるから黙っていろ」という態度は、彼らの尊厳を深く傷つけ、社会の分断を招くだけです。
ウルトラ・ベーシック・インカム(UUBI)
AIやロボットに仕事を奪われる未来に備えて、著者たちが提案するのは「ユニバーサル・ウルトラ・ベーシック・インカム(UUBI)」という考え方です。
これは、生活できるギリギリの額(ウルトラ)を、審査なしで誰でも受け取れるようにする仕組みです。
「タダでお金をあげたら、みんな怠けて働かなくなるのでは?」という心配に対して、世界中の実験データは明確にNOを突きつけています。
お金をもらっても、人は働くのをやめません。
むしろ、生活の不安(明日の食事の心配)がなくなることで、新しい商売に挑戦したり、より自分に合った仕事を探せるようになり、経済活動は活発になることすらあるのです。
いまの日本が読むべき本だと思う
「移民は怖い」「福祉は甘え」といった感情論や「こうすれば成長する」という古い理論に頼るのではなく、データ(事実)に基づいて冷静に議論すること。
そして、変化の激しい時代において、取り残された人々を自己責任と突き放すのではなく、制度の細部を調整する「配管工」の視点で支えること。
世界は複雑で、万能な特効薬はありません。
しかし、分からないことを「分からない」と誠実に認め、一つひとつの問題を丁寧に修理していくことで、私たちは「絶望」を「希望」に変えていくことができるのです。
ぜひ、読んでみてほしい。心から。
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これからも毎日、本を紹介したいのですが、このnote、ずっと赤字状態です。もし本好きの方がいらしたら、チップを送っていただけると嬉しいです。