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弐、 時代小説 義賊 千変万化の三太(せんぺんばんか の さんた)

第一話 三太 義賊の馴れ初め

ニ章「風車座の三太」——修業と仲間たち

風車座に入ったその日から、三太の暮らしは一変した。 朝は太鼓の音で起こされ、夜は提灯の灯りの下で芸の稽古。 旅芸人の世界は厳しいが、どこか温かかった。 ---
◆ 軽業の修業 「三太、足をもっと軽く上げろ。風になりきるんだ」 そう言って三太を指導したのは、軽業師の お紋(おもん)姐さん。 細身でしなやか、綱の上を歩く姿はまるで燕のようだった。 三太は綱の上に立つだけで足が震えた。 「お、お紋姐さん、落ちたらどうするんだよ」 「落ちなきゃいいのさ。落ちても、受け身を覚えれば死にはしないよ」 お紋は笑いながら、三太の背中を軽く叩いた。 その手は不思議と温かく、三太は何度も落ちながら、少しずつ綱の上を歩けるようになっていった。 ---
◆ 太神楽の修業 「三太坊、皿は投げるんじゃねぇ。空に預けるんだ」 そう言うのは、太神楽師の 弥平(やへい)。 丸い顔に大きな声、いつも笑っている陽気な男だ。 三太は皿回しの稽古中、皿を空に“預けすぎて”頭に落とした。 「いってぇぇぇ!」 弥平は腹を抱えて笑った。 「お前さんは見てて飽きねぇな。だが、その間抜けさが客にはウケるんだよ」 三太は頭をさすりながらも、どこか誇らしかった。 --- ◆ 芝居と変装の修業 「三太、声が硬い。もっと柔らかく、もっと艶っぽく」 芝居を教えたのは、元役者の 千代松(ちよまつ)。 男だが女形もこなす器用な人物で、化粧や衣装の扱いにも長けていた。 三太は女形の稽古で、千代松の真似をしてみた。 「こ、こんな感じかい……?」 「違う違う、もっと腰を落として、目線を下げる。  そうだ、色気は目で出すんだよ」 三太は真剣にやっているつもりなのに、 なぜか周りは笑い転げていた。 「三太、お前は色気より愛嬌だな」 千代松はそう言って、三太の頭をくしゃっと撫でた。 --- ◆ 仲間たちとの日々 風車座には、三太を支える仲間がいた。 ● お紋姐さん(軽業師) 厳しいが情に厚い。三太にとって姉のような存在。
● 弥平(太神楽師) 陽気で面倒見がよく、三太の失敗を笑い飛ばす兄貴分。
● 千代松(元役者) 変装・芝居の師匠。三太の“化ける才能”を見抜いた人物。
● 座長・風車の源蔵 三太を拾った男。 「芸は身を助ける」を信条に、三太を息子のように育てる。
--- ◆ 三太の成長 三太は失敗ばかりだったが、 誰よりも明るく、誰よりも人を笑わせた。 お紋姐さんは言った。 「三太、お前は芸人に向いてるよ。  人を笑わせるのは、立派な芸だ」 弥平は言った。 「お前さんは風みてぇだ。捕まえようとしても、どっか行っちまう」 千代松は言った。 「変装の才能は本物だ。いずれ大化けするよ」 そして源蔵は、三太の肩を叩いて言った。 「三太、お前は風車座の宝だ。  どんな形にもなれる男――千変万化の三太だ」 三太は照れながら笑った。 その笑顔は、旅芸人としての誇りに満ちていた。

                                            つづく


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