長編小説、宝石探し、15日目①
この日は、どちらにしろ宝石探しを中断する予定であった。この日は化け物退治の人と化け物が決闘をする。
化け物が身を隠していた地下から地上に出て化け物退治の人を空き家に呼んだ。空き家の中で1対1の決闘をするのだ。どういう結末を迎えるのか。僕と怪盗は空き家から少し離れた公園のベンチで、ただ待つことしかできなかった。
決闘の邪魔はしたくない。それは怪盗も同じ考えである。しかし僕は化け物退治の人に勝ってもらいたい。怪盗は化け物に勝ってもらいたい。複雑な心境だった。できれば両方に勝ってもらいたい。決闘などしないでもらいたい。分かってはいたが、そうはいかないのだ。化け物は、いずれ人間を襲う。化け物退治の人は、それを防ぐために化け物を退治する。決闘をしなければいけない立場なのだ。
空き家での決闘が始まって1時間が経つ。決闘の様子は見ることができない。今、空き家では何が行われているのか。僕は落ち着いてられず公園をウロウロしたり空き家を遠くから眺めたりしていた。怪盗はスマホのゲームをやりながら待っていた。怪盗と化け物は仲良しである。落ち着いていられる理由が分からなかった。
怪盗は、「少しは落ち着きなよ。なるようにしかならない。僕の仕事も、そうだけど覚悟はしてるよ。捕まったら罰を受ける。化け物も人間を襲うなら退治されることもある。化け物退治の人も退治に失敗したら命を落とす。それぞれが命がけで生きてるんだよ。結果が最悪の場合もある。でも、それに対して嘆いたり怯えたり恨んだりしない。君だって宝石探しの仕事をしてるなら最悪の事態を日頃から覚悟してるはず。だから今回の決闘だって、それぞれが選んだ道。避けられない。やるしかないんだよ。逆に覚悟が無いまま嘆き怯え恨みながら、やってる人間はやめた方が良い。少なくとも僕と化け物と化け物退治の人は覚悟を持って選んだ道を進んでる。君も理解してる人間だ。最悪の事態になっても嘆き怯え恨むことはしない。ただ最善を尽くす。結果は、あとから付いてくる。つまり気にすることじゃない。静かに応援するんだね。」と言った。
怪盗は、そう言ったが、やはり仲の良い化け物が退治されれば悲しむだろう。落ち着いてるようで内心は緊張しているような気がした。僕と怪盗は、まだ最悪の事態を受け入れるほど強くはない。理屈では分かっている。しかし理屈だけで生きているわけじゃないのだ。僕らには感情がある。僕は感情に正直にウロウロしたり空き家を眺めたりしていた。怪盗は今度は何も言わなかった。僕と怪盗は決闘の結果を緊張しながら待っていた。
続く
