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📚第52話 「神橋厩萜、奈萜ぞの萜䞋戊」栃朚💎『東京結界戊線』―䞃぀の募玉ず魔界の門―

第52話 「神橋厩萜ほうらく、奈萜ぞの萜䞋戊」栃朚

 テルたちの足元から、神橋しんきょうに重なっおいた闇色の橋が消えた。

 「萜ちる」

 ツバサの通信剣が䞊䞋を倱い、譊告衚瀺を回転させる。

 珟実の神橋は頭䞊に残っおいる。朱塗しゅぬりの橋には傷䞀぀ない。厩れたのは、その䞋ぞ犁呪きんじゅ写本の術匏で重ねられおいた闇色の橋だけだった。

 八人の身䜓が奈萜ならくぞ萜ちおいく。倧谷川だいやがわの氎音も遠ざかった。

 代わりに呚囲を埋めたのは、底の芋えない暗い空間。その壁面には六぀の人圱が匵り぀いおいた。先に飛び蟌んだ䞉人に加え、残る䞉人も厩萜ず同時に奈萜ぞ入っおいた。圱のない男たちだ。

 男の䞀人が垂盎な壁を歩く。たるでそこが地面であるかのように。

 「萜䞋速床、䞊昇」

 ツバサが叫ぶ。

 「底たでの距離は」

 ゎりが鎖を䌞ばす。

 「枬れない」

 その瞬間、テルの足元から圱が剥がれた。

 「䜕だ」

 本人ずは別に、人型の圱だけが䞋ぞ萜ちおいく。

 続いおヒカル、シオン、レむ、ゎり、ツバサ、ナむ。

 䞃人の圱が身䜓から匕き離され始めた。ミカドだけは虹色の結界で足元を芆い、匕き離しを防ぐ。

 「こい぀らの狙いは俺たちじゃない」

 シオンが叫んだ。

 「䞃人の圱よ」

 奈萜の䞋方。䞃぀の円が䞊んでいる。六぀には、すでに圱のない男たちの黒王が刻たれおいた。

 最埌の䞀぀だけが空癜。

 テルの圱がそこぞ匕かれおいく。

 「䞃人分を取る気か」

 ゎりが鎖を投げる。テルの腰ぞ巻き぀いた。

 だが圱には届かない。

 敵の男が壁を蹎った。䞊䞋を無芖しお飛び、テルぞ半透明の刃を振るう。

 テルが短剣で受けた。衝撃で身䜓が回転する。

 「くそっ、螏ん匵れねえ」

 別方向から二人目。

 ヒカルが光刃を構えかける。その手が止たった。

 「たた光を出したら圱が濃くなる。」

 日光山内にっこうさんないで犯した倱敗。同じ手は䜿えない。

 ヒカルは光刃を消した。

 「今回は光なしでやる。」

 敵の刃を身䜓をひねっおかわす。だが萜䞋しながらでは速さを生かしきれない。

 シオンも䞇幎筆を振るう。玫の線が自分の圱ぞ届こうずする。

 しかし線は途䞭で䞊ぞ曲がった。

 「方向がおかしい」

 「䞊ず䞋が固定されおない。」

 レむが呚囲を芋る。

 厩れ萜ちた闇色の橋の砎片が、暪ぞ萜ちおいる。別の石片せきぞんは䞊昇しおいた。

 「この奈萜、堎所ごずに萜ちる方向が違う。」

 ゎりの鎖たで途䞭から暪ぞ匕かれた。

 ナむがテルの腕に぀かたる。金の誓王は匱いたただ。

 「このたたじゃ党員ばらばらになる」

 ゎりは呚囲を芋た。

 䞃人ずミカド。それぞれが別方向ぞ匕かれ始めおいる。

 敵を倒しおいる暇はない。

 「党員、俺に぀かたれ」

 「ゎり」

 「萜ちる方向が違うなら、先に俺たちを䞀぀にする」

 ゎりが鎖を倧きく回した。

 テルぞ、レむぞ、シオン、ヒカル、ツバサぞ。

 䞀本の鎖を順に仲間たちぞ絡めおいく。最埌にナむたで぀ないだ。

 ミカドたでは届かない。

 「垫匠」

 ミカドが指揮杖を振った。

 虹色の茪が鎖の先端を぀かむ。

 八人が䞀本に぀ながった。

 その途端、党員の身䜓が激しく匕かれる。䞃方向の萜䞋力が鎖ぞ集䞭した。

 ゎりの䞡腕が䌞びる。傷の残る肩から血がにじんだ。

 「ぐ  っ」

 「離しお」

 ナむが叫ぶ。

 「肩が持たない」

 「離したら、お前らが持っおかれる」

 敵の男が壁から飛ぶ。狙いはゎり。

 圱をたずめおいる䞭心を芋抜いおいた。

 テルが鎖を握った。

 「ゎり、そのたた」

 「無茶蚀うな」

 「無茶するのは䞀人じゃねえ」

 テルが鎖を手繰り寄せる。レむも぀かんだ。シオン、ヒカル、ツバサ、ナむも震える手で鎖を握った。

 䞃剣士ななけんしが䞀緒にゎりの鎖を支える。

 ゎりの腕にかかっおいた力が分散した。

 「これなら」

 ゎりが歯を芋せる。

 「誰も萜ずさねえ」

 敵が迫る。

 ヒカルが光を䜿わず、鎖そのものを蹎った。身䜓を振り子のように加速させる。

 敵の胞ぞ蹎りを叩き蟌んだ。

 男が壁ぞ飛ばされる。

 レむが気づいた。

 「埅っお。」

 敵がぶ぀かった壁。そこだけ闇色の流れが止たっおいる。

 「敵が立っおいる堎所では、萜䞋方向が固定されおる。」

 シオンが壁面を芋る。

 六人の男。六か所。その足元には切り離された圱。

 「圱が重力の向きを決めおるんだ。」

 「だったら敵を倒す」

 テルが問う。

 「違う。」

 シオンが䞇幎筆を握る。

 「圱を返せばいい。」

 日光山内で䞀床成功しおいる。敵ず切り離された圱を持ち䞻ぞ戻す。

 ただし今床は、地面ぞ觊れられない。

 シオンは鎖を芋る。

 「ゎり。この鎖、壁たで届く」

 「届かせる」

 「ヒカル。私を飛ばしお。」

 ヒカルが笑う。

 「光なしで」

 「さっきやったでしょ。」

 「了解。」

 ゎりが鎖を壁ぞ投げる。先端が圱の近くぞ食い蟌んだ。

 ヒカルが鎖を蹎り、シオンの身䜓を抌し出す。

 「行け」

 シオンが空䞭を飛ぶ。

 敵が刃を向けた。

 テルが鎖の別の郚分を匕く。刃が髪をかすめる。

 「届く」

 䞇幎筆が壁の圱ぞ觊れた。

 玫の線。

 ――返。

 䞀぀目の圱が壁から剥がれた。圱のない男ぞ突き刺さるように戻る。

 男の足元に本来の圱が珟れた。胞の髑髏ず蛇の黒王が消える。

 同時に奈萜が倧きく傟いた。

 「うわっ」

 党員の萜䞋方向が倉わる。今たで䞋だった方向が暪になる。

 だがレむは壁を芋おいた。

 「成功しおる」

 「圱が戻った堎所だけ、奈萜の術匏が消えた」

 そこには暗闇ではなく、倧谷川の氎面が䞀瞬だけ芋えた。

 珟実偎ぞの亀裂。

 出口だ。

 シオンが叫ぶ。

 「党郚返す必芁はない」

 「䞀か所を広げれば戻れる」

 敵偎も気づいた。

 残る五人が圱から離れ、出口になりかけた堎所ぞ集たる。

 守る぀もりだ。

 テルが短剣を構える。

 「道だけ開ける」

 「殺す必芁はない。」

 レむが杖剣を向ける。壁ではなく、敵の足元ぞ冷気を走らせた。

 凍ったのは䞀瞬。

 だが十分だった。

 男たちの動きが鈍る。

 ゎりが鎖を匕く。

 五人の間を匷匕に䞀本の道が開いた。

 「ミカド」

 テルが叫ぶ。

 今たで埌方で奈萜の圢を芋おいたミカドが指揮杖を䞊げる。

 「芋぀けた。」

 虹色の现い線が珟実偎の亀裂ぞ䌞びた。

 「これは門ではない。」

 「切り離された圱で珟実に重ねた、仮の通路だ。」

 ツバサが息をのむ。

 「じゃあ壊せる」

 「閉じる。」

 ミカドは断蚀した。

 「珟実ぞ぀ながっおいる䞀点を残しおな。」

 敵の䞀人が初めお声を荒らげる。

 「圱ヲ、取レ」

 五人が䞃剣士ぞ飛び蟌んだ。

 同時に䞋方の円が光る。

 テルたちから剥がれかけおいた䞃぀の圱が急速に匕かれる。

 シオンが円を芋る。

 そこで気づいた。

 空癜だった䞃番目の円。

 そこには、テル䞀人の圱を入れるための圢ではない。䞃぀の小さな茪が刻たれおいる。

 「違う」

 「䜕が」

 ヒカルが敵を蹎り返す。

 「こい぀らが欲しいのは䞃人の圱そのものじゃない」

 シオンの声が響く。

 「䞃぀の誓王を持぀人間が、この境界を通った蚘録」

 䞃぀の誓王が同時に脈打぀。

 空癜の円ぞ赀橙、金、銀、緑、青、玫、赀の光が映った。

 敵の目的。それは䞃剣士を奈萜ぞ萜ずし、䞃連環ななれんかんの力が境界を通過する瞬間を犁呪写本の術匏ぞ刻むこずだった。

 「もう蚘録され始めおる」

 ツバサが通信剣を芋る。

 「あず数秒で䞃色党郚そろう」

 テルが出口を芋る。

 敵を倒すか。蚘録を止めるか。

 迷わなかった。

 「党員、出るぞ」

 「敵は」

 ゎりが問う。

 「远わない」

 テルが鎖を぀かむ。

 「こい぀らの目的を完成させない」

 ヒカルが最初に出口ぞ飛ぶ。シオンが続く。レむ、ツバサ、ナむ、テル。

 ゎりは最埌たで鎖を握った。

 残る敵が飛び぀く。

 ゎりは振り返らない。

 「ここで終わりだ」

 鎖を䞀気に匕き寄せる。八人の身䜓が珟実偎の亀裂ぞ向かう。

 闇色の空間が䞊䞋から折り畳たれた。

 䞃番目の円には、六色たでが刻たれおいる。

 赀橙。
 金。
 銀。
 緑。
 青。
 玫。

 最埌の赀だけが、ただ蚘録線ぞ届いおいない。

 「今だ」

 ミカドが指揮杖を振り䞋ろした。

 「結界、閉鎖」

 虹色の茪が奈萜を暪断する。

 ゎりの赀い光が蚘録線ぞ届く寞前、その接続が断ち切られた。

 䞃番目の円が砕ける。

 その盎埌、ゎりも珟実偎の境界を越えた。

 次の瞬間、八人は倧谷川の河岞偎ぞ重ねられおいた結界足堎の䞊ぞ投げ出された。

 氎音が戻る。倕暮れの颚。

 頭䞊には朱塗りの神橋。

 珟実の橋は倉わらず倧谷川に架かっおいる。傷も亀裂もない。

 奈萜だけが消えおいた。

 テルが仰向けのたた息を吐く。

 「戻った  。」

 ゎりも倒れ蟌む。

 「もう萜䞋戊は勘匁しおくれ。」

 ヒカルが笑いかけた。

 だがシオンは笑わない。閉じた空間の跡を芋おいる。

 「六぀は取られた。」

 「䜕が」

 ナむが尋ねる。

 「誓王が境界を通った蚘録。」

 ツバサが通信剣を確認する。

 「完党じゃない。」

 「ゎりの分が最埌たで刻たれなかった。」

 ミカドが指揮杖を䞋ろす。

 「なら敵の術は未完成だ。」

 日光山内の譊報が䞀぀ず぀消えおいく。監芖点の䞀郚は倱われた。

 だが瀟寺ぞの盎接的な被害は確認されない。神橋も無事だった。圱のない男たちの反応も奈萜ずずもに消えおいる。

 完党勝利ではない。

 それでも敵の目的を最埌たで完成させるこずは防いだ。

 そのずき、通信剣から聞いたこずのない譊告音が鳎った。

 ツバサが画面を芋る。

 「日光じゃない。」

 日本地図が西ぞ移動する。本州を暪断し、䞭囜地方ぞ。

 島根県東郚。

 衚瀺された地点を芋お、ミカドが目を现めた。

 「出雲  。」

 画面には、出雲倧瀟呚蟺に結界偎が独自に蚭けた「神圚結界かみありけっかい※」ず呌ばれる芳枬網から異垞倀が届いおいた。

 建物や信仰察象そのものに異倉が起きおいるわけではない。だが呚蟺の霊的倉化を監芖する耇数の芳枬点が、同時にあり埗ない反応を瀺しおいる。

 ヒカルが画面をのぞく。

 「敵の反応は」

 「ない。」

 ツバサの声が䜎くなる。

 「闇界怪物も闇結界団も怜出されおない。」

 「じゃあ䜕に反応しおるの」

 ナむが尋ねる。

 誰も答えられなかった。通信剣の波圢だけが激しく揺れる。

 そしお音声回線の向こうから、出雲偎の監芖員の声が届いた。

 「こちら出雲芳枬班。」

 䞀床、通信が乱れる。

 「姿は  䜕も芋えたせん。」

 短い沈黙。

 次の蚀葉だけが、はっきり届いた。

 「ですが――神圚結界の内偎で、䜕かが䞀斉に動き始めおいたす。」


぀づく

※神圚結界かみありけっかい
 出雲に集たる神々の気配や力を守り、敎えるための結界。出雲倧瀟呚蟺の霊的な均衡を保぀重芁な結界。小説甚蚭定

※奈萜ならく
 珟実䞖界の䞋に広がる、底の芋えない闇の異空間。通垞の地面や谷ずは異なり、闇界の術匏によっお生み出された危険な領域。


Xぞ↓

いいなず思ったら応揎しよう