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「ファーストジブリ」、わが家の場合。|子育てエッセイ


息子の「ファーストジブリ」に失敗してしまった。


そのために、十数年ぶりにレンタルビデオ屋に足を踏み入れたのが数週間前。懐かしさに心躍らせながら『崖の上のポニョ』を探す。

「あった!見てみて、これを借りよう!」と息子に見せる。
「嫌だ。観ない。」と即答される。
そんなことは予想していたので、おかまいなしに借りて帰った。


夫は家に帰るまで「なぜポニョなのか」と首を捻っていたが、わたしから言わせると「なぜポニョではないのか」だ。

お魚大好きな息子だもの。絶対に見るはずだ。きっと最初にポニョが顔を出したあたりから、あの可愛さに釘付けになるはずだろう。
何よりわたしが大好きなシーン…宗介とポニョが並んでラーメンを食べる場面…を息子と並んで見たいんだ(そのために借りたと言っても過言ではない)。そして「ラーメン食べたいねぇ!」って笑い合いたい。




結果、開始数分でポニョに完敗した。

待望のポニョが登場するや否や、「怖い」としがみついてくる息子がそこにいた。なにぃ、そんなわけないじゃないか。かわいいんだぞ。
「よく見て、可愛いでしょう?」と何度も話しかけるが両手をお目々に当ててなかなか見ない。
そしてポニョが岸に打ち上げられたあと、ポニョを追ってくる黒い波のような生き物が出るや脱走。トイレに駆け込み「ピカチュウを見るまで出ない!」と涙ながらの籠城作戦を敢行。


なぜだ。いつもYouTubeでは妖怪大行進とか、なんだか怖いモンスターが襲ってくるようなマイクラ動画を見ているくせに。

ラーメンを食べるシーンを見て、あのラーメンを一緒に作り、一緒に食べる。そんなわたしの夢は儚く散っていった(いや、先延ばしになっただけだと信じたい)。

打ちひしがれるわたしを、夫は「さもありなん」と言わんばかりの目で見てくる。うるさいうるさい。ちょっと間違えただけやん。




ポニョ敗退から数日後のこと。
ファーストジブリをどうしても成功させたいわたしは、性懲りもなくレンタルビデオ屋でジブリを借りて帰ってきた。


次は『となりのトトロ』である。完璧であろう?
「れいぽんよ、なぜ始めからそれにしなかったのか」という読者の皆さまの声が聞こえてきそう。全くもってその通りだ。

やっぱりこれだよこれ。
小さい子はさ、トトロでジブリデビューしてさ、まっくろくろすけとか、ねこバスを探すようになるのさ。
茂みに入って「木のトンネル!」とか言って、トマトときゅうりを川で冷やして食べるのに憧れて。
どんぐりを庭に埋めて怪しい体操をしたり、大きな木を見つけると根本にいって穴を探すのさ。

うふふ。そんな息子を愛でるの、いいやん。




さて、そのトトロの結果はというと…
初めてのジブリ(ポニョの記憶は消した)、成功!

まさか最後まで見ることができるとは!しかも、かなり集中して。
でも、メイちゃんの迷子のシーンで泣いたから、「もう観ない」って言うかもしれない。

そんなことを思いながら、恐る恐る感想を聞いてみたところ
「大きなやつが怖かったからもう観なーい」だった。

「なんでやねん!」と、思わず吉本新喜劇ばりのツッコミ。

「いやそれ主役やん!」
「抱っこしてもらってお空を飛ぶとか、楽しそうだったやん!」

「怖かった。もう観なーい。」

「なんでやねん!」


子どもの「怖い」はわからないものだ。



そんな親子コントはさておいて。
一緒にジブリを見て、気がついたことがある。

メイちゃんの迷子シーンで泣く息子を見て、少し安心した自分がいたことだ。

多分、わたしがジブリを見たい理由はこれなのかもしれない。

宗介とポニョのラーメンのシーンもそうなのだけれど、
映画を五感で感じて欲しいのだ。五感で感じて、心を動かす経験をさせたい。

そしてさらにわたしは、それを言葉で語り合いたいのだ。

「こーんな大きなねこのバスがさ、風みたいになってさ」
「あのラーメン、食べてみたいねぇ!今度作ってみようか」
「どうしてメイちゃんの迷子のとこで泣いちゃったのかな」

そういう風に。

一緒に映画で喜怒哀楽を感じて、共有して、語り合う。
それをしたい。早くしたい。

だってジブリ映画ってそのためにあるんでしょう?(それは違うかもしれない)


それに、その先にやってくる未来だって想像してしまう。
ジブリパークで笑い合う息子とわたし(夫もいるとは思う)。
うふふ、最高じゃないか。




ファーストジブリは失敗に終わったけれど、いつか挽回して見せる。
次は何にしようかな。たぬきさんの話かな、それともラピュタかな。


夫が「まだ4歳やし、これからやろ。ちょっと早かったんちゃう」とわたしを諭す。

確かにそうかもしれない。ちょっとママは急ぎすぎたかもしれないね。
もうちょっとゆっくり行こか。
そしていつか、ジブリ談義をママと交わそうじゃないか。



ちなみにわたしのファーストジブリは『風の谷のナウシカ』だった。オープニング曲の途中、巨神兵たちが歩いているシーンで恐れおののき、トイレへ脱走したことは、はっきりと記憶に焼き付いている。

「あのシーンはトラウマだわ」
わたしと母のジブリ談義は、これしかないかもしれない。

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