近況と雑感
イギリスで、優れたソングライターに贈られるアイヴァー・ノヴェル賞というのがあるらしい。授賞式にて、レディオヘッドのトム・ヨークはスピーチで、音楽業界ならびにストリーミング・サービスを強く批判した。
彼は私より少しキャリアが長く、外国の人で、世界的に評価をされた大スターでもあるから比較しにくいところもあるけれど、大体同じような時代を通過してきたから、そのスピーチには共感するところが大きかった。
音楽業界にお金がないないと言われ出したのはもう20年近く前だけど、まぁここ最近はほんとすごい。それは音楽に限ったことではなく多くの業界でも似たようなことは起こっている。
お金がない、ということもあるけど、すごくザックリ言えば一部の利権にお金が集中して、末端まで分配されない仕組みになっている、ということ。
めちゃくちゃ分かりやすく言うと、サブスク配信になってからCD売ってた時よりも私たちアーティストや現場への恩恵は一部を除いてゴッソリ減った。一部の「売れている」アーティスト以外にとって、新作の制作は不採算部門であり、それは仕事では無くなってしまった。

日本では人口減少が本格的に進み近い将来えらいことになるだろうから、その課題意識はよりリアルなものになりそう。
ただ現状国内だけで年間6000万人ライブ/コンサートに足を運んでいるようで、それは日本の人口の半分だと考えれば、ビジネスの形態とやり方、権威がどこにあるかが以前の音楽業界とは変わったということだ。
ただそれは公演を増やすだけであって、その中身(楽曲など)についてはフォロー外である。ライブやツアーで稼いで、余剰のお金で新作の制作を行う。新人や若いアーティストへの投資は行われないから、育たない。

ここまでは、よくある音楽ジャーナリズム/ビジネス系ブログと変わらないことを書いている。
ここから、私見も含み本気で書く。

私は新しい曲のアイデアが浮かんだり、今まで感じたことのなかった音楽の観点に気付いたり、うまく言語化出来ずもやもやしていた気持ちを音楽にして鳴らしたとき、とても嬉しい。呼吸が整い、心身が健康になり、生きた心地になる。
そして、それは必ず周囲の環境に共有され掬い上げられることで、お客さんや第三者にようやく届くことになる。
私は30年間アーティストとして生き、そこに全てを捧げてきたけど、その前20年間だって同じような気持ちだったように思う。

トム・ヨークは私たちソングライター、あるいは音楽アーティストのために権威主義に物を申してくれた。大切なお金の話をしてくれた。
私は、お金の話(これは権利関係の話にもつながる)だけではなく、アーティストとは、音楽家とは、ソングライターとは、という話をしていかねば、と思った。
若いアーティストに夢を与えるために必要なことは、たったひとつだと思う。
その音楽を聴いて感動したら、それをそのまま伝えてあげることだ。

人づてに訊いた話だけど、トム・ヨークは昔来日した時にくるり『図鑑』を聴いて、すごく良い、て言ってくれたっぽい。
それがどこまでほんとかどうかは分からないけど、少なくとも当時の私にとって、それがどれほどモチベーションになったことか言うまでもない。

今日はサチモスというバンドが私たちを2日間公演に呼んでくれた。とても嬉しい。
