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サッカー監督に学ぶマネジメント論~部下はボールではない。でも、組織は戦術でかなり変わる~


サッカーを見ていると、つくづく思うことがあります。

監督という仕事は、めちゃくちゃ理不尽だなと。

選手がシュートを外せば、監督の責任
守備が崩れれば、監督の責任
ロッカールームの雰囲気が悪くなれば、監督の責任
若手が伸びなければ、監督の育成不足
ベテランを外せば、非情
ベテランを使い続ければ、忖度
戦術を変えれば迷走
変えなければ頑固

もう、どっちに転んでも文句を言われる職業です。

しかも試合中、監督にできることは限られています。
ピッチに入って代わりに走ることはできません。
外れそうなシュートを念力で曲げることもできません。
相手のカウンターを「ちょっと待って」と止めることもできません。

できるのは、準備すること。
選ぶこと。
任せること。
変えること。
信じること。
そして、結果の責任を背負うことです。

……あれ?

これ、会社のマネジメントとかなり似ていませんか?

1.監督は、ただ腕を組んでいる人ではない

サッカー監督というと、試合中にベンチ前で腕を組み、難しい顔をしている人というイメージがあります。

たまに怒鳴る
たまに水を飲む
たまにメモを取る
そして負けると、記者会見で針のむしろに座らされる

表面的に見ると、なかなか大変そうな中間管理職です。

でも実際には、監督の仕事はもっと複雑です。

選手の能力を見極める
チームの戦い方を決める
相手に応じて戦術を変える
若手を育てる
ベテランを活かす
スター選手のプライドを扱う
控え選手のモチベーションを落とさない
メディア対応をする
サポーターの期待を受け止める
クラブや協会の方針とも折り合いをつける

これは、ほぼ組織マネジメントです。

しかも、成果が毎週のようにスコアで可視化されます。

ビジネスの世界では、売上、利益、KPI、エンゲージメント、離職率などを見ながらマネジメントしますが、サッカーではそれがもっと残酷です。

3対0で負けました。
はい、問題です。
という世界です。

言い訳の余白が少ない。
数字が美しいほど、現実は残酷です。

2.名将にもタイプがある

面白いのは、サッカーの名将と呼ばれる人たちにも、それぞれまったく違うマネジメントスタイルがあることです。

たとえば、ジョゼ・モウリーニョ。

彼は、ものすごく強烈です。
言葉で空気を作り、敵を作り、チームを燃え上がらせる。
「我々対彼ら」という構図を作るのがうまい監督です。

ビジネスで言えば、求心力と緊張感を作るリーダーです。
ただし、毒が強い。
うまく使えば組織が燃えます。
使い方を間違えると、組織が焦げます。

一方で、ペップ・グアルディオラ。

彼は、かなり設計者です。
選手の立ち位置、ボールの動かし方、スペースの使い方、再現性のある攻撃の形。

偶然の勝利ではなく、仕組みで勝とうとする監督です。

ビジネスで言えば、属人性を減らし、再現性を高めるマネージャーです。
「気合いで頑張れ」ではなく、「勝てる構造を作れ」というタイプです。

この差が、非常に面白い。

同じサッカー監督でも、まったく違う。
同じ「勝つ」という目的でも、そこに至る道筋が違う。

これは、会社のマネジメントにもそのまま当てはまります。

3.会社にも「監督タイプ」は存在する

職場にも、いろいろなマネージャーがいます。

モウリーニョ型の人。
空気を一気に変える。
敵を設定して、チームをまとめる。
ただし、会議室がたまに焦土になります。

グアルディオラ型の人。
仕組みを作る。
プロセスを整える。
再現性を重視する。
ただし、細かすぎて周囲が少し息切れすることもあります。

アンチェロッティ型の人。
大人のチームをうまくまとめる。
管理しすぎず、任せる。
スター人材の扱いがうまい。
ただし、若手だらけの混乱現場では、もう少し強い介入が必要かもしれません。

クロップ型の人。
熱量で巻き込む。
理念を語る。
チームに一体感を作る。
ただし、熱すぎると、こっそり冷房を探す人も出てきます。

森保型の人。
派手さはない。
でも、継続して見る。
急に騒がず、じわじわ積み上げる。
ただし、外から見ると「何を考えているのか分かりにくい」と言われることもあります。

ファーガソン型の人。
短期成果だけでなく、長期の組織づくりを考える。
世代交代を進める。
勝ちながら育てる。
これはかなり難しいです。

こうして見ると、サッカー監督は単なるスポーツの話ではありません。

組織をどう作るか。
人をどう活かすか。
成果と育成をどう両立するか。
厳しさと信頼のバランスをどう取るか。

こうしたマネジメントの本質が、かなり詰まっています。

4.「名将の真似」をすればいいわけではない

ここで注意したいのは、名将のやり方をそのまま真似すればいいわけではない、ということです。

モウリーニョのように振る舞えば、誰でもカリスマになれるわけではありません。
ただの感じの悪い上司になる可能性もあります。

グアルディオラのように細部まで設計すれば、誰でも強い組織を作れるわけではありません。
ただの口うるさい管理者になる可能性もあります。

クロップのように熱く語れば、誰でも人を動かせるわけではありません。
場合によっては、「朝から熱量が重い人」になります。

ここが怖いところです。

名将の表面だけ真似すると、事故ります。

大事なのは、その人がなぜそのスタイルを選んでいるのか。
どんなチーム状況で、そのマネジメントが機能しているのか。
どんな人材に対して、そのやり方が合っているのか。

ここを見ないと、ただの名将ごっこになります。

そして職場で名将ごっこを始めると、だいたい周囲が疲れます。

5.マネジメントに必要なのは「自分の型」を知ること

サッカー監督から学べる一番大きなことは、マネジメントに唯一の正解はないということです。

強く引っ張るリーダーが必要な時もあります
静かに任せるリーダーが必要な時もあります
仕組みを作るリーダーが必要な時もあります
熱量で巻き込むリーダーが必要な時もあります
時間をかけて育てるリーダーが必要な時もあります

つまり、重要なのは、

「自分はどのタイプの監督に近いのか」

を知ることです。

そしてもう一つ大事なのは、

「今のチームには、どのタイプのマネジメントが必要なのか」

を見極めることです。

ここを間違えると、悲劇が起きます。

成熟したベテラン集団に、細かすぎる管理を入れる。
まだ基礎ができていない若手集団に、自由だけを与える。
疲弊しているチームに、さらに熱量で押し込む。
混乱しているチームに、「みんなで考えよう」とだけ言う。

どれも、一見よさそうに見えて、状況によっては逆効果です。

マネジメントは、性格診断ではありません。
チーム状況との掛け算です。

6.監督を見ると、マネジメントの癖が見えてくる

サッカー監督を見ていると、自分のマネジメントの癖も見えてきます。

自分は、モウリーニョ型なのか。
それとも、グアルディオラ型なのか。
アンチェロッティ型なのか。
クロップ型なのか。
森保型なのか。
シメオネ型なのか。
ファーガソン型なのか。

もちろん、完全にどれか一つに分類できるわけではありません。

でも、考えるきっかけにはなります。

自分は、成果を出すために空気を締めるタイプなのか
仕組みを整えるタイプなのか
人を信じて任せるタイプなのか
感情を動かして巻き込むタイプなのか
地道に観察して積み上げるタイプなのか

この自己理解は、マネジメントにおいてかなり大切です。

なぜなら、マネージャーは自分の癖に無自覚なまま、人を動かそうとしがちだからです。

「自分は普通に言っているだけ」
「自分は良かれと思っているだけ」
「自分はチームのためにやっているだけ」

この“だけ”が、なかなか厄介です。

モウリーニョ成分が強すぎる人は、気づけば職場に敵を増やします。
グアルディオラ成分が強すぎる人は、気づけば部下の自由度を奪います。
クロップ成分が強すぎる人は、気づけば月曜朝から全員を燃やそうとします。
アンチェロッティ成分が強すぎる人は、気づけば放任に見えることもあります。
森保成分が強すぎる人は、気づけば説明不足に見えることもあります。

名将にも、長所と副作用があります。

ここが面白いところです。

7.サッカー監督は、マネジメントのショーケースである

サッカー監督は、マネジメントのショーケースです。

戦略がある
人材配置がある
育成がある
評価がある
コミュニケーションがある
決断がある
失敗がある
批判がある
そして結果責任がある

まさに、ビジネス現場の縮図です。

しかも、世界中の名将たちは、それぞれ違う方法で結果を出してきました。

強烈な言葉でチームをまとめる人
緻密な戦術で勝ち筋を設計する人
スター選手を自然体でまとめる人
熱量でチームを蘇らせる人
長期視点で組織を作り替える人
限られたリソースで勝負する人

どの監督にも、学べる点があります。

同時に、真似してはいけない点もあります。

だからこそ、面白い。

名将を見ることは、単なるサッカー観戦ではありません。
マネジメントの実験場を見ることでもあります。

8.次回は、名将たちのマネジメントを分解してみる

今回は、サッカー監督という存在が、ビジネスマネジメントを考えるうえで非常に面白い題材になる、という話をしました。

個別の監督を見ていくと、さらに面白くなります。

モウリーニョの「毒と求心力」
グアルディオラの「仕組みと再現性」
アンチェロッティの「大人の任せ方」
クロップの「熱量と共感」
森保監督の「観察と継続」
ファーガソンの「長期政権と世代交代」
シメオネの「限られた資源で勝つ組織」
ジダンの「スター人材の扱い方」
ヴェンゲルの「思想で文化を変える力」
ルイス・エンリケの「非情な選択と変革」

こうして並べると、サッカー監督はただの戦術家ではありません。

人を動かす人です。
組織を作る人です。
空気を変える人です。
そして、結果に向き合う人です。

次回は、こうした名将たちを題材にしながら、
「自分のマネジメントスタイルはどの監督に近いのか」
「今の組織に必要なのは、どんな監督型マネジメントなのか」
をもう少し深掘りしていきます。

サッカーに詳しい人も、そこまで詳しくない人も大丈夫です。

大事なのは、フォーメーションを暗記することではありません。
オフサイドの細かい解釈で揉めることでもありません。
VARに向かってテレビの前で怒ることでもありません。

見るべきは、監督がどう人を動かしているかです。

ピッチの中には選手がいます。
でも、その後ろには、必ずマネジメントがあります。

そして職場にも、似たようなピッチがあります。

今日も誰かが走り、誰かがサボり、誰かが指示を待ち、誰かが勝手に攻め上がり、誰かが守備に戻ってこない。

だからマネジメントは難しい。
そして、だからこそ面白いのです。

9.おすすめ図書

ジョゼ・モウリーニョ 勝者を生み出すメソッド
モウリーニョの毒、求心力、勝負師感を深掘りしたい人に。職場の“強すぎる上司”分析にも使えます。

ポジショナルフットボール経典
グアルディオラ型マネジメントの理解にぴったり。気合いではなく、構造で勝つ発想が学べます。

監督たちの流儀 サッカー監督にみるマネジメントの妙
まさに今回の記事テーマど真ん中。名将の違いから、自分のマネジメント癖を見直せます。

サッカー戦術の教科書
フォーメーションを暗記するより、試合の見え方が変わる一冊。監督の意図を読みたい人に。

サッカー好きほど知らない戦術の常識
「なんとなく観戦」から一歩先へ。職場でいう“なぜその配置なのか”を考える訓練にもなります。

グアルディオラ総論
ペップの戦術眼をまとめて理解したい人向け。細かすぎる上司問題を笑いながら考えられます。

ジョゼ・モウリーニョ KING OF監督
スペシャルワンのキャリアを追うならこちら。カリスマと面倒くささは紙一重だと実感できます。

勝利のチームマネジメント
サッカー日本代表監督から組織開発を考える一冊。森保型の“静かな積み上げ”派に刺さります。

スポーツマネジメント
サッカーを入口に、スポーツ組織そのものを学びたい人へ。ビジネス視点の補強にも使えます。

よくわかるスポーツマネジメント
入門向けに読みやすい一冊。監督論から、クラブ運営や組織づくりまで視野を広げられます。

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