海外リノベ動画に学ぶ、身近な素材で空間の「基礎体力」を整える
今回は少し視点を変えて、住む人・使う人の視点から、空間のクオリティを高めるための「こんな考え方や選択肢がある」というお話です。
私が普段からチェックしている、ロンドン郊外に移住したEmma Hill(エマ・ヒル)のホームリノベーション動画です。彼女と夫(Simon-サイモン)が数年かけて繰り広げるリノベですが、高級オーダーメイドではなく、IKEAやZARA HOMEなどのお手頃価格のもの、DIY、ヴィンテージの一点ものを組み合わせることで、真似しやすいけれど圧倒的に洗練された空間を作り上げています。
https://www.youtube.com/user/EJSTYLEblog
IKEAハックへの挑戦と、日本の住宅構造という「見えないハードル」
私はこの動画で、初めてIKEAのキッチンはカスタムでパーツを選んで、自分で組み立て可能だと知りました。実は私自身、彼女のVlogに影響されて、自宅(賃貸)の引っ越し当初にキッチンボードをIKEAで組み立てようと意気込んだ経験があります。しかし、いざ仕様を調べると、日本の一般的な住宅構造では「壁に釘(ビス)を打って固定する必要がある」ことが分かり、断念せざるを得ませんでした。
この個人的な挫折から見えてくるのは、空間の「見え方」の裏側にある、**理想のデザインを日本の現実の住まいに落とし込むための、見えないハードル(構造の違い)**を知ることでした。
エマの動画がこれほど熱狂的に支持されるのは、高級品に頼らずとも、身近な素材の組み合わせで空間の魅力を最大化できるという「賢い選択肢」を提示しているからです。しかし、それを形にするためには、下地の有無や建物の構造といった、目に見えない「土台の基本性能」がクリアされている必要があります。
日英の仕上げの違いと、世界共通である「下準備」の本質
例えば、イギリスをはじめ海外の住宅では壁を「ペイント(塗装)」で仕上げるのが主流ですが、日本の住宅の約9割は「クロス(壁紙)」を採用しています。
これは単なる好みの問題ではありません。日本の四季の激しい温度変化や高い湿気、あるいは特有の地震による建物の微細な揺れに追従し、カビやひび割れを防ぐための、日本の気候風土に最適化された合理的な選択です。
面白いのは、仕上げの素材(ペイントかクロスか)が違っても、「美しい空間を作るためのプロセスの本質」は世界共通だということです。
海外(ペイント)の工程: エマの動画をよく見ると、彼女はペイントを塗る前に、古い壁の表面を丁寧に削って平らにし(サンディング)、その上に下地用のペイント(プライマー)をしっかりと塗ってから、ようやくお気に入りの色を重ねています。この面倒な下準備こそが、美しい発色と耐久性を生む命綱です。
日本(クロス)の工程: 古い壁紙を剥がした後の壁はボコボコしています。そこにそのまま新しい壁紙を張っても、数ヶ月で浮きやシワが出てきてしまいます。だからこそ、職人はパテという下地材を何度も塗り、乾かしては削るという作業をミリ単位で繰り返し、完全にフラットな土台を作ります。
つまり、どんなに素晴らしいリノベーションをする場合でも、「きちんとした土台に、適切な処理(下地作り)を施すこと」が絶対に不可欠なのです。
目に見える華やかさを支える、目に見えない土台の品質
どれほど優れたデザインや手頃な素材のアイデアがあっても、それを支える床やクロスの「基礎体力」がしっかりしていなければ、日本の住環境において空間の価値は長持ちしません。目に見える華やかさを支えるのは、常に目に見えない土台の品質です。
高価なものだけが正解ではない時代だからこそ、まずは土台となる現場の構造をシビアに見極める。このフラットな視点を持つことこそが、結果としてコストと品質のバランスを賢くコントロールし、毎日の暮らしの質(QOL)をスマートに整えるための確かな近道になると考えています。
Emma Hill動画紹介
ロンドン南東部にあるヴィクトリア調のテラスハウスのリノベ(パンデミック時期に始まったVlog)
ケント州の田舎町にある独立型バンガロー(平屋・改築済み)に引っ越し、リノベ開始
リノベ3年後の様子
キッチンリノベ
既存のキッチン扉に高品質な粘着シートを貼り、廃棄を出さずにスピーディーに一新するリメイク手法。日本の「ダイノックシート」や「リアテック」のようなプロ仕様のカッティングシートを使用しているようです。
リノベーション再生リスト
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