【図書館×ICT】教室や自宅から予約できる「開かれた学校図書館」のつくり方
はじめに
学校図書館で「もっと気軽に本を探してもらいたい」「限られた時間で、生徒の「読みたい」に応えたい」と感じたことはありませんか?
本記事では、教室や自宅からでも本を検索・予約できる仕組みとして注目されている
「カーリル学校図書館支援プログラム」について、導入の背景や現場の活用例、導入までの流れをご紹介します。
教室や自宅にいても蔵書検索・予約ができる小さなICTの導入により、図書館の使われ方が驚くほど変化しました。
この記事では、
カーリル導入の背景ときっかけ
導入までに立ちはだかったハードル
実際にどんな変化が起きたのか
といった、現場の実体験を交えてご紹介します。
※前半はどなたでもご覧いただけます。
導入の流れや作成したマニュアル、告知のおたよりなど、実践的な部分は後半でまとめています。
「カーリル学校図書館支援プログラム」とは

・学校図書館を対象にした蔵書検索と予約システムの提供をしてくれるサービス
・利用料は無料
・図書館システムが未導入の図書館でも立ち上げが可能
・ISBN(本のバーコードデータ)と国立国会図書館などが紐づけられるため目次や書影(本の表紙)も表示してくれる。
・広告の表示はない
・カーリルに提供するのは蔵書している本のISBNのため、個人情報の取り扱いについても安心できる。予約情報は図書館に直接送信されるシステムです。
このサービスを取り入れたきっかけ

このサービスがはじまったのではコロナ禍真っただ中の2020年のことです。
学校図書館を閉館にする学校も多く、私が所属していた学校も一定期間、閉館の措置が取られました。
本はたくさん入荷しているのに、生徒に貸し出せない…
そんな時、図書館の蔵書検索サイトなどを運営している株式会社カーリル(岐阜県)が、コロナ禍で図書館運営に支障をきたしている学校などを対象に、図書館内にいなくても蔵書検索や予約ができるサービスの提供をはじめました。
これは素晴らしい取り組みだ!!
と思い、学校でも導入できないか検討を始めました。
ちなみに、当初は期間限定の提供ということでしたが、現在は、無期限での無料提供に切り替わりました(提供終了する際は事前に告知があるとのことです)。
導入するにあたっての課題

ぜひ取り入れたい!と思ったものの、最大の課題は学校の許可を得ることでした。
そのため、まずはカーリルの公式サイトの資料をよく読み、サービス内容や導入メリットを理解した上で、責任者の先生に納得していただけるよう準備を進めました。特に、情報の取扱いについての安全性と、生徒や学校にとってどのようなメリットがあるのかをしっかり押さえて説明しようと整理しました。
その後、学校図書館の責任者の先生と学校全体の責任者の先生にこのサービスの説明をし無事に導入の許可をいただくことができました。
正直なところ、学校は新しい仕組みやサービスの導入に慎重な傾向があるため、「もしかすると許可は難しいかもしれない」と不安もありました。
しかし、幸いなことに、責任者の先生がICTへの理解が深く、教育現場での活用に前向きな方だったこともあり、スムーズに話を進めることができました。(ICTに積極的な先生を味方につけるのは意外と重要かもしれません)
導入後の変化

一言で言えば、導入して本当によかったと感じています。
全ての学校図書館におすすめしたいほどの効果がありました。
導入をきっかけに、アナログなイメージの強い学校図書館が大きく活性化しました。
主な変化は以下の通りです:
貸出数の増加
蔵書検索のしやすさが向上
図書館に馴染みのなかった生徒との接点が増加
今まで動きのなかった本が貸し出されるようになった
授業支援ツールとしても活用されるようになった
1.貸出数の増加

学校から生徒一人ひとりに提供されているタブレット端末からすべての蔵書を検索・予約できるようになったことで、図書館が閉館している日や休日でも利用の機会が広がりました。
あわせて、今回の導入を機に学校図書館の専用ホームページも立ち上げ、そこからも検索・予約にアクセスできるようにしました。
(ホームページの作成方法については、また別の機会にご紹介いたします)
2.蔵書検索のしやすさが向上

従来も図書館内にあるOPAC(蔵書検索端末)で検索はできましたが、台数が限られており、検索のタイミングや場所に制約がありました。
今回の導入によって、生徒一人ひとりのタブレットから、いつでもどこでも蔵書を検索できる環境が整ったことで、検索のしやすさが向上しました。
また、新着本の一覧や、興味のあるキーワードから本を探すこともできるため、「あれ、こんな本あったっけ?」と私自身が驚くような意外な本が借りられるようになったことも嬉しい変化です。
生徒にとっても、これまで出会うことのなかった本との出会いが生まれ、読書の幅が広がったと感じています。
3.図書館に馴染みのなかった生徒との接点が増加

学校図書館には、本が好きな生徒がよく集まり、「常連さん」と呼べる子たちが自然と増えていきます。
一方で、休み時間を体育館や教室で過ごすことが好きな生徒は、どうしても来館の機会が少ない傾向がありました。
しかし、このシステムを導入してからは、そのような生徒からの予約も入ることが増えました。
個人的には、不登校の生徒さんと学校図書館をつなげられたらどんなに良いだろうという想いがありました。
私の在任中には実現しきれませんでしたが、もし将来的に、学校に来られない生徒が自宅から蔵書を検索し、本を借りられるような仕組みが整えば、学校図書館が「つながりの場」になれるのではないかと思っています。
また、忙しい先生方からの予約が入るようになったことも、嬉しい変化のひとつです。
学校図書館には、芥川賞や本屋大賞など、話題の本も多く入っています。市立図書館では数十人待ち、数か月待ちということもあるような人気書籍も、学校の蔵書でスムーズに借りられることがあります(笑)。
大人にとっても、学校図書館は実は“使える”場所だと思っています。
さらに欲をいえば、保護者の方にも本を借りていただけるようになれば、親子の読書体験や会話のきっかけにもつながるのではないかとも思いました。
現実的には日常的な運用は難しいかもしれませんが、夏休みや冬休みなど、期間限定であれば取り組める可能性があるのではないかと感じています。
4.今まで動きのなかった本が貸し出されるようになった

先ほども少し触れましたが、「こんな本があったんだ」と、私自身が驚くような本にも予約が入るようになりました。
ある生徒さんに話を聞いたところ、
「適当に『〇〇市 歴史』って検索してみたら、面白そうな本が出てきたんです」
とのことでした。
さらに、なんと六法全書を借りに来た生徒さんも現れました。
聞いてみると、その生徒は将来弁護士になりたいとのことで、「こども六法では物足りなかった」そうです。
(なお、六法全書は館内閲覧のみの資料のため、貸し出しはできませんでした。)
図書館の目立つ場所に並んでいる本はどうしても借りられやすい一方で、それ以外の本はなかなか手に取られることがありません。
しかし、このシステムの導入によって、“眠っていた本たち”が検索を通じて見つけ出され、生徒たちとの新しい出会いが生まれるようになりました。
それは、生徒にとっても本の世界が広がる喜びであり、図書館にとっても非常にやりがいを感じられる変化でした。
5.授業支援ツールとしても活用されるようになった

生徒一人ひとりに配布されているタブレットからは、学校図書館のホームページにアクセスできるよう設定しました。
ホームページ内にはカーリルの検索サイトへのリンクも設置し、スムーズに蔵書検索ができるようにしました。
この環境を活かし、校外学習や調べ学習などの授業でも図書館を活用してもらえるように、特設ページを作成することにしました。
特設ページでは、その学習内容に関連する蔵書の紹介だけでなく、外部サイトへのリンクも掲載し、図書館を情報収集の“入り口”として使ってもらえるよう意識しました。
たとえば、校外学習のページでは、行き先周辺のGoogleマップやその街の公式サイトにアクセスできるようにし、生徒が調べたいことにすぐ手が届くような構成にしました。
ICT活用が進む中で、図書館もその流れに乗り、「紙の本+デジタル情報のハブ」としての役割を果たせるよう取り組みを進めました。
余談ですが、HPを開設したことにより、これまで紙でおこなっていた読書に関するアンケートをGoogleフォームを使用しタブレットから実施できたことで、統計データの管理もとても楽になりました。

導入の流れと準備

ここから先は、珈琲一杯分ほどの価格(300円)でご覧いただける有料部分となります。
導入を検討している学校図書館関係者の方や、司書を目指す方に向けて、実践に役立つ具体的なノウハウをまとめています。
ここから先は
¥ 300
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
