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電気を「安く買う」時代から「電源を選ぶ」時代へ――原発電力の指名買いが示す大転換

【電力供給の大きな転換点】企業が「原発の電気」を選んで買う時代へ

日本経済新聞に掲載された「『原発電力』指名買いの衝撃」という記事を読みました。

これは、単に原子力発電所が再稼働するという話ではありません。

企業が、電気の価格や供給会社だけでなく、「どの電源でつくられた電気を使うのか」まで選ぶ時代に入ったという話です。

■関西電力が始める「原発電力の個別販売」

記事によると、関西電力は、原子力発電所でつくった電気を、希望する企業や工場などへ個別に販売する仕組みを始めます。

原発電力を求める需要家を広く募集し、価格や供給条件を個別に協議する方式です。

ここで大切なのは、電線を通る原発の電気だけを物理的に分けて届けるわけではないということです。

原子力発電所の発電量の一部を、契約上、その企業が購入した電力としてひもづけます。

太陽光発電のコーポレートPPAで、企業が特定の発電所から長期的に電気を調達する仕組みに近い考え方です。

電力調達に、新たな選択肢が加わろうとしています。

■なぜ今、原発の電気を指定して買うのか

背景にあるのは、AI、データセンター、半導体工場などによる電力需要の急増です。

こうした施設は、非常に多くの電気を24時間安定して必要とします。

企業が求める条件は、単に「安い電気」だけではありません。

・大量の電力を長期間確保できる
・24時間、安定して供給される
・価格変動をできるだけ抑えられる
・脱炭素にも対応できる

この四つを同時に考える必要があります。

太陽光や風力は、脱炭素の重要な電源です。しかし、天候や時間帯によって発電量が変わります。

蓄電池を組み合わせることで調整できますが、大規模なデータセンターなどへ24時間電力を供給するには、容量とコストの課題が残ります。

一方、原発には安全性、使用済み核燃料、廃炉費用など、避けて通れない課題があります。それでも、稼働中は大量の電力を安定して供給でき、発電時のCO₂排出量が少ないという特徴があります。

そのため世界では、AI産業を支える電源として、原発を改めて活用しようとする動きが出ています。

■電気を「どこから買うか」が経営判断になる

これまで、多くの企業にとって電力調達は、「どの電力会社から、何円で買うか」という選択でした。

これからは、それだけではありません。

・自社の屋根で太陽光発電を行う
・PPAで再エネを長期調達する
・蓄電池で使用時間を調整する
・非化石証書で環境価値を補う
・原発などの安定電源を確保する

こうした選択肢を組み合わせ、自社の事業に合った電源構成をつくることが必要になります。

「一番安い電気を探す」のではなく、「自社の事業を止めないために、どの電源を、どの条件で、どれだけ確保するのか」を考える。

電力調達が、購買部門だけの仕事から経営課題へ変わり始めています。

■再エネか、原発か、という話ではない

この記事を読んで、私は「再エネより原発がよい」ということではないと考えました。

反対に「再エネだけですべて解決できる」というほど、電力供給は単純でもありません。

需要家によって、必要な電力量、使用時間、許容できる価格変動、環境方針は異なります。

例えば、

・昼間は屋根上太陽光を使う
・余った電気は蓄電池にためる
・不足分は小売電力から調達する
・環境価値は非化石証書で補う
・大量の安定電力が必要な事業では、原発を含む非化石電源も検討する

このように、複数の電源を組み合わせる考え方が現実的です。

■電力は「コスト」から「事業基盤」へ

米国では、巨大IT企業が原発の再稼働や小型モジュール炉の開発を後押ししています。

一方、中国は太陽光パネル、風力発電機、EV、蓄電池、重要鉱物の供給網で強い力を持っています。

いま世界で起きているのは、電力をめぐる産業競争です。

AIも、半導体も、製造業も、データセンターも、電力がなければ動きません。

これから企業に問われるのは、電気料金をいくら下げたかだけではなく、

「事業を続けるための電力を、どのように確保するのか」

ということではないでしょうか。

電気も、安いところから買うだけの時代から、自社の事業に必要な電源を選び、長期で確保する時代へ。

電力供給は、いま大きな転換点に来ていると思います。

出典:日本経済新聞 2026年9月5日付「Deep Insight」
「『原発電力』指名買いの衝撃」
松尾博文・日本経済新聞特別編集委員

※本稿は、上記記事の内容をもとに、太陽光・PPA・蓄電池・地域電力に携わってきた飯田自身の見方を加えてまとめたものです。

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