「ひざ掛け」を考える
先週から、はっきり寒くなりました。
寒くなった、というより、もう普通に寒いです。朝に外へ出た瞬間、頬に当たる空気が違いますし、息を吸うと鼻の奥が少しだけ痛む。指先はすぐに冷えて、顔もどこか緊張したまま一日が始まります。
職場に入っても、その感覚は残っています。
暖房は入っていますが、だからといって快適というわけでもありません。机に向かって座っていると、身体の冷え方がだんだんはっきりしてきます。指先と顔はずっと寒いままで、特に腰から下が落ち着かない。じっとしていると、冷えがそこに溜まっていく感じがします。
寒いので、ひざ掛けを使いました。
これは特別な判断でも何でもなく、寒いからそうしただけです。ひざに掛けるより、腰に巻いたほうが具合がよかったので、最初からそうしました。布を一枚、腰に回して留める。それだけで、座っているときの感じが少し変わります。
腰にひざ掛けを巻いたまま、仕事を続けます。
キーボードを打ち、書類に目を通し、画面を見る。指先は相変わらず冷えていますし、顔も寒いままです。ただ、腰のあたりだけが布に覆われている。その状態が、妙に落ち着きます。
立ち上がる用事が出てきます。
コピーを取りに行き、棚の前に立ち、また席に戻る。腰にひざ掛けを巻いたままです。歩いてみると、特に邪魔にはなりません。布はずれませんし、動きにくさもない。見た目を想像すると、少しキルトっぽい気がします。スコットランド人みたいだな、と思いました。
そう思ったところで、何かが変わるわけでもありません。
そのまま職場を行き来します。通路を歩き、席に戻り、また立ち上がる。腰の布はそのままです。寒さもそのままです。指先も顔も冷えたままですが、仕事は進んでいきます。
しばらくして、来客がありました。
郵便屋さんです。外で寒そうに働いている人で、コートを着たまま、用件を手短に伝えてきます。僕は、腰にひざ掛けを巻いたまま立ち上がり、そのまま対応しました。距離も声の調子も、いつもと変わりません。
書類を受け取り、確認をして、必要なやり取りを済ませます。
郵便屋さんは次の場所へ向かい、席に戻りました。腰のひざ掛けは、そのままです。ほどくこともなく、気にすることもなく、また画面に向かいます。
仕事をしながら、さっきの自分の姿を少しだけ思い出します。
腰にひざ掛けを巻いたまま、来客に対応している僕。別に間違ったことをしているわけではありません。ただ、その光景を横から見たら、ほんの少しだけ可笑しいかもしれない。そう思った気もしますし、思わなかった気もします。
夕方になっても、寒さは続いています。
指先も顔も相変わらず冷えたままです。腰に巻いたひざ掛けも、そのままです。結局、その日は一日、布を腰に巻いた状態で過ごしました。寒かった、という事実と、その格好のまま仕事をしていた、という事実だけが残っています。
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